スタッフ日記 “おーつき”

We Shall Overcome

おーつき

25thJSA第25回日本エイズ学会学術集会・総会の初日に開催されたHIV陽性者参加支援スカラシップ委員会(はばたき福祉事業団、ぷれいす東京、日本HIV陽性者ネットワーク・ジャンププラス)による共催シンポジウム『HIV陽性者によるエイズ対策への参画』には84名もの方にご来場いただきました。どうもありがとうございました。

今年見直しが行われた「後天性免疫不全症候群に関する特定感染症予防指針(エイズ予防指針)」ですが、指針そのものは実行力に課題があり、今後の日本のエイズ対策にこの指針をどう生かし、現状を変えていけるか?という問いかけがなされました。見直された指針では随所で「NGOとの連携」が明文化されたのを受け、行政とNGOとの恊働――そしてそこでは当然HIV陽性当事者の参画が求められていますが――においては、NGO側から動かないと何も変わらない、NGO側の提案力や恊働力が試されるのではないか、といった見方がパネリストらからは示されました。現在のNGO活動はとかくリソースが不足しているというのが共通認識ですが(東京周辺と他の地域との差についても言わずもがな)、そんなリソース不足を克服するためにも、うまく恊働し障害を乗り越えていかねばならないようです。

※「エイズ予防指針作業班報告書」はこちらからご覧いただけます。

Nailなお、今年はHIV陽性者参加支援スカラシップの資金調達においても困難があり、本シンポジウムの会場でもご寄付のお願いをさせていただきました。募金箱にお心付けをくださった方、振込でご寄付をくださった方、本当にどうもありがとうございました。当事者参画のひとつのあり方として、今後もまたひとりでも多くのHIV陽性者の学会参加をバックアップしていけるよう、本スカラシップの維持拡充に役立てさせていただきます。

30年ひと昔

おーつき

ある大学のキャンパスで開催されていた「沈黙=死:エイズ危機とドラァグ」という公開講座に行きました。20世紀前半から現在に至るまでのアメリカのゲイ・アクティヴィズムの潮流にHIV/AIDSの登場が与えた影響と、エイズ・アクティヴィズムの位置づけなどを重ねていくお話でした。

1981年に初めてAIDSの症例が報告されてから、今年で丸30年。先だって東京国際レズビアン&ゲイ映画祭で上映されたドキュメンタリー『あの頃、僕らは―いま語られるエイズの記憶』など、HIV/AIDSと、HIV/AIDSを取りまく人たちの歩んできた歴史を振り返る機会が増えています。

 

参考:

●カイザー・ファミリー財団による、アメリカのHIV/AIDSの登場からの30年間を追うドキュメンタリー映像 http://www.kff.org/hivaids/062111vid.cfm

●アメリカ政府の保健社会福祉省による、HIV/AIDS30周年の特設サイト http://aids.gov/thirty-years-of-aids/

 

HIV/AIDSの登場で、その感染機会の多さなどからとりわけ大きな影響を受けたゲイの危機に際し、コミュニティ内でレズビアンなど他のセクシュアル・マイノリティたちと大きく団結する契機となったというアメリカの例が紹介されたことに対し、聴衆のひとりから、日本ではゲイのHIV/AIDS活動とレズビアンたちとはともに年々離れていってしまっているのではないかという投げかけがあったのが印象に残りました。個人的にも、その辺りは道半ばかと感じているところです。

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HIV陽性者参加支援スカラシップ委員会の恊働シンポジウムなどで、日本でもHIV/AIDSにかかわる医療の進歩や、免疫機能障害の認定など現在ある社会制度ができた背景などに言及があると、以前の状況を知らない比較的若い参加者らから新鮮な反応があります(興味のある方は、過去のスカラシップ報告書などもご覧ください)。

はばたき福祉事業団、日本HIV陽性者ネットワーク・ジャンププラスとぷれいす東京の共催でお送りする今度のHIV陽性者参加支援スカラシップ委員会恊働シンポジウム企画は、今年見直しの検討が行われたエイズ予防指針をテーマにした『HIV陽性者によるエイズ対策への参画』。今月末の日本エイズ学会学術集会・総会に行かれる方は、ぜひこちらもよろしくお願いします。

いつもの場所で、いつものラウンジ

おーつき

LivingTogether

毎月第1日曜日の夕方に開催されている「Living Together Lounge」。多様性をともなった視点から「全ての人がHIVとともに生きている」というリアリティを共有するためのプロジェクト、Living Together計画(呼びかけ団体:ぷれいす東京、akta)が主催する、HIV陽性者やその周囲の人によって書かれた手記の朗読とアーティストによるライブで構成されるイベントで、この6日(日)の回で83回目を迎えました。

毎月やっているから行きたい時にはいつでも行けるし…と思っていて、ついつい行きそびれていたところ。(1月22日の日記に書いた)よく行くカフェでいつも良くしてくださるスタッフの方が、手記の朗読をされるというのをきっかけに久しぶりに足を運んだら、このイベントに参加したのは2年振りとかいうお友だちとの偶然の再会を果たしたり、最後に会ったのは前回このイベントに来た時だったというお友だちにも久々に会えたり、一方で特に連絡を取り合った訳ではないけれどそこに行けば会えるだろうと思っていたいつもの遊び友だちともやっぱり会えたりと、そこは"It"な場所。朗読とライブにプラスαの喜びがありました。そういえば、「Living Together Lounge」の会場で出会ってつきあい始め、その後もふたりで連れ添ってこのイベントに参加しているという友人カップルも。わーい。

Title第84回となる次回の「Living Together Lounge」は、12月4日(日)開催です。夕暮れ時のグッタイム、よければご一緒に。

10月27日~11月9日は読書週間

おーつき

──ということで、今年発行された、ぷれいす東京のスタッフが執筆した書籍についてのご案内です。

思いこみの性、リスキーなセックス」(池上千寿子 著/岩波書店 刊)

→「若者の気分」シリーズの1冊。若者の性の意識を通し、若者だけでなく社会の性に対するさまざまな思いこみをあぶり出して切り込む。

21世紀の課題=今こそ、エイズを考える」(池上千寿子 著/日本性教育協会 刊)

→「現代性教育研究月報」の連載集。HIV/AIDSが初めて報告されてから30年、HIV/AIDSとそれをとりまく人々と社会を見つめ直す。

福祉系NPOのすすめ ─実践からのメッセージ─」(牧里毎治 監修/ミネルヴァ書房 刊)

→福祉系NPOをテーマに、その設立・運営などの理論と、現場の想いや人とのつながりなどの実践を紹介する専門書。「実践編」の第3章「HIVとともに生きる人たちがありのままに生きるために」を生島嗣が執筆しています。

本屋さんで、あるいは図書館などで(蔵書になければリクエストして?)ご覧いただければ幸いです。

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おーつき

70億人の世界×70億人のアクション」というシンポジウムを観に行きました。

1999年に60億人を超え話題になった世界人口が、もう間もなく70億人を突破すると言われています。

持続可能な開発やエネルギー関連のマクロ政策だけでなく、人口の増減に直接的に結びつく個々のリプロダクティブ・ヘルス/ライツ、セクシュアル・ヘルス/ライツの支援の重要性がこの人口問題の分野でも強調されています。

また先の東日本大震災の被災地において、このシンポジウムの主催団体のような国際協力・開発系の団体、専門家たちのいわゆる途上国支援の中で得たノウハウを生かした支援が奏功した例も聞き、色々な結びつきを感じて帰ってきたのでした。

「人口時計」

「人口時計」

シドニーいいな〜

おーつき

おかげさまで、新人ボランティア合同研修も20名の参加者の方々とともに3日間の日程を無事に終えることができました。どうもありがとうございました&お疲れさまでございました。

セイファー・セックス・リスク・アセスメント

 

新宿区のNPO活動登録団体になりました

おーつき

ぷれいす東京は、先頃新宿区の登録NPO法人の認定を受けました。新宿区役所内に開設されているNPO活動情報コーナーや、新宿区民活動情報サイトでも活動を紹介してもらっています。

そのサイトを始め、Webでも告知していた10日(土)の新人ボランティア・オリエンテーションは21名の方にご参加いただきました。どうもありがとうございました。

登録証

写真は事務所近くの区立の地域センターの利用団体登録証。

蟹の手も借りたい?

おーつき

いくさんがたくさん買ってきてくれたお土産で、蟹にちなんだお菓子であふれているぷれいす東京事務所です。お仕事の合間においしくいただいています。

かにパイ

↑いくさんの新しいデジカメでさっそく撮影v

Greetings from Busan, Part 4

おーつき

公式発表によると65ヵ国から計2,998名(うち日本からは97名)が参加登録したアジア・太平洋地域エイズ国際会議(ICAAP)は、30日(火)に閉幕しました。 ICAAP11

滞在先のテレビで朝晩に観ていたBBCやCNNのニュースでは、緊迫するリビア情勢やナイジェリアで起きたテロ事件などの報道が連日繰り返し流れていました。ICAAPの全体会議のひとつで講演した研究者で活動家のデニス・アルトマンが、HIV/AIDSをより広く、世界で起こっている様々な社会正義やガバナンスに関わる問題と結びつけていくアプローチが今後は重要になるだろうと話していたのが印象に残りました。

その他に目についたのは、昨年の国際エイズ会議で採択されたウィーン宣言以来、引き続き薬物使用のテーマに関して高い注目が注がれていたこと、国際労働機関(ILO)によってセックス・ワークが労働と認識されるようになってきたことなどほか、薬物使用者やセックス・ワーカーら特にHIV/AIDSに影響を受けやすい主要な人口集団を指す"Key Affected Populations(KAP)"のコンセプトが浸透しつつあることなどが挙げられます。コミュニティなどで支援や啓発を行うグループとして、NGOやCBOと並び、FBO(Faith-based Organization、信仰に基づく団体)の実績もよく聞くようになったように感じました。

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いわゆる社会系のプログラムが多いICAAPですが、2年前に開催された前回の会議で訴えられていたテーマやロジック、そのものズバリ同じフレーズを、今回の会議でデジャヴのようにまた見聞きすることがありました。それだけ達成が難しかったり、あるいは普遍性のあるテーマだったりする故なのかもしれませんが、一方で「あれから2年間、あなたたちは一体何をやっていたの?」という手厳しい声も聞かれました。

2年で目に見える結果が出るような活動ばかりではないのでしょう。そもそも、続けられるだけでもすごい、というような厳しい環境で活動をしているのかもしれません。それぞれのフィールドでHIV/AIDSにかかわる人たちが、2年に一度集まって各々のモチベーションを上げてまたフィールドに戻り活動を続けていくためにも、こういう国際会議の場が機能しているのかもしれません。

ICAAPの次回会議は、タイのバンコクで2013年に開催予定です。

 

LTs

★おまけ★

釜山で「Living Together」に新しい仲間が増えました。

Greetings from Busan, Part 3

おーつき

Title29日(月)には、「Ideas That Work – Innovation and HIV(効果的なアイディア-イノベーションとHIV)」という、なんだか眩しいタイトルがついたセッションで口頭発表を行いました。「Creating a Better Work Environment for Everyone – An Approach of "We're Already Living Together with HIV/AIDS"(すべての人にとってより働きやすい環境づくり-「Living Together」の取り組み)」と題した、ぷれいす東京がHIV陽性者の就労支援の一環として、東京障害者職業センターと協働して行っている企業向け研修事業についてまとめた発表です。出血時の標準予防策やプライバシーが守られる環境があれば、HIV陽性者とともに働く上で特別な配慮は必要ないことなど、研修内で効果が見られたいくつかのアプローチを紹介し、陽性者にとって働きやすい職場は誰にとっても働きやすい職場へつながる、ということなどをプレゼンしました。

残念ながら、今回はHIV陽性者の就労支援といったテーマの発表は、他にはありませんでした。

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韓国は人口が4,900万人ほどで、昨年の時点で累計7,268人のHIV陽性者が暮らしています。国民は無料で抗HIV療法を受けられますが、外国籍の人はHIV陽性であることが判明すると国外退去となるそうです。また、ソウル以外の地域では、陽性者が他の病気やケガなどで他科診療を必要とする場合に受け入れる医療機関がほとんどないことが問題として指摘されています。

ICAAP組織委員会によるフィールド・トリップに参加して、現地の保健所と医療機関、民間支援団体とMSM向け検査・相談施設を訪問しました。このフィールド・トリップがユニークなのは、ガイドをするスタッフとともに現地のHIV陽性者のボランティアが同行するという点で、参加者は釜山とその近郊都市で世界陸上開催中のテグをめぐるバス移動中に、彼らの陽性告知からHIV/AIDSの活動を始めるまでのパーソナル・ストーリーに耳を傾けました。

HCTesting

全国の保健所でHIVや他の性感染症の検査が無料・匿名で受けられます(カウンセリングはなし)。一方で、HIV陽性の場合には、法律により陽性者の氏名などの情報を政府に届け出るよう定められています。

 

DIRMS

昨年釜山に設立された放射線医学の専門病院にはHIV/AIDSの専門医がいて、HIV陽性者のがんを始めとする合併症などの診療にあたっているそうです。

 

KoreanAlliances

Korean Alliances to Defeat AIDSは1993年に設立された、韓国国内に11もの支部を持つNGOです。HIV陽性者の支援や予防啓発事業などを行っていますが、2008年に李政権になって以来、助成金が減額されるなどして、資金集めが大きな課題となっているとのこと。テグ支部は、雑居ビルの一角に小さなオフィスを構えていました。

 

EntranceiSHAP

MSM向けのHIV検査・相談センターであるiSHAPは、ゲイ向け商業施設が多く集まる地域でのアウトリーチ活動も行い、またコミュニティ・センターとしての機能も有しています。医師1名を除くスタッフは全員MSM当事者で構成されているそうです(医師を雇っているのは、法律によりHIV検査結果の告知は必ず医師が行わなければならないとされているため)。

 

Seomyeon

釜山一の繁華街である西面には、レズビアンやゲイ向けの商業施設もあります。