スタッフ日記 “矢島 嵩”

風立ちぬ

矢島 嵩

長く暑い夏が一陣の風とともに去り、命をいとおしむような季節が訪れました。

僕にとっても、今年の夏は心にも身体にも厳しい季節だったのですが、ここで気持ちを切りかえて、いざ生きめやも(?)です。

と思いきや、昨晩から鼻水が……。
あー、風邪断ちぬ(冷汗)

より良いスタートって?

矢島 嵩

ウィーンからの日記に対抗して(笑)、猛暑が少しだけやわらいだ大阪からのレポートを。

感染が分かってから間もない人たちのためのグループミーティングが、関西で立ち上がり定着するようにと、この3年間こつこつと大阪通いをしてきました。多くの出会いと議論と試行錯誤があり、昨秋、ついに「ひよっこクラブ」第1期がスタート、冬には第2期、そして先週に第3期が終了したところです。昨日はスタッフのミーティングがあって、僕もアドバイザーとして参加してきたのでした。

この3年間に分かったことは、関西にはこういったプログラムに対するニーズが明らかにあり、建設的な発想を持って意欲的に関わる地元の人たちがいる。すでに活動をしている当事者団体や医療機関との信頼関係があり、地元NGOや行政とのネットワークがあり、職種を越えた個人的なつながりも色濃くある。東京で新陽性者ピア・グループ・ミーティング(PGM)が始まったときとは、異なる環境でした。当初は、NGOでの個別支援や交流スペースなど、「足りないもの」ばかりに目が向いていたのですが、どこかの時点で 「すでにあるもの」をどのように活用して進むかという発想に変わったのでした。出来ない理由を探すのではなく、やる方法を考え始めると、ものごとが動き出し、協力してくれる人が現れる。そんなダイナミックな3年間を関西の仲間たちと経験させてもらった幸運に感謝。

季節がめぐるほどに、人も顔も変わり、可能性が広がっていくのを知ったのは大きなことです。しかし、その間に僕自身はどれだけ自分の人生の歩を進めてきたのだろうかなどと考えたりもするのです。このところ、 ひたすらHIVの優先課題に取り組み、一つ一つがチャレンジの連続で、集中してがんばってきたつもりです。一方で、将来のことや、自分の幅や、大切な人たちとの関係に影響があったことも事実。ちょっと時間軸を長くとってみたり、ちょっ視野を広めにとってみたり、ちょっとだけ今の自分を客観的に見てみると、なんだか複雑な気分になります。

実は、十数年前に僕のほうから連絡を絶っていた高校時代からの付き合いの古い友人が関西にいて、今回、連絡をとって会ったのです。この十数年の無沙汰を詫び、その理由も打ち明けました。病気のことや家族のこと、連絡しようと思っていたことなども。そうだったんだー、なるほどー、謎が解けたよー・・・快活で柔軟な彼らしい反応でした。「突然音信不通になってしまって、ゴメンね」といまさらながら謝ったら、「でも、四六時中心配してたわけじゃないから」とカラッと笑い飛ばされて、なんだか軽い気分になりました。

感染を知ってからのより良いスタートをテーマとして活動してきたこの十年。僕自身も、あらためて、これからの人生のより良いスタートが切れますように。そんなこと新幹線で考えつつ、いつもよりもちょっと上等な幕の内を喰らいつつ、流れる景色をながめつつの帰路でした。

あらためてご紹介「HIVをめぐる さまざまな人たち」

矢島 嵩

もう読んだよーというかたもいらっしゃるかと思いますが、あらためてご紹介します。何たって苦節7年、渾身の力作(ちょっと大袈裟)なものですから(笑)。

この本は、2003年からぷれいす東京Newsletterに連載してきたシリーズ「難しさと向かうこと」 の中から4編と、新たに収録をした2編、あわせて6編のインタビューを収載したものです。何十時間もの収録テープの文字おこしをして、前後した話を並べ直してみたり、いい話を泣く泣くカットしたり、意味を確認して補足したりしつつ編集を繰り返して、ついに一冊の本になったとものです。

このインタビュー集には、HIVを「自分事としてとらえているさまざまな人たち」の語りが集められているのが特徴。そして、10人のインタビュー協力者だけでなく、その周囲の人たちも語りの中に生き生きと登場します。ソーシャルワーカー、就職先の人事部、上司と同僚、区役所の窓口、カウセラー、同級生、いとこ、母親、息子、ともだち、パートナー、医者、ナース、透析の技師、リハビリ担当者……。まだまだ登場します。HIVに影響をうけて生きているのがHIV陽性者だけでないことがよくわかります。そして、社会の関わりの中にこそあるHIVの課題が見えてくることでしょう。

インタビュー集

[目 次]
第1話 人生設計をしなおすということ
〜陽性告知後の人生での “めぐり会いと結婚”〜

第2話 人事担当者の新たなるチャレンジ
〜免疫機能障害者の採用をめぐって〜

第3話 母親と息子のそれぞれの葛藤
〜”家族の課題”と”セクシャリティ”に向き合う〜

第4話 福祉事務所で免疫機能障害を担当して
〜”手続き” “相談” “プライバシー”
さまざまな課題をめぐって〜

第5話 “偽陽性”いう結果に振り回されて
〜”告知を受ける” “結果を待つ” ことの重み〜

第6話 いくつもの病気を持ちながら地域で暮らす
〜HIV、結核、糖尿病、そして人工透析〜

B5判 54頁で、背表紙のついたシンプルな装丁と、読みやすい字組みを心がけて制作された本です。ぜひ、じっくりと読んでいただきたい一冊です。入手方法はこちら

「ハートをつなごう」HIV特集 再放送

矢島 嵩

ハートをつなごう」、見ましたか?
見逃したかたは再放送をどうぞ。
今日から3日間です!

NHK教育テレビ
再放送 6月7日(月)〜9日(水) 正午〜12時29分

活動報告会は熱かった(暑かった?)

矢島 嵩

一昨日行われたぷれいす東京の活動報告会は、参加者など計72名とのこと。会場はいっぱいで、熱気にあふれ、というか、実際に途中から暑くて、窓を開けたり、空調をいじったり(汗)。次々に出てくる部門報告も現場感覚たっぷりだったし、ゲストのうてつあきこさん(自立生活サポートセンター・もやい)のお話もとってもおもしろくて、充実した会だったナーって思います。

参加者《など》は正確には、参加者、スタッフ、ゲストということなのですが、ぷれいす東京の活動報告会って、そもそも“HIVをめぐる さまざまな人たち”が参加する「ごちゃまぜ感」がウリなのです。今回もきっと、ボランティア・スタッフ、ネストの利用者、寄付・賛助者、協働している団体や個人、行政、製薬会社、研究者、学生、アーティスト……。さまざまな人たちが集ってくれたのではないかと。

当日は、ひとり二役三役と忙しくしていた人もけっこういて熱さはそのせい?かもしれません。まきはらさんがバディと相談部門の報告をしながら司会をしていたり、会場受付係のはらださんがネスト部門報告、総会で会計報告をしつつ懇親会の幹事さんとか、ホットライン/相談、ネスト/Gフレ、相談/研究など部門報告のハシゴもアリ。また、日ごろ事務所やネストで活動をしているひとたちが、タイムキーパー・物販・受付・搬送をしてくれていたり、あらたにむかえた事務局の人材が中心となって2009年度年間活動報告書ができあがったり、いっぽう当日も電話相談を受けていて活動報告会に参加できなかったスタッフもいたり……。活動のひろがりと変化を予感させられる機会でもあったのかも?

ちなみに、僕も、報告者の撮影と記録係やNewsletterに載せる感想文をあちらこちらでお願いしながら、ネスト部門で新陽性者PGMインタビュー集の報告をしたのですが、「撮影」と書いた青い腕章をつけたままでした(汗)。

活動報告会の詳細は、次のNewsletter66号:20108月号)に、何人かの感想文とともにお届けします。お楽しみに!

Newsletter65号できました。

矢島 嵩

65号の巻頭は「エイズ予防のための戦略研究〜MSM首都圏グループの取り組みも最終年度〜」。MSM首都圏グループの事務局でもある生島さんが、これまでの首都圏グループの活動を振り返りつつ、最終年度とその後を見据えて書いたもの。さまざまな難しさと可能性を含んでスタートしたこのグループの、総仕上げでもあり、今後に残す礎石ともなる、とてもとても大事な最終年度。苦労をしながらもその可能性を信じる気持ちを感じさせる巻頭です。

また、「地域におけるHIV陽性者等支援のための研究班」でおこなった研修や映像教材・冊子など「支援者の準備性向上のための取り組み」についての記事、ネストで行われた第8回Women’s Salon「川名奈央子さんと話そうpart2」の報告と参加者感想文、新しくできたインタビュー集「HIVをめぐる さまざまな人たち」の紹介を掲載しています。そして部門報告もまるまる4ページです。全部で8ページなのですが、びっしりと活動の様子や成果が盛り込まれたと思います。PDF版はぷれいす東京のトップページから[刊行物]→[ニュースレター]にあります。

Newsletterは年に4回(2月、5月、8月、11月)発行なのですが、5月号はもっともタイトなスケジュールでの進行なのです。3月末で活動報告を締めて、4月上旬に報告をまとめ、中旬に編集・レイアウト・校正そして印刷をして、ゴールデンウィーク直前後に発送、5月下旬の活動報告会のお知らせを兼ねて初旬にはみなさんに届くという段取りです。

そのプロセスは“非常”のリレー。多くの人が分担をしてくれているのですが、ボランタリーだったり非常勤だったり、、、このために常時待機しているわけではなく、他に仕事や活動やさまざまな事情を抱えつつもこのリレーをつないでくれているのです。ですから、しかたなく(ホントです!)締め切りにうるさい鬼編集長?と化して“非情”にリレーをつなげないといけないのです(汗)。

あちこちで、ご迷惑やらなにやらおかけしていますが、あらためてお礼を申しあげます。そしてこれからもどうぞよろしくお願いします。

陽性告知後に何が起きているのか?

矢島 嵩

ベティ・デイビスが出てくる古い映画のタイトルみたいですが(笑)、とっても大切なテーマを扱ったシンポジウムです。

僕もパネリストの一人なのですが、先日、出演者たちが勢ぞろいの濃い~メンバーで顔合わせがあったところです。

昨年度より行ってきた陽性告知後に関するインタビュー調査や、保健所・検査所で検査や告知にかかわる人、拠点病院で診療をする人、陽性と知ってからのより良いスタートをNGOで支援する人(←僕のことなのです 汗)などの、それぞれの立場から見えている、「何が起きているの?」とか「何か必要なの?」を出し合って、今後に役立てられるようにしたいね、、、といった話になりました。

実は、陽性告知直後というのは、人によってはもっとも孤立している状態だったりすることもあり、ほんとうは何が起きているのかといったことが、こういった縦断的(検査、医療、当事者支援・・・)なメンバーで共有されることは、ほとんどなかったのではないかと思うのです。


◆シンポジウム 「HIV陽性告知後に何が起きているのか?」
日時:4月29日(木・祝) 13:30
会場:津田ホール 会議室T101・102
   東京都渋谷区千駄ヶ谷1-18-24
 
出演:
井上洋士(放送大学 慢性看護学・健康社会学 教授)
小島弘敬 (東京都南新宿検査・相談所)
大木幸子 (杏林大学地域看護学研究室 教授)
山元泰之 (東京医科大学病院臨床検査医学科 臨床准教授)
矢島嵩 (ぷれいす東京新陽性者PGMコーディネーター)
司会:長谷川博史 (ジャンププラス 代表)
 
どんな展開になるかわかりませんが、ぜひご参加ください。詳しくはこちら



風邪ひいた

矢島 嵩

みたい……。

とやまのかすみ

矢島 嵩

たかさごの をのへのさくら さきにけり
とやまのかすみ たたずもあらなむ

百人一首のうたで、子どものころから意味もわからず諳んじていたものです。

意味を解説すると、「明日はお花見、桜が咲いてキレイだから、戸山公園はお天気でいてちょうだい」(矢島翁新説?)です。

調べてみたら、とやまは戸山ではなく外山で、「見あげると山は桜 春霞がたたないでおくれ」みたいな意味らしく、まぁ遠からず、でも近からず(笑)、でした。

良い天気でありますように!

グループワークな日々

矢島 嵩

僕は、ぷれいす東京では新陽性者ピア・グループ・ミーティング(PGMのコーディネーターということをしていて、各期の準備や調整、参加者のみなさんとの連絡などをしています。また、ジャンププラスで「HIV陽性者スピーカー研修」というプログラムを担当していたり、関西で立ち上がった「ひよっこクラブ」という陽性を知って間もない人たちのためのグループミーティングのお手伝いをしていたりしています。考えてみたらどれもグループワークなんです。

このところ、ちょうどネストでは先週の土曜にPGM第52期が最終回を迎え、ジャンププラスではこの連休2日間に「HIV陽性者スピーカー研修(動機・スキル編)」を都内の研修会場で行ったところ、火曜に「ひよっこクラブ」の運営会議があり大阪往復、明日の木曜からPGMの第53期が始まるという、めくるめくグループワークな日々なのです。

何年もこういったことに関わっているのですが、今もグループワークって、おもしろいとも難しいとも思います。でも、やっぱり、人と人が出会って、何かを感じたり発見したりするプロセスに関われるというのは幸せなことだと、つくづく思います、ほんと。

でも、オーバーワークな日々ではありませんように(笑)。