スタッフ日記

オレンジの国から deel 4

以前から、HIV陽性者の中に抑うつ傾向などメンタルヘルスの課題をあわせ持つようになる人が一定割合でいることは、数々の調査研究で明らかになっています。

今回の会議では、メンタルヘルス全般に焦点を当てたセッションがいくつかありました。
ひとつは、先住民族のコミュニティでHIV陽性者のメンタルヘルスをどう支援するかというテーマで、特に自殺リスクの高さへの対応を考えるというものでした。
医療者が着目するのは、精神状態が悪化すると抗HIV薬のアドヒアランスにも影響するということですが、あえて抗HIV薬の服用をやめる、という形で死に近づこうとする道を選ぶ人もいます。

また、自殺にもスティグマがあり、語りにくさがあります。

1990年に感染が分かったという、カナダの先住民族出身のHIV陽性者による発表がありました。
当時、彼の出身コミュニティに感染が知られたら一族の恥になるので、自死を考えているということを思い切って医療者に打ち明けたところ、その気持ちを否定せずに、自殺しないで済む方法を一緒に考えようと言ってくれたことから信頼関係が築けたとのことでした。

HIV陽性告知直後の特に心理的なサポートが必要な段階でそれを受けられないでいる陽性者は多く、医療者は血中ウィルス量などの検査だけでなくメンタルヘルスのスクリーニングをすること、HIVケアカスケードだけでなく、メンタルヘルス・ケアカスケードの「90-90-90」(HIV陽性者の90%以上がメンタルヘルスのスクリーニングを受け、うち課題がある陽性者の90%以上がケアを受け、そのうち90%以上が安定した状態になる、等)にも取り組んでいく必要があるという話で、このセッションは結ばれました。

先住民族のコミュニティにおける知見でしたが、ある程度他の環境にも当てはまるような、示唆に富む内容だったのではないかと思います。

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エイズ会議仕様になっていた王宮前のダム広場

おーつき

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