スタッフ日記

オレンジの国から deel 5

アムステルダムに3ヶ所ある薬物使用ルーム(Drug Consumption Room)のうちのひとつを訪問しました。
オランダでは、マリファナなどのソフトドラッグを、個人が私的に使用することは非刑罰化(「合法化」ではない)されています。
HIV等の感染予防のため、ヘロインなどの静脈注射薬物使用者に清潔な注射針・シリンジを提供するハーム・リダクションを行うことは知られていますが、薬物使用ルームもハーム・リダクションの考え方による取り組みのひとつです。

例えば、マリファナを店で購入し自宅に持ち帰って使用する分には個人使用として刑罰の対象になりませんが、自宅のような私的スペースのないホームレスが道端で使用するとなると、罰せられかねません。
今回訪問した薬物使用ルームは、ホームレスを中心に1日あたり約500人の利用があり、ドリンクを飲んだり、シャワーやランドリー、ソーシャルワーカーへの相談サービスなどを無料で利用できます。単に薬物を使用するだけの場所かと思いきや、ソーシャルネットワーキングや自立の機会を提供することに重きを置いていて、路上で孤立するホームレスが薬物使用ルームの利用をきっかけに他の薬物使用者やスタッフら支援者とのつながりを作れるように配慮されています。
カナダのブルース・K・アレクサンダー博士の「ラットパーク」の研究にあるように、人が薬物を使用してしまうのは、快楽や薬物の依存性のせいではなく、孤独やストレスなどの苦痛から逃れるためである、という根拠に基づくものです。これまでに、薬物使用ルームの利用を経て自立し、ホームレス状態を抜け出し、薬物も使用しなくなったという人を多く送り出したそうです。

なお、この薬物使用ルームはルールに同意して利用登録をした薬物使用者のみが利用でき、そのルールは(誰でも守れるよう)「1. 安全、2. 衛生的、3. ストレスのない状態」に努めることの3つのみ。

アムステルダムでは元々薬物使用者全体の30~40%がHIV陽性であったのが、注射針・シリンジ交換プログラム導入後に12%に、1998年に最初の薬物使用ルームができてからは4%にまで下がったとのこと。また、薬物使用ルームでは路上とは違い、オーバードースなどが起こっても誰かがすぐに応急処置や救急搬送等をできるので、薬物関連死も激減したそうです。

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ソフトドラッグは街中にある「コーヒーショップ」などで販売されています(ただコーヒーを飲むだけの普通の喫茶店であれば、「カフェ」)。

おーつき

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