陽性者と家族の日記

きんぎょ

 世間ではこの時期は大型連休なんだろうが、自分の仕事はこの時期が一年で一番の繁忙期に当たる。遠くへ出かけるのは暇も取れないし、気も進まない。

 今日はたまの気休めにと昼過ぎに彼氏とデパートへ足を運んだ。
 地下食では初夏にふさわしい企画が始まっている。そこで「きんぎょ」の御菓子を見つけた。丸い寒天の中に羊羹の金魚が数匹泳いでいて目にも涼しげ。
 たしかチラシには限定品と書いてあったのでてっきり売り切れと思っていたがそれがまだあったので、この機会にと買ってみた。

 家に帰って、お茶を点てて菓子楊枝を使っていただいてみる。
・・・味は別に問題なく、おいしゅうございますが、一つ気になることがあって、それは何かというと、菓子楊枝で戴くと、食べる過程で寒天の中の金魚がことごとく真っ二つになるということ。
 見立てた動物を食べる残酷さという点では「ひよこ」や「はとサブレ」と同じなんだが、きんぎょに関して言えば、寒天の上(つまりは水面)から楊枝をバサッと下ろして金魚を真っ二つにしてしまうので、まるで自分が金魚をギロチンで処刑しているような、そんなとてもいけない気分に襲われてしまうのである。
 この御菓子を心痛めることなく最後まで戴くには、鑑賞後一気に一口で飲み込んでしまうか、金魚を処刑しないように切り分ける超絶的な楊枝裁きが必要なようである。

蔵人

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