陽性者と家族の日記

過去の光。未来への光。それらの欠片

「‥ドラクエ、新しく出たやつ、欲しいか?」

パートナーが聞いてきた。
懐かしい。

僕が良くやっていて、記憶に少し想いが在るのは、5だ。
‥あの、パパスが出てくるやつ。

そのあと、プレステを当時付き合っていた人にクリスマスプレゼントで貰って。
それに付随していたソフト。
良く分からなかったからと、量販店の店員さんに、みのるの世代にお勧めは何だと聞いてきたらしく。
買ってきてくれた何枚かのうちに入っていたのが。
FFの7。
だったんじゃないかと記憶している。
学校帰りや、家に帰りたくなくてその人の家に泊まり込んだ時に良くやっていた。

ドラクエとFF。
懐かしいな。

小説では。
開高健。宮本輝。森鴎外。灰谷健次郎。ヘミングウェイ。ヘッセ。
音楽はといえば。
ニルバーナ、メガデス、ガンズ、ソウル・アサイラム。
‥懐かしいな。
どれも10年以上経つ。
全てではないが、支えにしてきたものたちの一部だ。

‥本は、今読み返している。
何故だか最近、あの時、頭の中に構築した世界に今また入ってみたいなと思うからだ。
焼き付いて離れない情景が、良く出てくる。
今また改めて読み返す事で、あの世界をどう感じるのか。
そしてまた、どう再構築されるのかと非常に興味深いからだ。

自分の主観だけで述べるなら。
上述した作家群は、父性と言うものを、魅力として描写するということに長けているんじゃなかったろうかと。
物凄く独断的ではあるけれどそう思っている。
だから支えにし、その描写される世界感に浸るということは心地良かったのかもしれない。

‥なら。ゲームだって。
別に特段と支えにしてきたものではないけれど。
あの時の何かを引き出すきっかけにはなるかもしれない。

やってみようか。

「‥うん。欲しいかな。」
そう答えると。

「そうか‥。ところで、ドラクエって何だ?」
と。怪訝な顔をして聞いてきた。
‥説明、面倒だなと思いつつも。
「‥ロープレ。敵倒してお金稼いで、武器とか集めてシナリオクリアして、ボス倒すの。」
「‥ロープレ?」
眉間に皺をよせて、また怪訝な顔で聞いてきた。

‥もう良いや。

僕の世代は分からないと彼は言う。

こっちだって、彼の世代は良く分からない。

でも、普遍的なものは分かり合える。

‥それで良いのかな。
ずっと一緒に生きてこうね。

‥こんな素直な気持ちは珍しい。
いろいろあって、身の回りの環境が一変したせいなのか。
もう、数ヶ月前の生活には戻れない。
当たり前のものというのは、なくしてから初めていかに貴重であったのかが分かる。
それは常日頃から思ってきた事だし、人にも言った事があったのに。
それがいざ、改めて、より大きなものとなって自らの身に降り掛かると、どうしたらいいのかと途方に暮れてしまうとは、皮肉だし矛盾だ。器量の無さを実感してしまう。
かわし乗り越えてきた器があったという自負を砕かれる。
乗り越えても乗り越えても。
予測の範囲を越えた大きなものは降ってくる。

でもまだ、一緒に生きて行きたい。

だから。
その為には、なにをも厭わない。
障害があるなら、それを乗り越える力を持とう。

光はそれら全てをも包括していると思うから。

越えていけるだろう。

みのる

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