20代 女性 東京
まずは、私の体験談を。
もう5年前のことになります。私は妊娠七ヵ月の時にHIV検査をうけ感染を知りました。引っ越しをして引っ越し先の近くの個人病院を訪れ、たまたまそこの病院で通常の妊婦さんが受ける検査のついでにHIV検査を勧められて受け、そして感染がわかったのです。
院長室に通され告知を受けました。その時私が医師にまず尋ねたのは、「おなかの赤ちゃんはどうなるのですか?」でした。
とにかく拠点病院を紹介してもらい、(ちなみに、告知を受けた病院では、HIVに関する事には何も答えてもらえませんでした。)まずは血液内科にかかりました。血液内科の先生は数名の男性のHIV感染者の診療経験がある、とのことでしたが、問題は私が妊娠しているということ。(そこの血液内科の医師もHIV感染者の出産に関しては情報をもっていませんでした。)
産婦人科と小児科のほうに話がいき、まずは産婦人科で、私が受け持ちましょう、と名乗り出た産婦人科医師がいたことから、私の受入れが決定されたようでした。病院にとって、初めてのHIV陽性者の妊娠出産、ということで、関係者のナーバスな雰囲気が私にも伝わってきました。私は何だか、大変な事をしでかしてしまっているのではないか、そんな不安な気持ちを抱えていました。
産婦人科の医師からも「妊娠初期でしたら中絶をお薦めしますが、七ヵ月めにはいっているので法律的に中絶はできないので、あなたの場合はなんとか産むしかない。」そのような事をいわれました。
そして、予定より一ヵ月早く、帝王切開手術により子供は無事生まれました。そして最終的に、子供は感染していないことがわかりました。
もしかしたら、私の場合は妊娠七ヵ月での告知ということで、妊娠を継続するかどうかの判断を迫られる状況になかったことがラッキーだったと言えるのかもしれません。とにかく産むしかない、なるようにしかならない、と開き直るしかなかったのです。
医療的には、適切に問題に対応すれば(服薬を開始したり。)母子感染そのものは、HIV陽性者の妊婦さんにとってさほどウェイトを占める大きな問題とはならなくなってきたような印象をここ数年私は受けています。自らの感染を知ったうえで、妊娠出産を希望する感染者もたくさんいらっしゃるからです。
まずは、ご自分がどうしたいのか、どうするのか決めなくてはいけません。妊娠中の突然の告知であったならば、きっとご本人にとって精神的な負担が何かと大きいと思いますが、色々な事を決めるのにあまり時間はかけられないのも現実です。
または病院、医療者によって感染者の妊娠出産には否定的であったり、最新の情報を持つ医師が少ないのが現状でしょう。このような状況において告知を受けた女性が、医療者のいう事に振り回されず、少し勇気をもって一歩を踏み出し、情報収集をした上で、ご本人にとってベストな選択をされることを願って止みません。