たかし/40代 ゲイ HIV+
僕はなかなか親に言えなくて、迷いました。健康な身体に生んで育ててくれた親に、すまないことをしたと思ったし、もし知ったらすごくショックだろうし、きっとキャパを越えてしまうだろうと思ってました。
それに、僕は自分がゲイだということを隠していて、そのことも知られてしまうのではないかと心配でした。けれど、僕は実家で親と同居していたので、言わずに居続けるのも大変なことでした。毎日何回も薬を飲んだり、病院に行ったり、病名を偽って嘘に嘘を重ねて過ごしていました。
しかし母親の勘は鋭いものです。特に根拠もないのに「息子は重大なことを隠している」「病名は偽りじゃないか」と悩んだあげくに「エイズ」という疑念を持って一人絶望していたのでした。ただ、僕の口から言わない以上は、問いつめるわけにもいかずにいたのです。今になってみると、親に言うことをためらって迷っていたことが、親を苦しめていたのです。辛かったろうと思います。
結局、2年近い年月をかけてしまいましたが、すべてをちゃんと話しました。HIV感染していることも、ゲイであることも。僕はすべてを話せて良かったと思っています。
次は親がこのことを話せる相手が居るかどうかが問題です。僕がそうだったように、誰にも話せないのは辛いことです。だから信頼できる主治医やカウンセラーに会わせたり、「陽性者の子供を持つ親の会」を紹介したり、フォローしているつもりなんです。だけど、一番良いフォローは、僕が元気でいることなんですよ。