障害者枠で働く陽性者の交流会

「HIV陽性者として働くということ~苦悩・葛藤・孤独のなかで~」TRUTH(感染告知2007年/服薬歴8年/初参加/ゲイ/30代)

 医療の発展のおかげで今では良い薬が開発され、HIV=死ではなくなったと言われて久しい感がある。HIV陽性であるという事実はその人の人生の中で、依然小さなことではないにせよ、すべてを覆ってしまうものではすでになくなった。人生の一部のこととしてとらえられるようになった。しかし仕事となるとこれは陽性者だろうが、そうでなかろうがおしなべて広く一般的に人生の大きな部分を占めるものであることに依然変わりはない。

ゆえにHIVを抱えながら働くということは、必然的に大きな関心事になるとともに、心配事の一つであることは、陽性者のだれもが抱える心情である。それぞれの陽性者がそれぞれの思いを抱えて仕事をしている。それは陽性であることを隠しながら健常者として働く者、もしくは初めから障害者として働いている者共通である。今回障害者として働いている人たちが集まることでそれぞれの思いや経験をシェアすることができた。
 障害者枠を利用し、特例子会社に就職されて働いている方々が結構いらっしゃった。何度か転職を繰り返し、今のところに落ち着いている方もいらっしゃれば、今後も流動的に、積極的により良い条件を探していくという方もいらっしゃった。それぞれの立場から様々な状況があり、共通していることは労働条件や環境は会社によって異なるということ。入ってみないとわからないことが多く外から見ているだけでは内情は決してわからないということ。またどこまで自分が妥協するのか、労働条件や待遇など自分の中で決めることも多いということだった。
 たとえどのような状況下にいようとも、各人がその人なりのストーリーを紡いでいくしかない。その人なりの経験を積み上げていくしかない。自分で自分の人生を切り開いていくしかない。こんな当たり前のことを再認識した気がした。
同じ条件でも人によって感じ方が違い、最終的に「働き方=生き方」を決めるのは自分である。障害者だろうが、健常者だろうが働くということは生きていくということである。様々な制約や葛藤は人である以上HIVに関係なく必然なのだということをあらためて自覚した。HIV陽性者であることが確かにそうでない人に比べて多少なりとも自己の人生の決定に影響を与えることがあるかもしれない。今の健康状態に他人よりも不安を覚えることもあるかもしれない。しかし程度の差こそあれ、それは万人に共通した事であり、HIVに限ったことではないということを強く思った。
 以上のような再認識ができたことは非常に大きな収穫であるとともに、明日からの生き方にも影響するであろう。ゆえに今回のような情報共有の機会というのは、非常に意義深いことであると同時に、こういった機会を提供してくださった生島さんをはじめネストプログラムの方々に深謝したい。自分も今後少しでも利用する側から、支えていく側に回っていけたらと考える次第である。生島さん本当にありがとうございました。

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