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ぷれいすトーク「第31回 日本エイズ学会学術集会~アンコール発表会」感想文を掲載しました

第31回日本エイズ学会アンコール発表会

第31回日本エイズ学会・学術集会(2017/11/24~26開催)では、ぷれいす東京スタッフや研究班メンバーによる発表がありました。学会に参加できなかった方々にも聞いていただきたいと1月8日(月・祝)にアンコール発表会を企画しました。参加者・演者・スタッフあわせて48名でした。当日の参加者5名の方から感想文をいただきました。

参加者感想文

「これからも、自分に出来ることを!」タカヒロ(男性、ボランティアスタッフ)

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今年の学会は東京で開催されるので、久しぶりに参加できるかなと思っていましたが、今年はTOKYO AIDS WEEKSの運営スタッフとして参加していたので、学会の方まで時間をつくることができませんでした。

自分にとってこの学会は、「当事者として自分も何か出来ることはないか?」と考えるきっかけを作ってくれました。一昨年、東京で開催された学会に初めて参加し、たくさんの様々な立場の人がこの病気に関わっているのを見て、受身でしかいられなかった当事者としての自分に、新しい方向性を示してもらえました。

その後、ボランティアスタッフ研修を受けてGフレに参加。一昨年もTokyo AIDS Weeksのイベントに参加しましたが、今年は運営側として参加しました。同じイベントに違う立場で参加できたことは自分にとっても嬉しかったです。

来年の学会には参加できるかな・・・と思っていたところに、このアンコール発表会。学会のパンフレットに気になる演題がいくつかありましたが、その一部でも聞くことができて良かったです。

「LGBTとメンタルヘルス、そしてHIV-多面的な問題の解決のために―」武士(LGBTメンタルヘルスサポート カラフル@はーと ファシリテータ、作業療法士)

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「カラフル@はーと」の武士と申します。LGBTでメンタルヘルスに問題を抱えるダブルマイノリティのピアサポートに取り組んでいます。

HIV・AIDSはLGBTとメンタルヘルスの両方に関連が深く、今回のぷれいすトークは大変興味深いものでした。LASH調査では精神的健康度とリスキーな性行動・HIV感染の関連調査がありました。私自身、臨床やサポート活動の中で、感染症に限らず様々な身体疾患が精神的不調と相互に影響し合うことを実感しており、こういった分析はコミュニティにおける公衆衛生の視点から非常に重要であると再認識しました。

精神・身体的な問題は仕事や人間関係にも影響し、結果として経済的、社会的な問題へと重積化・複雑化する場合もあります。多面的な問題を抱える人の支援においては、自分の専門とは異なる領域を学んだり、支援者の横の繋がりを作ることが非常に重要です。アメリカの社会学者Mark Granovetterの“Strength of weak ties”という説があります。普段の自分の仕事や生活では関わらない個人や組織と接触すると、新しい情報やアイディアがもたらされる「弱い繋がりの力」を指します。今回の企画を通じて新しい学術的知識や支援の実際を学び、私の中に新しい視点が生まれたように思います。今後も情報発信や交流会に多くの方が参加され、良い力が生まれていくことを期待しております。

「年女・年男」高田良実(古いボランティア)

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しばらくご無沙汰していた様々な活動にまた参加できたらと思い、その手始めにぷれいすトークに出席しました。ちょっと変ですが、一番印象に残ったのは、司会の池上さんの、ご自身も生島さんも「二人とも年女と年男です」という発言でした。え~そうなんだ。それじゃあ24年前、1994年に横浜で国際エイズ学会があった年がぷれいす設立の年だから、その時もお二人とも年女と年男だったんだなあと思って、その頃のお二人の顔を思い出してたら(そんなに変わってないですが)、昔の活動の思い出が頭の中を駆け巡っちゃいました。

今回の研究発表の中にも「HIV陽性の相談員による電話相談」とか「ピアグループミーティング」とかあって、今はHIV陽性者の方々が活動の中に確実な地歩を占めていることがわかりました。24年前もHIV陽性者の活動家仲間はいたけれど、HAART治療のない頃だったから、「来週」の活動の相談はできても、まだ「来年」の相談や約束を一緒にすることはできませんでした。今は干支一回り先のことにだって一緒に思いを馳せることができますよね。陽性者も非陽性者も一緒に歳を取れるこの時代、どんな活動が求められているのかなあと、改めて私に考えるきっかけをくれた会でした。

「素晴らしい活動」Yuji(ゆうじ)(ゲイ/パートナー 、ぷれいす東京)

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ボランティアスタッフで参加した為に見れませんでしたのでアンコール発表会に参加しました。発表者の方々の話を聞いて頑張って活動してる事を素晴らしいと思いました。耳の不自由の僕で手話通訳を付いて頂き、感謝しています。ありがとうございました。

「ゲイの性行動と薬物使用の関連性に対する感想」成島光之助(ナルシマコウノスケ)(学生:ドイツ、Alice Salomon Hochschule Berlin)

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様々な専門家の調査結果を聞くことができ、とても貴重な時間を得ることができた。

その中でもLASH調査を元にした「薬物使用とHIV感染リスクの高い性行動の関連性」、「薬物使用と精神的健康度の関連性」等の発表(三輪岳史氏)が興味深かった。欧米の調査だと、例えば人気ゲイ出会い系サイトSquirt.org(カナダを中心とする主にアングロ・サクソン諸国に利用者が多い)が22,000人以上のサイト利用者に対して行ったアンケート調査等が既に存在したが、日本でゲイの出会い系SNSを利用した調査は初めてなのではないか。

上述のSquirt.org のアンケート調査では、全体の30%がSexの際に薬物を利用したことがあるという結果を得ており、その薬物使用者に対する「何が最もお気に入りの薬物か一つ選択する」質問で得られた回答は、クリスタルメス36.32%、大麻18.97%、コカイン12.59%と続く(ドイツのゲイ情報サイトQueer.deを参照した:http://www.queer.de/detail.php?article_id=28002)。ベルリンにおいても2012年以来クリスタルメスにかかわる犯罪件数が6倍も増加しており(2016年3月のベルリン警察麻薬・薬事犯罪部部長インタビュー時点:https://www.welt.de/vermischtes/article153717732/Manche-sagen-Crystal-ueberschwemmt-die-Homo-Szene.html)、とりわけゲイコミュニティのセックスパーティーにおいて流通していることが、麻薬等の依存者に対する相談支援施設の報告から明らかになっている。

LASH調査を見る限り、日本のゲイコミュニティにおいてクリスタルメスが流通しているとまでは言い難い。ただ、日本では流通していないからこそ、当該薬物あるいは薬物全体に対する知識に乏しいということも考えられる。欧米の現状およびクリスタルメスの毒性や強烈な依存性を考えると、薬物の危険性自体からアプローチする啓蒙活動もまた重要だとと改めて思った。

 

ぷれいすトーク「第31回 日本エイズ学会学術集会~アンコール発表会」概要

■日 時 2018年1月8日(月・祝)15:00~17:00

■会 場 CASE Shinjuku(東京都新宿区高田馬場1-28-10 バンフォーレ三慶ビル4F)

■参加者・演者・スタッフ 48名

座長 生島嗣 樽井正義 池上千寿子

演題・演者

  • HIV陽性者と周囲の人への相談における、判定保留者の背景について
    (牧原信也)
  • HIV陽性の相談員による、陽性者等向け電話相談サービスに関する考察
    (佐藤郁夫)
  • HIV陽性者等のHIVに関する相談・支援事業(ピア・カウンセリング等による支援事業)における在日外国人のサポートの現状と課題
    (山本裕子 NPO法人シェア=国際保健協力市民の会)
  • 感染がわかって6ヶ月以内のピア・グループ・ミーティングの参加者に関する考察
    (加藤力也)
  • 刑事事件等による身柄拘束者および受刑者に対するソーシャルサポートの一考察
    (村崎美和)
  • 薬物使用と性行動と精神的健康度の関連性ーMSM向け出会い系アプリ利用者の意識や行動に関する調査からー
    (三輪岳史)
  • わが国のMSMにおけるPrEPおよびnPEPの認知度、利用経験、利用意向に関する分析ーゲイ向けGPSアプリ利用者の意識や行動に関するLASH調査から
    (山口正純 武南病院)
  • GPS機能付き出会い系アプリを利用するMSMにおけるSexual Compulsivityスケール日本語版Ver.1の信頼性、妥当性の検討
    (井上洋士 放送大学)
  • ゲイ向けGPSアプリを利用するトランスジェンダー等の調査
    (大槻知子 代理発表:生島嗣)

■主催 特定非営利活動法人ぷれいす東京

■後援 ジョンソン・エンド・ジョンソン社会貢献委員会

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