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ぷれいすトーク「国際エイズ会議 in オランダ・アムステルダム参加報告会」報告

ぷれいすトーク会場風景

2018年10月3日(水)に、「国際エイズ会議 in オランダ・アムステルダム参加報告会」を開催し、参加者・スタッフあわせて26名が参加しました。樽井正義氏、井上洋士氏、山口正純氏、大槻知子氏の4名の演者からはそれぞれに視点の違う、興味深い報告を聞くことができました。
5名の方の感想文とアンケートの自由記述を掲載したのでご覧ください。

参加者感想文

「学会、PrEP、自分自身 」 サブロウ

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オランダというと、ドラッグに対して寛容な少し変わった国だな、くらいのイメージしかなかったのですが、今回の国際エイズ学会の報告を聞いて、トラムのデコレーションなどその盛り上がり方には驚きました。昨年の中野での日本エイズ学会も区をあげての盛り上がりはありましたが、その比ではないくらい。でも、当事者としては、出来ればエイズとはあまり関連のない一般の人達の反応も知りたかった気がしました。

今回の報告は盛りだくさんで、いろいろなことを聞いたり、考えたり、感じたりしましたが、ちょっと引っかかったのはPrEP。僕は健康な人が、少なからず副作用のある薬を飲むことに、少し抵抗があります。単にセーフセックスでいいんじゃない?ということにも。やっぱり好きな相手なら何もつけずに結ばれたい願望もあり、それならU=Uの浸透を推し進めた方が、自分の中に居続けるHIVに対する見方や周囲の捉え方も変わっていく気がします。

今回の報告を聞いて、まだまだ他の国での状況などを考えると、国際エイズ学会の存在意義は大きいと感じました。ただ陽性者一個人としては、より他人事と考える人達に、疾患としての情報はもとより、陽性者の現状や日常などを届かせようとする試み、日本エイズ学会がやっているような「社会」という切口の大切さも改めて感じました。

「オランダ・アムステルダムではハームリダクション」ジャンジ(akta)

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「薬物使用ルーム」の話が印象的でした。オランダは80年代からハームリダクション(※)を実践しており、行政の運営でアムステルダムに4ヶ所開設されているそうです。緊急の場合はそのまま救急につなぐ。ホームレスなどを対象に、安全に薬物を使用する環境を提供し、そこから人間関係のネットワークや自立・社会復帰を促進して成果をあげている。今回の国際会議では参加登録をすると自動的に「薬物使用ルーム」の案内が送られてきたそうだ。会場内にも注射針・シリンジ交換等の部屋が用意されていたようです。薬物使用者には罰を与えるべきだという考え方がまだまだ主流の日本は、個人の健康増進には何が効果的なのか、どのような対策が社会全体にとって害が少ないのか、専門家や研究者・当事者の声を聞きながら検討していく時期にきているのではないかと思います。

※【ハームリダクション(harm reduction)】
健康上好ましくない、あるいは自身に危険をもたらす行動習慣を持っている人が、そうした行動を直ちにやめることができない場合に、その行動に伴う害や危険できるかぎり少なくすることを目的としてとられる、公衆衛生上の実践や政策。
松本俊彦,古藤吾郎,上岡陽江 編著「ハームリダクションとは何か」

「世界で見れば状況はさまざま」ヒロト(服薬3年目)

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アムステルダム国際エイズ会議の報告会に参加しました。

自分の病気の世界会議に対する単純な好奇心もありましたが、大きかったのはHIV/AIDSの世界の状況をまとまった形で聞いてみたいという気持ちでした。それは、同じ病気の同じ陽性者であっても属する国や社会により状況が大きく異なるということを、断片的な情報からこれまでも感じていたからです。

発表を聞くと、やはり世界の状況は地域によってさまざまでした。日本では激減して久しいエイズによる死者数が、いまなお年々増え続けて止まらない地域もあるそうです。病気は病原体だけが作るものではなく、社会が作り社会が治すものでもある。いまここで元気に暮らす僕にとって、それはまさに自分事だと痛感しました。

また、今回の会議で多く見られたテーマは、PrEPとU=Uだったようですが、HIVを持たない人への適切なアプローチも社会によって大きく異なってくるのだろうと、発表を聞きながら考えました。それぞれの人が、それぞれの立場でPrEPやU=Uの意味を考えていくことが大切だという閉会のことばが、印象的でした。

僕も僕の立場で、時には世界の多様な状況にも思いを馳せながら、考えていきたいと思います。

「日本でアムステルダムのインパクトを体感」佐藤あきこ(看護師)

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今回4名のスピーカーの方々から、貴重なIAC報告を聞くことができました。
なんと贅沢な報告会なんだろう?ぜひ参加したいとの思いが先に立ち、予定をキャンセルして参加しました。個性豊かな先生方から専門性を生かした其々の視点でのお話に、いつの間にか吸い込まれるように聞き入ってしまいました。

写真やデータ等の豊富なスライドで現地の様子を臨場感たっぷりに、また数多いセッションの中から先生方が抜粋したトピックを解説つきでオムニバス方式で聞けるなんて・・・。貴重な機会を作っていただきありがとうございました。

先生方の話はどれも大変興味深く、世界の潮流、最新の知見や取り組みの紹介、ハプニングや夫々の思惑等、鋭い切り口で堪能できました。

一方で、最新の研究結果や動向にもっと関心を持ち、自身のリテラシーを高めていくとともに、大槻さんが仰っていた「自分らしくあるために」を大切にした支援に取り組んでいきたいと思いました。
「高田馬場のアムステルダム」も楽しめましたが、次こそは是非その実際を味わいに行きたいです。ありがとうございました。

「多様な視点からのAIDS2018」平吹悠介(30代/男性)

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AIDS2018の内容で印象に残っているのは、PARTNER2試験の結果が発表されたことです。U=U(Undetectable=Untransmittable)やTreatment as Preventionといった事を裏付けるエビデンスというのは既に複数の研究から報告されていますが、そのエビデンスを更に強固にするものとして非常にインパクトのある研究結果だったのではないかと思います。実は私自身もアムステルダムでのAIDS2018に参加した一人で、当日会場にてこのPARTNER2試験の発表を聴いていました。発表後に会場からの拍手が鳴り止まなかった事が非常に印象的でした。一つの研究の結果がこんなにも世界中の多くの人の心を動かすという事をその場で経験できた事は私にとっての大きな財産です。

報告会では、4人の様々なお立場の方がそれぞれの視点から見たAIDS2018をお話し頂きました。私自身は抗HIV薬の安全性や有効性の研究等への興味が大きく、そういった演題のセッションに参加する事が多いのですが、普段聴く機会の少ないテーマの演題の情報も得る事ができましたので、大変勉強になりました。国際学会は演題数も多く、自分だけでは一部の情報しか入手できないので、非常に良い機会となりました。ありがとうございました。

「アンケート自由記述より」

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  • 今、何が世界で課題にされているのかエイズの今を感じることができ、また、日本のこと、自分のことを考えるヒントになりました。
  • 日本の学会とは違うなーというのが感じました。陽性者の方々に光をあてているセッションが多い、という印象もうけました。日本はやけに薬関係が多い気がする。
  • 日本ではAIDSの話が忘れられつつあるように感じるので世界の動向を知りたくて来てみました。
    日本の場合、予防手段は薬事的に承認されないと思うのですが、PrEPが承認される可能性があるのでしょうか?
  • 今まで知らない最新の情報を得ることができたので良かった。
    もっと世界の最新情報に追いついていかなければと思った。オランダは色々な意味でぶっとんでいるなと思った。
  • 4名のスピーカーさんから大変貴重な示唆をいただきました。ありがとうございました。
  • 様々な視点での発表を聞くことができ、勉強になった。
  • 大槻さんの発表がわかりやすく興味深かった。
    オランダに対してあまり知識以外の印象がなかったので、実際に行かれた方の話が聞けて面白かったです。
    Prepに対しては個人的に思うことがあるので、感想文に書かせてもらうつもりです。
  • 正直、専門的な内容で理解出来るか不安でしたが、素人でも理解しやすい様に説明して下さり、多岐に渡る内容でも参加させて頂き良かったなという印象です。
    新人ボランティア研修や自分で知りたいと集めた知識ですと、日本のHIV/エイズに対する取組みは数年前より進歩していると感じていました。
    しかし、今回、このぷれいすトークに参加させて頂いた事で、世界的な取り組み(進歩)とのずれがあると認識出来て良かったです。
  • 国際的なHIV予防と日本政府のHIV防止の取り組みに広い隔たりがあると思いました。世界的に予防取組みの本気度が下がっている印象を受けました。それを解決するためにはそれぞれの国の宗教・女性権利・ひんこん対策に踏みこんでいく必要があると思いました。
  • AIDS2018のwebsiteで報告は見たり、U=U/PARTNER2の報告もよみましたが、実際に聴講された方の空気感を感じられてよかったです。それぞれのU=Uのとらえ方(受け止め方の違い)も、同時にきけておもしろかったですし、両面から(多方面から)見ることの大切さをあらためて認識しました。
    大槻さんのご発表に感動しました‼
  • 「U=U」についての山口さんと井上さんのとらえ方の違いが興味深かった。なるほどと思いました。
    アナル研究興味深かったです‼
    オランダの対策、姿勢がすばらしい ハームリダクション、セックスワーク、etc.
  • 4人の発表者それぞれの視点が違い、とても面白かった。年間90万人の人々が死亡している事実を日本にいるとなかなか感じにくい。世界的にはまだまだ資金を投入して解決すべき問題が山積み。それにしてもオランダの先進的な考え方にふれ魅力を感じた。LGBT、薬物、セックスワーカー、トランスジェンダーなどへの考え方は、日本に比べて10年も20年も進んでいる。
    一緒に生きていく、相手を責めるより受け入れていくという考え方は日本でも見習いたいと思う。

スタッフ日記

第22回国際エイズ会議に参加したスタッフの日記「オレンジの国から deel 1〜deel 8」もあわせてご覧ください。

■日 時
2018年10月3日(水) 19:00~21:00

■会 場
CASE Shinjuku(東京都新宿区高田馬場1-28-10 バンフォーレ三慶ビル4F)

■出 演

  • 樽井 正義(*NPO法人ぷれいす東京)
  • 井上 洋士(HIV Futures Japanプロジェクト/ 国立がん研究センター )
  • 山口 正純(*武南病院)
  • 大槻 知子(*NPO法人ぷれいす東京)
    *研究班メンバー
    平成30年度厚生労働科学研究費補助金(エイズ対策政策研究事業)「地域においてMSMのHIV感染・薬物使用を予防する支援策の研究」

■主催
特定非営利活動法人ぷれいす東京

■後援
ジョンソン・エンド・ジョンソン社会貢献委員会
ジョンソン・エンド・ジョンソン社会貢献委員会

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