アクティビティー

第33回日本エイズ学会学術集会・総会参加感想

第33回日本エイズ学会学術集会・総会が、2019年11月27日(水)~11月29日(金)に熊本で開催され、ぷれいす東京のスタッフや研究班のメンバーも複数参加しました。ぷれいす東京のブースも出展し、パンフレット「UPDATE! いくつ知っている?」や、研究班のLASH報告書などを展示しました。
学会に参加した7名の方から感想文をいただいたのでご覧ください。

参加者感想文

【ポジティブトークセッションを終えて】 桒原 健(一般社団法人日本病院薬剤師会)

学会初日に開催されたポジティブトークセッションの座長を担当させていただきました。このセッションの座長をさせていただくことは初めてでしたし、以前、病院でHIVを担当していた頃は、薬剤師として主に薬の話をしていましたので、こんな私に務まるのかと不安を感じていました。

続きを読む/閉じる

今回、すべての演者に共通していたのは、支えてくれる誰かがいたことだったと思います。そばにいて思いを受け止めてくれる人の存在の大切さを、改めて感じることが出来ました。会場には演者をあたたかく包みこむような空気が流れているような雰囲気があり、ゆっくりとお話を聞くことができたと思います。

不慣れな私をサポートしていただきました共同座長の佐藤郁夫様、3名の演者の皆様、会場に足を運んでくださった皆様に、この場をお借りして御礼申し上げます。ありがとうございました。次回、幕張の学会でも、ポジティブトークを開催したいと思います。多くの皆さまのご参加を心よりお待ち申し上げております。

【からだを外へ】 奥井 裕斗(服薬4年目)

熊本で開催されたエイズ学会に、Positive Talkの演者として参加しました。陽性者が自らの思いを壇上で語るこのプログラム、大勢の前で顔出しなんて自分には絶対に無理だと思っていましたが、今回友人の勧めで試しに応募したところなんと通ってしまい、半ば後に引けない形で登壇することになりました。

続きを読む/閉じる

いざ何を話すか考えたら、言いたいことは山積みでした。少し不思議でした。Twitterやブログでそれなりに自らの思いを表現してきたつもりだった僕に、言いたいことがまだこんなにあるなんて。

当日、数百人の皆さんを前に話を終えた後の、世界がストンとひらけたような開放感は忘れられません。それは大仕事をやりきった安堵感だけではありませんでした。ネットでばかり発信してきた僕の、大勢の前で思い切り声を出して自分が何者かを伝えきった初めての体験。いくつもの関係性に包まれながら無難であることや調和することに気を回してきた僕の、遠慮なく思いを吐露した初めての体験。僕が感じたのは、クローゼットから身体が外へ飛び出した実感、できなかったことができるようになった開放感でした。

広がった世界を、大切に生きていこうと思います。

【メモリアルサービスで話をさせてもらいました。】岡本 学(大阪医療センター 医療ソーシャルワーカー)

学会1日目の夕方に「第9回世界エイズデー・メモリアルサービス」が開かれました。メモリアルサービスにはこれまで何度か参加させてもらって、毎回、静かに涙を流す、そんな時間でした。

続きを読む/閉じる

今回は、医療者枠で話をしてほしいと依頼をいただいていました。「医療者」枠って何だろう?何を求められているんだろう?何について話をしたらいいんだろう?と、考えても答えの出そうにないことを考えてみたりしました。

メモリアルサービスの前に、ポジティブトークに参加して、みなさんのお話を聞く中で、「医療者」ではなく、「わたし」の話をさせてもらおうと決めました。とても個人的な話をしました。ちょっとだけ、抱えていたことでしんどく思っていた気持ちが軽くなったように感じました。

死なない病気になった!そう言われてはいるけれど、亡くなる人がいる。いろんな理由で検査を受けない人がいる。そのことを「その人」の問題ではなく、「そうさせる社会」の問題として、これからもソーシャルワーカーとしてHIVに関わっていこうと思っています。

【ソーシャルワーカーはみんな熱くて真面目!】首藤 美奈子(九州医療センター)

学会には6年ぶりに聴講のみの参加でしたので、今年はたくさんの発表を拝聴いたしました。いつもはあまり聞けない多職種、多領域の研究や取り組みは、ソーシャルワークのヒントとなるものも多く、自分の課題を多く見出せました。また日ごろなかなか会えない方、ゆっくり話せない方たちと情報交換したり、お互いの労をねぎらいあい(傷をなめあい)、かけがえのない時間ももて、実りある3日間でした。

続きを読む/閉じる

期間中にはソーシャルワーカーの懇親会が開かれ、北海道から沖縄まで27名があつまり、「受け入れ先がないんだけどどうしたらいい?」「そのためにこんなことしているよ!」「患者さんのために役所と議論した!」等々ソーシャルワークを語りあい盛り上がりました。飲み会なのに仕事の話でもりあがるなんて、ソーシャルワーカーはみんな熱くて真面目!感激しました。

エイズ学会でのソーシャルワークの発表が少なくなっているといわれていますので、聴講のみでも得るものはたくさんありましたが、来年はぜひ発表でソーシャルワークを盛り上げていけたらと思っています。

【会議は踊る】宙太

平成から令和に代わる年。還暦を前にしてHIV に好かれた遅咲きなおっさんにとって、今回の学会参加はポジティブなゲイに生まれ変わる限界突破の活動でもありました。

続きを読む/閉じる

日本エイズ学会は平成の30年間を経て、学際的なダイバーシティ学会に変貌。色惚け看護士の目には何気にカオスな舞踏会の会場に映ります。

ドレスコードは「黒」で決まり。格式高い社交の場で媚薬売りの商人たちは競い合って大富豪をおもてなし。TPO をぶっ壊す輩たちは静寂なクラシック会場を出たり入ったりとおかまいなし。衆道を語らせる演舞の締めもタイムアウトでめんもくなし。

日本の障害者福祉サービスのおかげで高価な薬が飲める「今」に感謝しながらも、地球規模の自然災害や、世界的な金融危機という諸行無常の危うい後世を憂い、自覚することは「他力本願に生きる」。

超ネガティブなゲイのおっさんにも優しい新時代でありますように。白髪のじいさんになっても若い子たちと一緒にマイムマイムが踊れますように。今年も「腹黒」のカミングアウトはしないでおこうと誓う、今回の学会でした。

【エイズ予防啓発の大きな転換点】金子 典代(名古屋市立大学看護学研究科 准教授  厚生科研 MSM予防啓発の研究班代表)

MSMへの予防啓発研究に関わって14年になりますが、予防啓発の方向性も大きな転換点にさしかかったことを痛感しました。HIV感染者数は横ばいになり、ここから新規感染者を減らしていくには感染リスクが高い層を見極め検査や予防を届ける、踏み込んだ介入が求められます。これは医療だけでなく当事者コミュニティと協働していかなければ達成は難しいでしょう。

続きを読む/閉じる

しかし、日本ではエイズのコミュニティワーク、セクシュアルヘルスプロモーションに関わる人材がたくさんいるか?というとかなり厳しいのが現実です、予防啓発のフロントラインで活躍する人材のエンパワメントもますます大事になることを痛感しました。

【新たなる出発】ふくP(ぷれいす相談員)

第33回日本エイズ学会学術集会が、2019年11月に熊本で開催されました。エイズ学会で熊本を訪れたのは三回目。前回2013年には初めて、震災前の熊本城を訪れていたので、今回の再訪は感慨もひとしおでした。

続きを読む/閉じる

恒例の「治療のガイドライン」のシンポジウムでは、治療開始基準に変更はなく、CD4陽性リンパ球数に拘らず、すべての陽性者にART(抗HIV療法)の開始を推奨するとなっていましたが、医療費助成制度との兼ね合いを検討せよとした明示も、そのまま残っていました。

ARTの推奨薬剤に関する前回までとの明らかな差は、ARTを「2剤あるいは3剤以上を併用する抗HIV療法」と定義したところでしょう。昨年大きく取り上げられた「2剤併用療法」について、具体的な薬剤の「組み合わせリスト」には入りませんでしたが、その有効性が認められた形です。海外での大規模臨床試験で良好な結果が報告され、海外のガイドラインにおいて、条件付きですが実際に推奨されていることを受けてのようです。

ここ何年も毎年2剤くらいの新薬が登場し、その度に米国DHHS(ガイドライン)が変更されるのに伴い、日本でも推奨薬剤のリストが入れ替わる状況となっています。今回もキードラックがビクテグラビルの新しい、ちっちゃなシングルタブレットを選ばない理由がないと、登壇した各メジャー拠点病院の先生方がおっしゃていました。

医療経済的な面において、日本では新薬がすぐに推奨され、それが順繰りに変わっていくので、ジェネリックを使う暇がなさそうとの声も聞かれました。

ただし、ジェネリックといえばPrEP(暴露前予防内服)ということで、他のセッションも含めて、日本の現状について報告がありました。少しずつでも進展している模様です。日本に合った、納得のいく体制をと思います。

他のセッションで気になった話題としては、WB(ウェスタンブロット)に代わる新しい確認検査試薬「Geenius HIV-1/2」について。検査のフローチャートがおそらく変わります。また、same day ART initiation、すなわち陽性診断当日からARTを開始するという試みが、世界的な流れになりつつあるなど、様々な動きが見えてきました。

今回の学会では、HIVを封じ込めるための目標、ケアカスケード(90/90/90)を達成するために、各段階で新たな対策が講じられてきていることが実感できました。令和の始まりと共に、まさに新たなる出発です。

「第33回日本エイズ学会学術集会・総会」の概要とスタッフ発表一覧

アクティビティー へ