アクティビティー

第34回日本エイズ学会学術集会・総会参加感想

第34回日本エイズ学会学術集会・総会が、2020年11月27日(金)~12月25日(金)(ライブ配信は11月27日~11月29日)にオンラインで開催され、ぷれいす東京のスタッフや研究班のメンバーも複数参加しました。

学会Webサイトによると、学術集会・総会のvirtual視聴サイトは約1,300名、開催期間中の視聴ログ数は約45,000回だったそうです。また、「一般演題203(口頭:111、ポスター:82、アンコール:10)に加え、プレナリーレクチャー2題、特別講演3題、エイズ学会シンポジウム、日本性感染症学会との合同シンポジウム、シンポジウム・ワークショップ30題、認定講習会2題、教育講演28題、メモリアルサービス、共催シンポジウム7題、共催セミナー12題など、現地開催では実施が難しいと思われる数の企画を実施することが出来」たそうです。

以下は学会に参加したスタッフの感想です。

参加者感想文

【第34回日本エイズ学会に参加して】 牧原
     
今年の日本エイズ学会はCOIVD-19の影響を受け、初のバーチャルでの開催でした。ここ数年、相談業務の都合で東京以外の学会には参加しにくい状況だったのですが、今回はいつも以上に色々な発表を聞ける機会が持てたように思います。個人的に残っているワードは、長期療養/治療、エイジング、リテラシー、薬害エイズ、U=U、COVID-19といったものでした。特に印象深かったのは、血友病の薬害の方々の話でした。

薬のない時代から、長く生きるようになった方々の難しさ、遺族の方のケアなど、これまで聞くことがなかった貴重な話を聞ける機会がありました。メモリアルキルトもバーチャルでじっくりとみることもできました。また、障害者手帳の取得を対策で盛り込んだ際の思いとして、感染経路によらない恒久対策で医療を継続的に受けられるようにすること、手帳の取得によりHIVのイメージの変更、排除された存在から福祉を受ける存在に変わることを目的とした、という話を聞きました。これから手帳を取得する人々にも伝えていくべき話だと感じ、またこの制度を大事にしていかなければならないと改めて思いました。温故知新ではないですが、過去を振り返り、その経験を今後に生かしていくことを、COVID-19により社会が大きく影響を受けている今だからこそ、改めて必要だと感じさせられた学会でした。

【繰り返される攻防】 ふくピー(ぷれいす相談員)

「新しい時代」という言葉には、少なからず明るい未来を予見させる印象があるように思います。ところが今、まさにこの時、新型コロナウイルスの登場を機に人々の生活は一変し、どんな未来になるのか想像もつかない状況におかれています。第34回日本エイズ学会学術集会も初のWeb開催となり、ライブ配信プログラムを11月27日(金)~29日(日)の3日間、視聴することができました。またオンデマンド配信では、好きな時間に好きなだけ情報に触れることができて、新鮮な驚きでした。

恒例の「治療のガイドライン」のシンポジウムでは、治療開始基準に変更はなく、新たに日本で承認された2剤治療薬のDTG/3TC合剤と、新規インテグラーゼ阻害剤DORにつき追記されたこと、初回治療の組み合わせからTDF関連の合剤が削除されたことが紹介されました。また、その後の講演ではCOVID-19とHIVの関連につき、診断や治療の面から解説がなされました。保健所でのHIV検査数の減少や、コロナ肺炎ニューモシスチス肺炎の鑑別困難例の影響等で、ここ数年いわゆる「いきなりエイズ」が増えるのではないかと危惧する声が聞かれました。新型コロナのワクチンや治療薬開発の根底には、HIVで培われた知識と経験が生かされていることも語られました。

その他「進化を続ける抗HIV薬」という学術集会テーマのもと、治療薬の変遷をたどり、新薬の展望に触れるセッションが充実していました。ウイルス制御という面では現行薬剤で十分効果は得られており、いかに耐性を作らずに長く効くか、予防にも応用できるか、リザーバーを作る前に働くかなど、それこそ次の段階の研究が展開されていました。

また、現段階でのキードラックの主流であるインテグラーゼ阻害薬や、バックボーンのTAFにおける体重増加や腎機能への影響についても、複数のセッションで取り上げられていました。エイジングや生活習慣病との関連や、肝炎ウイルスの高い重複感染率なども含め、長期化する療養上の問題点についても多数触れられていました。

この文章を読む時に、医療の現場が、そして我々の日常がどのようになっているのか予想もつきませんが、HIVと関わってきた矜持を胸に、新たな時代を突き進んでいられたらと思います。まずは皆様に感謝申し上げます。

【実り多い一方なにか物足りない】 桜井啓介

様々な学会がオンラインでの開催となり、やはりエイズ学会もか・・と思いつつも、交通費や宿泊費がかからないし移動時間も不要だし、本業を休みにくい陽性者の人にも参加しやすいのでは?とも感じていたエイズ学会。例年では考えられないことに有給は半日程度で見たいプログラムをあらかた見ることができ、実り多い学会になったことは間違いないのですが、一方で微妙に物足りない。終わったばかりの演題発表についてプログラムの合間に知り合いと意見交換、というのはこれまでの学会ではごく当たり前にしてきましたが、あれは大事な時間だったんだな、と再認識しました。さらに良く考えたら、プログラムの裏で知り合いと別窓でつないで感想とかシェアすれば良かったのですよね。なんで学会前に思いつかなかったのか・・・。

そんな学びと反省がありつつも、次のオンライン学会に活かしたい気持ちは半分くらいで、やっぱり集まってガヤガヤしたい気持ちが残り半分あります。いずれにせよ、充実した学会にするための準備をしっかりしようと思っています。

「第34回日本エイズ学会学術集会・総会」スタッフ出演情報

アクティビティー へ