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第35回日本エイズ学会学術集会・総会参加感想

第35回日本エイズ学会学術集会・総会が、2021年21日(日)~11月23日(火・祝)(オンデマンド配信 2021年11月21日(日)~12月20日(月))に、俣野哲朗会長(国立感染症研究所エイズ研究センター長、東京大学医科学研究所委嘱教授)のもとで開催されました。今年はグランドプリンスホテル高輪(東京)での現地開催+WEBを使ったハイブリッド形式でした。ぷれいす東京のスタッフや研究班のメンバーの発表なども複数ありました。

ポジティブトークでスピーチをした方、学会に参加した方から感想文をいただいたので、ご覧ください。

参加者感想文

【エイズ学会での貴重な経験】ようこ(HIV陽性者、30代女性)

2020年結婚、2021年9月に出産と人生に変化がある中、エイズ学会でのポジティブトークで発表してほしいとのお話をいただきました。大人数の前で自分の病気について話すことは初めてだったので、正直不安ではありましたが受けさせていただきました。

原稿を書きながら、自身の体験を改めて振り返り、辛かったことたくさんあったなーと思いながらも、当時、そんな私に力をくださった方々の一つ一つの言葉が思い出され、感謝の思いでいっぱいになりました。「よしっ、当日はこの感謝の思いを伝えるとともに、当時の私と同じように病気について悩んでいる方々に今度は私が力を届けよう!」との思いで当日を迎えました。

当日は、主人と娘と3人で参加させていただきました。発表順がトリということを聞き、さらに緊張が高まりながらも、登壇し始めた時は不思議と平常心でした。(案の定かみましたが笑)最後に9月に元気に産まれてきてくれた娘も紹介させていただくことができました。登壇後、看護師をされている方から「私の方が力をもらえました」とお声がけをいただき、とてもうれしかったです。本当に貴重な機会をいただき、ありがとうございました。

【「もののついで」のコミュニケーション】大北全俊(東北大学大学院医学系研究科・医療倫理学分野)

今回の学会で印象的なことはと考えると、もちろんいろいろありますが、久しぶりに対面で行われた、ということがその一つかなと思います。シンポジウムの座長もさせていただき、例年よりは限られた人数の参加者だったとはいえ、会場で参加者交えて実施するとその場への集中力はオンラインとは違うものがあるように思いました(ただ自分が古い人間だというだけかもしれませんが)。

それと、「もののついで」のコミュニケーションがとれる、というのは対面ならではと思いました。オンラインだと、たとえば、シンポジウムについてだけのコミュニケーションになりがちですが、対面だと終わった後や、たまたますれ違った時に関連したことについて自然にコミュニケーションがとれる。すごく重要なことだけど、まだ課題が明確ではないようなものごとは、どうしてもわざわざ場を設定するのが難しい。まだまだ課題の多いHIV感染症、コミュニケーションの場として学会は重要なのだなと改めて(今さら?)思いました。

【Beyond Undetectable】ふくピー(ぷれいす東京相談員)

新型コロナの影響で、第35回日本エイズ学会学術集会は初のハイブリッド形式となり、現地開催とライブ配信が同時に行われました。その後のオンデマンド配信で、この原稿を提出した後にも、興味のわく話が聞けているかもしれません。

基礎系の会長が掲げたテーマは「未来統合型社会・臨床・基礎連携」ということで、この3分野の演者が集う連携シンポジウムが複数企画されていました。昨年に引き続き、COVID-19に関連したセッションも、各分野で組まれていました。

恒例の「治療のガイドライン」のシンポでは、What’s newとして「HIV感染症治療の原則は2剤あるいは3剤以上のART(抗HIV療法)で開始」と明記され、初回推奨薬に2剤薬(DTG/3TC)が入ってきました。

引き続く講演では、強力な第二世代のインテグラーゼ阻害剤により、完成に近づいた感のあるARTによる長期療養の次の一手として、長時間作用型ARTの注射薬(月1回筋注)や経口薬の開発について、最新の知見が語られました。次いで、MSM(Men who have Sex with Men)に対するPrEP(暴露前予防投薬)の実証研究を行うSH(Sexual health)外来の実績や、関連する性感染症の報告がありました。個人輸入による自己判断のPrEPも増えており、日本での供給体制の確立が急がれます。肛門のクラミジアや、ヒトパピロマウイルスによる肛門癌のスクリーニングなども、今後の課題とのことでした。

優れたARTで生命予後は非感染者に近づき、慢性疾患として長期療養が続くなか、心血管系や腎、肝、脂質や糖、認知やメンタルなどの併存疾患の割合は高く、健康寿命の差は縮まっていないとの発言も何度か聞かれました。ウイルスが制御できても続く慢性炎症や、根治を阻むリザーバー(潜伏感染細胞)の存在など、Beyond Undetectableの未来へ向けて、さらなる解明が待たれます。基礎医学から臨床、社会への連携というテーマは、まさに時流に合ったものでした。

【ようやくちょっと対面解禁、来年は浜松で!】金子典代(名古屋市立大学看護学研究科 国際保健看護学)

 今年のエイズ学会は関係者の尽力のおかげでハイブリッド開催となり、ずーっと PCの画面越しでしか会っていなかった仲間と久しぶりに対面で会うことができました。対面かオンラインか、感染状況を見ながら調整を図ってこられた実行委員の先生方に感謝申し上げます。

「同性パートナーとの暮らしを大切にしたいHIV陽性者の支援を考える」をテーマとして扱ったシンポジウムがあり、パートナーシップ制度などをとりあげてくださっていたのもよかったです。陽性者が高齢化していく今後、とても大事なテーマになると思います。

コミュニティで陽性者支援、予防啓発にかかわっている人たちが参加し、顔を合わせてエンパワーしたり、ディスカッションができるのもエイズ学会の良さなのですが、今のコロナの状況ではまだ全国のみなさんの参加は難しく、ほんの一部の方としか会えなかったのが残念です。

2022年エイズ学会は浜松で開催されますが、なんとこの私が若輩者にもかかわらず、社会系プログラム委員長という大役をさせていただくことになりました。会場は浜松駅すぐそばという好立地、うなぎも美味しいですし、魅力満載な街での開催です。次回こそは会場でより多くの皆さんと合えることを願いましょう。

「第35回日本エイズ学会学術集会・総会」スタッフ出演情報

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