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第36回日本エイズ学会学術集会・総会参加感想・報告

第36回日本エイズ学会学術集会・総会(大会長 杉浦 亙 国立国際医療研究センター 臨床研究センター長)が、2022年11月18日(金)~11月20日(日)に開催されました。昨年と同様、アクトシティ浜松(静岡県浜松市)での現地開催+WEBを使ったハイブリッド形式でした。ぷれいす東京のスタッフや研究班のメンバーの発表などもありました。また、研究班のサテライト企画として、11月20日(日)に「恋愛やセックス〜性の健康とーく in 浜松」が開催されました。

学会でスピーチをした方、学会に参加した方から感想文と「恋愛やセックス〜性の健康とーく in 浜松」の報告を掲載したので、ご覧ください。

参加者感想文

「やさしさに包まれて」Kazuya

「自分でいいの?難しい話なんてできない。」エイズ学会への登壇のお話をいただいた時にそう思った。

関係者みなさんから助けていただきながら準備を進め、当日心臓をバクバクさせながら舞台へ上がった。自分が話し始めると離席していく人たちの姿が見えた。一瞬「やっぱり自分の話なんて…」って思いがよぎった。それでも準備したパワーポイントを眺め、原稿を読み上げた。

無事に自分たちの回を終え、関係者全員で集まると、「よかった〜。エイズ学会でこんなに泣くと思わなかったよ。」とコメントをいただいた。そして、驚いたことに、会場を見回っていた方から、会場のあちこちで自分がスピーチをする間泣いていた方が複数いたと。

こんな事ってあるの?
自分が経験してきたことを話しただけで、こんなにリアクションしてくれる人が世界にはいるの?
無駄じゃなかった。すべてはこの日のために経験してきたかの様に感じた。
世界はこんなにあたたかいんだ、そう思った。
最幸のギフトをありがとう。
自分って本当に幸せ者だ。
ありがとう。

2013年12月HIV陽性発覚、2014年服薬開始。
2019年1月にぷれいす東京に出会い、2020年秋にボランティア研修に参加。

「ライフスタイルを変える!?」ふくぴー(ぷれいす相談員

第36回日本エイズ学会学術集会が、静岡県浜松市でハイブリッド開催されました。
恒例の「治療の手引き」シンポでは、日本でも使用可能となった持効性薬剤カボテグラビル(CAB)とリルピビリン(RPV)2剤の注射薬についての情報提供がありました。日本も含めた大規模な治験の成果が報告され、現行の内服薬と効果に遜色なく、満足度も高いとのこと。我が国では、既に他剤でウイルスのコントロールがついたケースに、1か月間注射薬と同じ内服薬を試した後、1または2か月に一回、お尻に筋肉注射することになります。
服薬アドヒアランスを目的とするだけではなく、陽性者のライフスタイルを変える為のものととらえるべきとの提言に、膝を叩きました。お子さんなど同居家族に内服薬の存在を知られたくない、国内外の出張が多く薬の持ち運びに気を使う、服薬のたびにHIVを意識してつらい等々、1日1回1錠になったが故に見落とされがちな、治療継続の負担感を改めて知ることができました。
誰でも使える訳ではなく、治療失敗もわずかに有り得るとのことで、詳しくは専門医にご確認ください。

「二か月に一度お尻にプチッ。劇的に改善されたこと、変わらないこと。」さとし

エイズ学会には患者の立場で8年ほど前から参加、今年は2年ぶりのリアル開催でした。
丁度全国旅行支援の時期と重なったのでもちろんそれを使ってほぼ旅行気分。
今回の学会で印象に残った議論は3つ。
1つ目は個人的に注目していた2か月に1度の注射だけで毎日の服薬が不要になる治療薬の話、2つ目はHIV感染者に対する受診拒否問題の話、3つ目はU=U、PrEPと感染症予防啓発の相反する課題の議論でした。
1つ目の注射薬の話は2か月に1度お尻にプチッと注射するだけで毎日の服薬が不要になるという治療薬のお話。
課題はまだあるけど今後主流になっていく感じがしました。
HIV診療に関わっている医療者、製薬メーカーの方々の日々の努力に驚きと感謝の念でいっぱいです。
2つ目と3つ目の議論は人の感じ方・考え方の問題なので解決というより理解と合意をどうやって進めていくのか、まだまだ長い時間がかかりそうだということを感じたのでした。

「広げないもの・広げたいもの」二宮

私は普段HIVの相談ボランティアに携わっています。私にとってエイズ学会は、参加者の立場を超えて「みんなが仲間」という感じがあり、そんな仲間との交流を楽しみに参加しています。今回も社会系プログラムで普段会えない遠方の方々とも交流を広げられました。
ただ個人的に気がかりなのは、この「仲間意識」の範囲が限定的になってしまいがちで、社会全体にはなかなか広がらず、「社会系」という言葉がしっくりこないなと感じる瞬間があることです。この違和感を思うとき、あるボランティア仲間のことを思い出します。その人は人望がありながら、自分の自由や力を発揮できない状況にいます。一見すると、その人自身の行動が原因のようですが、その人が行動に至った背景を思うと、他人事とは思えず悲しくなります。それは個人の問題だけでなく、仲間意識(自分事とすること)が社会に広がっていかない違和感も影響していると思います。私自身の活動でも、社会の無理解が要らぬ心配や不安につながっていると感じることが多々あります。上記の仲間もその違和感に孤軍奮闘していたと思うし、もし違和感がなかったら、いまの状況に置かれる必要もなかったのではないかと、私は本気で思っています。どんな人でも一人で対処できないことや窮地に立たされることがあると思います。だから私はHIVに関わる仲間や味方を社会全体でもっと広げて、違和感を無くす必要性を改めて感じました。
また私は会期中に、ある社会福祉法人を訪ねました。そこは戦前からの結核療養施設で、周囲の無理解で苦労したものの、天皇陛下からの下賜が一つの転機点となり発展したそうです。HIVでも同じような理解の広がりにつながる転換点があればと思っています。
学会にはこうした体験も含めた価値があると思います。苦しみや悲しみ・間違った情報等をこれ以上広げないために、正確な情報や楽しさ、喜びをもっと広めて共有し合い、社会全体で仲間意識を高められるように目指していきたいと考えています。

「第36回日本AIDS学会学術集会に参加して思うこと」むらさき(ボランティアスタッフ)

AIDS学会学術集会に参加することは、私にとっては会いたい親戚の集まりに行くような気持ちがある。もちろん、ぷれいす東京のボランティアとして、本職のソーシャルワーカーとしても、最新のHIV/AIDSの領域の知識、情報をアップデートする学びの場としての大きな意味もあるのだが、それ以上に全国から集う仲間に会いたい気持ちが勝る。

今回の浜松でじんわりと感じたことを、少しここに残しておきたいと思う。

当事者参加のスカラシップ制度が無くなり、コロナ禍でハイブリットになりと、当事者参加型の学術集会の様相は徐々に変化してきた。多分、治療の進化で、疾患に対する個々の分野での課題の「熱量」も変化した結果だとも思う。シンポジウムの内容も、長期的展望の言葉が並び、参加者にも昔のような熱気を帯びた空気感を感じることはなかった。

ただ、当事者の【語り】は、圧倒的な力を持っていたと思う。シンポジウムなどで登壇していた当事者たちの語りを紹介したいと何度か書き直したが、ここに書ききれる語彙力が私にはなかった。それほどに豊かな語りであった。あなたたちの「生きざま」は、尊く、誰にも侵されてはいけないものだ。セクシャリティの開示、コンプライアンス、ACPなどという医療者側の言葉にまとめ上げられるような「生」ではないことを見せつけてくれたように思う。

疾患が一般化しつつある今、当事者と医療者側の距離が出来始めていると思う。合流し、また小川に分かれるような水の流れのような感じだろうか。本当にそれが目指すところだったのかな、とも思う。

まぁ、何言ってんだかコイツ、と思われる方はぜひ、学術集会に参加してみて下さい。この学術集会は、やっぱり「当事者参加型」であるべき、大きな意味をもつ場所であることは間違いない。

ぶつぶつ言いながらも、私はまた会いたい親戚の集まりに出掛けるでしょう。そして時に昼間の会場で、時に夜の会場外で、色んなひとと色んなことを語り、この社会で私に何ができるのかを考え、そして行動するエネルギーを仲間から与えてもらうことでしょう。

そんなこんな、日本AIDS学会学術集会の今昔を振り返りつつ、浜松でお土産にした【トリイソースみかんポン酢】が好きすぎて、追加でネット注文した2022年の年末でした。

「ハイブリッド時代の日本エイズ学会」加藤力也(ぷれいす東京スタッフ)

2017年以来5年振りに会場での学会参加となりました。
コロナ禍の中、前年はオンラインでの演題発表を行いましたが、今回はハイブリッド開催。一般演題については事前に収録したデータでの発表になりました。
私にとって学会は情報を得る場であると共に、全国で活動している仲間との再会の場でもあります。普段東京で活動している私達には、地方のことを知る機会ともなる学会の場は貴重です。新旧の友人・知人との交流の時間は、他には替え難いものでした。
今回演題発表の他にもいくつかの役割がありました。一つはシンポジウムへの出演、そして学会関連のラジオ番組の出演、さらにはポジティブ・トークへの出演です。
シンポジウムでは陽性者と医療者とのコミュニケーションをテーマに話しましたが、一緒に登壇した今回がスピーカーデビューとなる方のお話が感動的で、つい親のような目線で見てしまいました。
ラジオ番組では限られた時間の中でどこまで話せるかという不安の中、MCの方の手際の良い進行で上手くまとまりました。
そしてポジティブ・トークでは、ここ最近この世を去ってしまったみなさんへの思いを話しました。単なる思い出話ではなく、受け継いだバトンを今度はどう渡すかということを考える時間となりました。
オンラインで繋がることが日常になった今、リアルで語り合うからこそ得られるものの価値を改めて感じています。この先の学会は、オンラインの利便性だけに捉われるのではなく、対面でしか得られないメリットを活かせるものになることを望みます。

「恋愛やセックス〜性の健康とーく in 浜松」報告

エイズ学会が開催された浜松で、地元のゲイバー、NGOなどに情報発信をお手伝いいただき、PrEP、梅毒、セックスライフなどをテーマにしたイベントを開催しました。前半はパーソナルヘルスクリニックの塩尻大輔医師にPrEPについて語っていただきました。後半は、地元静岡から加藤アゴミサイル(ドラァグクイーン)、りっくん(イベントスタッフ)、名古屋から、とまっちょ(司会/riseスタッフ)の楽しいトークを会場から配信しました。

■日時:11月20日(日)14:00~
■アーカイブ動画
前半:

後半:

■出演者
加藤アゴミサイル(ドラァグクイーン)
りっくん(イベントスタッフ)
とまっちょ(司会/riseスタッフ)
■講師
塩尻大輔(医師 / パーソナルヘルスクリニック上野 )
司会:生島 嗣(PrEP in JAPAN /ぷれいす東京)

■広報協力:コミュニティセンターrise、魅惑的倶楽部、new TOKYO
■共 催
令和 2~4年度厚生労働科学研究費補助金(エイズ対策政策研究事業)
HIV 感染症の曝露前及び曝露後の予防投薬の提供体制の整備に資する研究 研究分担者 生島 嗣(ぷれいす東京)

令和 2~4年度厚生労働科学研究費補助金(エイズ対策政策研究事業)
MSMに対する有効なHIV検査提供とハイリスク層への介入に関する研究 研究分担者 金子 典代(名古屋市立大学)

「第36回日本エイズ学会学術集会・総会」スタッフ出演情報

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