アクティビティー

「地域における当事者支援のためのスタディ・プログラム」開催

ネスト・プログラムは、ミーティングの安全を確保するために、参加者には、1)プライバシーの守秘を含むグラウンドルールの承諾と利用登録、2)個々のミーティングの参加条件に合致するかどうかの事前確認を行っています。さらに、運営上も、個人情報の管理の徹底や、ミーティング会場に入れるスタッフを限定するなど様々な制約を設けています。そのため、これまで第三者のミーティング見学希望があってもお断りしてきました。しかし、東京以外の地域でHIV陽性者むけプログラムを実践している人たちを支援する必要性が高まっていることを受け、ミーティング見学を含めた研修プログラムを開催することにしました。
このプログラムの目的は、ぷれいす東京がこの20年にわたり積み上げてきたプログラム運営のノウハウを共有し、各地のHIV陽性者や周囲の人たちへの支援の実践に役立ててもらうことです。そのため、プログラムは、講義とミーティング見学を組み合わせた構成としました。
今回は、いくつかのエイズ診療ブロック拠点病院と連携して参加者の募集を行ない、新潟からソーシャルワーカーが、鹿児島からは支援団体のメンバー2人が参加してくれました。
今回の研修を開催するにあたり、数ヶ月前からミーティング参加者たちに、プログラムの趣旨を説明してきました。「東京ではミーティングがあるが、地方では十分でないこと」、「地域でのあらたな取り組みを支援することが、各地のHIV陽性者や周囲の人たちの支援になること」など。
当日、大雪にもかかわらず、ミドル・ミーティング(40代以上の男性陽性者)は14人が参加し、U40(10〜30代男性陽性者)にも4人が参加しました。見学者の3人には、
ついたての後ろから様子を聞いていただき、最後には見学をした感想を自己紹介を交えて話してもらいました。
プログラム立ち上げや運営に関わる各地域の人たちを支援するこの研修会は、今後も継続していく予定です。ネスト・プログラムは東京という環境のなかで実践されているものですが、各地の取り組みにも役立つことがあるはずです。(報告:生島)

プログラム内容

1日目 2014年2月8日(土)
11:00-11:45 ネスト・プログラム利用登録制度の説明と守
秘承諾(HIV陽性としての参加者は利用登録)
11:45-12:30 昼食
12:30-15:30 ミーティング見学/参加(1)[ミドル・ミーティング]
16:00-16:30 質疑応答
17:00-19:30 ミーティング見学/参加(2)[U40ミーティング]
20:00-21:00 振り返り、質疑応答
21:00-22:30 意見交換&懇親会(会費制)
2日目 2014年2月9日(日)
10:00-11:00 講義「相談事業とグループ・プログラム、ケ
アサービスの連携」生島嗣
11:00-12:00 講義「陽性とわかって6ヶ月以内の人への支援
プログラムPGM」加藤力也
12:00-13:00 昼食
13:00-14:00 講義「ネスト・プログラムの紹介と、人材育
成について」佐藤郁夫
14:00-15:00 講義「バディ派遣による在宅支援プログラム」牧原信也
15:00-16:00 意見交換 生島嗣ほか

研修プログラム参加者より

「雪ニモマケズ…」 H・K(30 代男性/新潟県/MSW)
現在ピアミーティングを新潟でも開催できないかと検討しています。ですがこれまで実際の様子を見たことが
なく、またどのような運営をされているのか知りたいこともあり、今回の研修に参加いたしました。
初日はまずオリエンテーション受講。プライバシーを気にされる参加希望者にとっては、登録制やグランド
ルールの存在が不安の軽減につながると思いました。ただ、東京と違い地方では事前の説明や登録が難しい場合があり、参加しやすさとプライバシー保護のバランスをどう取るか考える必要がありそうです。
その後ミドルとU40の二つのミーティングを見学(むしろ聴学?)し、病院ではなかなか聞けない生の声を聞け
ました。まさかの大雪にも関らず、どちらも予定通り開催できたのは各ミーティングが「必要なもの」として受け入れられているからではと思います。
翌日は様々なプログラムや人材育成等について講義を受けました。現在ぷれいす東京では相談事業やピアミーティング、バディ派遣等様々な取り組みがあり、その成り立ちや現状・課題について学びました。人材育成も行いつつニーズに応じ支援方法を形作っていくことで、現在のような支援の広がりが生まれているのだと思います。
2日間ぎゅっと中身の詰まった研修でした。ミーティングを聴学? させて頂いた皆さんや研修企画いただいたぷれいす東京の皆さん有難うございました。今後の活動に生かしていきます。

「仲間との出会い」 Rinかごしま ユタカ(50 代/男)
私自身陽性者であり、陽性者支援活動の両面から参加させてもらいました。現在「Rin かごしま」で陽性者の支援活動、啓発活動を行っておりますが、陽性者、支援者の立場を改めて理解することと、活動の難しさを感じました。
ミドルとU40の陽性者ミーティングに参加しましたが、とても落ち着ける場所でした。同じ陽性者仲間であること、そしてセクシュアリティを隠すこともなく前向きな話、また現在抱えている心配事や不安、情報の交換など。陽性者同士であると言う前提が安心して話せる場となるのでしょう。ミドルとU40の悩み、抱える問題の違いは有りましたが、HIV/AIDS を受け止め、今後どのように付き合っていくのかはみな同じ。確かに答えは出ないかもしれないし、一人ひとり抱える問題は違うのかもしれません、ただ安心できる場所であることには違いない、やはりピアミーティングの必要性と重要性を感じました。それとファシリテーターによるスムーズな進行、とても重要な役割であり、ピアだからこそみな安心して集えるのだと感じました。
地方と東京では、支援活動やグループミーティングなど、出来る事の違いはありますが、いずれにしても陽性者支援には変わらない、地方で出来る陽性者支援の在り方を考え、新たな活動をして行きたいと思います。またこのような機会や研修があれば、是非参加してみたいです。今後ともよろしくおねがいします!

「当事者・関係者が語り合える場が求められている」NPO Rinかごしま 里山太郎(男/67 歳)
他の病気が原因で東京で入院した亡息子が、その検査の過程でHIV の陽性者であることを知らされた私たちは、当時無知なことが多く、家族関係にもひびがはいったりして、様々な思いを誰にも語れない辛さを感じ、悶々としていたものでした。
それでも、息子は、東京では「ぷれいす東京」と少しは繋がりをもてていたのですが、鹿児島で療養生活を送るようになってからは、それができなくなり孤独感を感じていたはずです。それは、私たち両親も同じでHIV のことで心を割って話ができる人がいませんでした。それらのことが、鹿児島にも陽性者支援のNPO を作ろうという呼びかけに賛同することに繋がっていきました。今回の研修会の感想は、そんな私自身の体験と密接不可分のもののような気がします。
まず、初日の2 つのミーティングを傍聴させてもらった感想です。参加者から、主治医との関係、性感染・SEX への対応、喫煙問題等、多様な今感じていることが次々と出されていたにもかかわらず、話が散漫になるということもなく進行していたと感じました。それは、翌日の講義でスタッフから話されていたミーティング等での「司会・進行」の役割の検討・研究の積み重ねが大きな要因だとわかりましたが、そして、とりわけ「結論を押し付けない」「一つの問題について、多様な経験を交流しあう」ことを前提に運営されていることに共感を覚えました。私自身の経験からも、解決策を知りたいということよりも、悩み・不安を出せる場が欲しいということが当事者・関係者の最大の願いであると思いますし、それが、鹿児島にもNPO を作ろうというエネルギーだったような気がするからです。
ただ、うらやましい? と、思ったのは、翌日の講義でも紹介された多くのネスト・プログラムのように多様な
当事者たちのニーズに即した内容が準備されていることです。「鹿児島では、まねできないので、どこからスタートすればよいのか」重い宿題もいただきました。膨大な講義資料も、単なるマニュアル資料ではなく、経験の中で積み上げられたものであることがよく伝わってきます。次回は、ぜひ予算づくりの苦労なども学ばせてもらいたいのですが、いかがでしょうか。
舌足らずの感想で申し訳ありませんが、本当にありがとうございました。

ぷれいす東京NEWSLETTER No.81(2014年5月号)より

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