アクティビティー

「NPO法人ぷれいす東京 2017年度活動報告会」報告

活動報告会スタッフ&サポーター集合写真

5月27日(日)に活動報告会が開催されました。ご来場いただいた皆様、本当にありがとうございました。参加者は64人でした。写真は恒例になっている、終了後に撮影した、ぷれいす東京スタッフ、サポーター、連携先の皆様による集合写真です。

報告会では、2017年度の活動について、電話相談、セクシュアル・ヘルス・プロジェクト、ゲイ・グループ、ネスト・プログラム、バディ活動、陽性者向けの相談、研究など、各部門のスタッフから報告させていただいた。

その後のトークコーナーでは、NPO法人OVAの伊藤さんをお迎えし、web、SNS空間で、「死にたい」「助けて」と書き込む若者たちへのアウトリーチについて、お話を伺いました。Google社だけで、月に13~23万件も「死にたい」という検索があるのだそうだ。

OVAの伊藤さん

10代〜20代の若者は1日に平均3時間もスマートフォンを使っているそうだ。電話よりもテキストによるやりとりが、ふだんのコミュニケーションズ手段として浸透しているのだという。

そんな若者たちは、何らかの困難さが重なることで、行き詰まったときに、「助けて」と「言わない/言えない」層が存在する。「より支援が必要な人にこそ支援が届いていない現象」が起こっているのではないか?OVAではこの現象を「声なき声問題」と名付けたそうだ。

支援サービスの利用は、アクセスのしやすさという 物理的な要因もあるが、心理的にネガティブなスティグマの存在がある。さらに、意外にサービスに関する情報が届いていなかったり、若者たちのニーズにマッチしていないことがあるそうだ。

伊藤さんたちは、チャット、リスティング広告などの手法を使いつつ、より強いつながりのコミュニケーションによる対話に導いていくのだという。

これまでの支援論では、対面でのコミュニケーションでないと支援はすべきではないという意見も根強い。しかし、webという地域を特定しながら、ターゲットに合わせたキーワードでのweb広告の出稿により、満たされていないニーズ(課題)にアクセスができるのだから、こうした手法も織り交ぜて行くことで、対費用効果は高まるという。

今日は、伊藤さんの話を聞き、色々と刺激を受けた。OVAの皆様とは、今後もご近所のNPO同士として、交流を続けていけたらと思う。(報告:生島)

会場風景

参加者感想文

「時代が変わると実感」石川雅子(千葉県・千葉市・船橋市HIV専門相談員・臨床心理士)

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 更生医療が始まるか始まらないかの頃からHIV専門相談員をしています。昔からぷれいす東京の活動を私淑していますが活動報告会に参加するのは何年かぶりです。HPやニュースレターは拝見していても、活動していらっしゃる方から直にお話を伺うと、「ことだま」まで伝わってくる気がしましたね。

それだけにトークコーナーのOVAの伊藤さんのお話は刺激的でした。専門家の端くれとして、匿名の相手と、文字だけでやりとりするなんて恐ろしくてできない、というのが第一印象でしたが、「(SNSに死にたいと書き込む)彼らにリーチしたいなら、彼らの文化・コミュニケーション手法に合わせていかなければならない」のお言葉には説得力がありました。確かに支援とは本来そういうもののはずよね、「障壁」を越える努力をしなくては、と思いました。

もう一つ、刺激的だったのは「U=U 」のポスターの実物を見せていただけたこと、やはり感慨ひとしおです。HPにあったPDFはカウンセリングの場面で皆さんにご紹介しています。「とうとうこんな時代が来たんですね」と涙を浮かべておられた方、嬉しそうに握手を求めてこられた方、「本当ですか?」と目を丸くされた方など反応はさまざまでした。これからはあちこちでU=Uを広めていきます。時代が変わるんだ、のメッセージを伝えていくことが私に今できる「障壁」への挑戦だと思っています。

「声なき声も拾っていく。」内海 夏樹(会社員)

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LGBTの当事者(バイセクシャル)としてHIV(AIDS)は身近な問題であり、またレインボープライドで訪れたブースで活動内容に興味を抱いたため、今回の報告会に参加しました。

今回はぷれいす東京の方々のお話だけでなく、NPO法人OVAの方のお話も伺うことができ、一度に2団体の考えを知ることができる貴重な機会となったのですが、どちらにも共通していたことが「声なき声も拾っていく」活動を行なっているという点でした。

例えば、ぷれいす東京ではHIV陽性者や周囲の方々へのサポートだけでなく、確認検査待ちといった「すぐに人には相談しづらい状況の方」に対するケアも行なっていること、またOVAでは、現実で思いを吐き出しづらく「死にたい」と検索する方に向けた検索連動型広告を出し、彼らの思いを拾い上げる活動といった「存在を可視化しづらい人々」へのサポートを行なっていることにとても感銘を受けました。

援助対象者がそれらのサポートを受けるかどうか、またすぐに信用してくれるかはともかく、誰かを頼れない状況にある中で、助けを求めている人が、自分も「援助の対象」に入っていると理解してくれるだけでも非常に意義があるのではと2団体のお話を伺い、そう思っています。

「感謝!感激!」 小嶋道子(都立駒込病院ソーシャルワーカー)

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いつも相談に乗っていただき、たくさん助けていただいているぷれいす東京の皆さんの活動報告会。改めて感謝!感激!でした。

私は病院のソーシャルワーカーなので、病気がわかった直後でとても動揺されている時期の陽性者の方々と多く出会います。セクシャリティーのことも病気のことも誰にも相談できないという方も多いです。それから長期にわたる治療を一人だけで頑張って乗り越えられてきた方にも出会います。そんな方々がぷれいす東京に繋がって、元気になっていって、日常を取り戻していく姿を見るたびに、私も元気をもらっています。

今回改めて実感したことは、様々なプログラムが、今のニーズをいち早くキャッチしていて、きめ細やかでバラエティーに富んでいるということです。感激です。そしてそれに関わる方々の充実した表情も印象的でした。

そしてOVAの伊藤さんのお話。大変刺激を受けました。既存の支援の形では届かないところにどうやって関わり、支援を形にしていくことはまさにソーシャルワーカーの本質。伊藤さんの情熱と使命感に刺激と勇気をもらいました。ありがとうございました!

「深くて広い場所。」 Sho Akita

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ぷれいす東京の皆さんが重要な位置で活躍されたTokyo AIDS Weeks 2017で、私は映像上映の部門に参加。イベントに皆さんと一緒に携わることができて楽しかったのですが、今回の報告会をお聞きするまで、こんなにも多岐にわたる支援や活動をされていたとは知らずとても驚きました。話を聞けば聞くほど、昨年1度だけ伺った高田馬場の事務所の謙虚なサイズと活動が頭のなかでうまくかみ合わないほど。

報告者(ホットラインのボランティアスタッフ)は、ほそい活動が許されるから長い活動に繋がっているというようなことを仰っていて、そのときにあがった会場の笑い声からは活動をサポートする人々の優しさのようなものを感じました。皆さんざっと活動と見えてきた課題を説明していましたが、いただいた年間活動報告書には、イベントなどの参加者の声があり、そこからはこれらの活動がいかに大きな意味を持っているかが伝わりました。

ゲストの伊藤次郎さんが言及され、私も強い関心をもつ「スティグマ」のある社会で生きるなか、種類の豊富な支援や話ができる場所の存在は人生レベルで影響を与えるもの。できることと時間を持ちより、それが深くて広いものを生んでいる。そんなことを感じました。

「貧困や住まいの課題に取り組む立場から」金井 聡(ソーシャルワーカー)

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私は、LGBTの貧困や住まい(ハウジングファースト)について考える活動に、生島さんたちと一緒にかかわっています。HIVや依存症をめぐる支援の現状について知りたいと思い、今回、初めて報告会に参加しました。

印象的だったのは、ぷれいす東京が、相談支援を柱にしつつ、ミーティングや交流会、啓発イベント、医療や教育機関との共同研究、研修など、多岐にわたる活動をしており、その多くをピアスタッフが中心に担っていることでした。とくに、ネストプログラムでは、年代、性別、性的指向、家族やパートナー、職業ごとのミーティングや交流会など、立場や目的に応じたグループがあり、一人一人のニーズから新しいプログラムが生まれ、必要なサービスにつながっていることが感じられました。

後半のトークコーナーでは、SNSを活用したアウトリーチによって、SOSの声を積極的にキャッチしようとする、NPO法人OVAの活動を伺いました。クライエントからの相談を受け身で待つだけでなく、可視化されにくい声を拾うための手法を、ネット社会の実情に合わせて模索する試みに、ソーシャルワーカーとして示唆を得るものがありました。

先に述べた、貧困や住まいの課題は、HIVや自殺対策とも密接につながっています。ぷれいす東京をはじめとする様々な支援団体と、今後も協力し合って取り組んでいけたらと思います。

「セルフスティグマとエンパワメント」長谷川

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私は2017年3月にHIV陽性であることが発覚しました。「ぷれいす東京」へは仲間が欲しくて、2018年2月からお世話になっています。

この間、仲間と呼べる人たちと出会い、病気の有無に関わらず、「1人1人が主人公」になれる場であり、そこに関わることができることに感謝しています。

病気を持って生きることは不幸なことかもしれません。それでもよかったこともあります。私の場合は病状が重く、両親にHIV/エイズのこと、同性愛者であることをカミングアウトし助けを求めました。入院中の病棟内で恋人も紹介しました。結果、私の「こころ」を取り巻く環境は何倍も豊かなものになりました。でも、もしこの時拒絶、否定されていたらと思うとゾッとします。

「トークコーナー」の伊藤先生の話を聴き、人間関係イコール失敗経験となっている人。そもそも声をあげられない人がいることに気づき、ない勇気を絞り出したことを思い出しました。
「たとえ身近に理解者がいないと思っても、なお味方はいる」

声なき声をすくい上げるため、自分のため、その何かを皆で探して自分も力になれたらいい……当事者だからこそできる何かがきっとあるはず。そんなことを考える貴重な機会となりました。

※2017年度年間活動報告書はこちらからPDF版をダウンロードしてご覧いただけます。また、2017年度より活動実績の概要をA4サイズ1ページにまとめたのでこちらをご覧ください。

2017年度活動報告会概要

■日 時 2018年5月27日(日)14:20~16:45

■会 場 新宿区戸塚地域センター7階 多目的ホール

■プログラム

  • 認定NPO法人化 経過報告
  • 部門報告
    ホットライン / Sexual Health Project / Gay Friends for AIDS / バディ / ネスト / HIV陽性者への相談サービス / 研究・研修
  • トークコーナー 「ネットで助けを求める若者たち」
    【ゲスト】
    伊藤 次郎さん(特定非営利活動法人OVA)
    【司 会】
    生島 嗣

伊藤 次郎さん(Jiro Ito) プロフィール
NPO法人OVA代表理事 ソーシャルワーカー(精神保健福祉士)。
メンタルヘルス対策を企業に提供する人事コンサルティング会社(EAPプロバイダー)を経て、精神科クリニックにて勤務。主にうつ病の休職者の復職支援を行った。2013年6月末に日本の若者の自殺が深刻な状況にあることに問題意識が芽生え、マーケティングの手法で自殺ハイリスクの若者のリーチしようと「夜回り2.0(Internet Gatekeeper)」の手法を開発・実施し、NPO法人OVAを設立した。

■参加者
64名

当日会場に「U=U」撮影スポットが出現しました。「U=U」の詳細についはスタッフ日記「U=UはHIV陽性者への差別を減らすためのキャンペーン」をご覧ください。
高田Drと池上さん

U=U

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