スタッフ日記

平田豊さん。

劇団フライングステージのお芝居『こころ、心、ココロ』を観に行って来ました。

100年と少しの日本のゲイたちの物語。
1914年から1970年までを第一部、1970年から2023年までを第二部として、それぞれいくつかのエピソードをオムニバス形式で上演する舞台です。
私は第二部を先に、そしてその日のうちに第一部を鑑賞しました。

会場は高円寺にある座・高円寺
とても綺麗で立派な劇場です。

第二部の方では、私自身がリアルタイムで見聞きしたり実際に経験したお話がいくつもありました。
府中青年の家裁判は傍聴に行ったし、2010年の札幌のゲイパレードも歩きました。
新木場の事件の時は、直後に現場に手を合わせに行ったりもしました。

そして平田豊さんが登場しました。
ご存知の方も多いと思いますが、彼は日本で初めて性感染のHIV陽性者として世間に名乗り出た方です。
1994年5月に亡くなってしまいましたが、その前年に蔵王の温泉旅行に参加されていました。
私もその旅行でご一緒していたのです。

前の年の1992年、仙台で全国のゲイサークルの交流合宿が開催されました。
南定四郎さんを講師にお招きして、勉強会を行なったのです。
当時東北に住んでいた私は、この交流合宿で知り合った東北地方に暮らす何人かの仲間と一緒に、東北地方初のゲイサークルを立ち上げました。
翌年、誕生のきっかけを作ってくれた全国のサークルのみなさんへの恩返しの意味も込めて、東北のサークルが幹事となって旅行を企画したのでした。
それが蔵王の温泉旅行という訳です。

平田さんはこの時既に体調が優れず、車椅子を使っていました。
HIV陽性者の方と会うのは初めてではありませんでしたが、具合の悪い彼にどう接して良いのか正直分かりませんでした。
でも、周りのみんなと一緒に楽しんでいる様子を見ることができました。
平田さんに近い方々に伺うと、結構いい加減で適当な人だったそうですが、人間的に魅力に溢れた方でもあったそうです。

そんな平田さんが舞台の上で蘇りました。
役者さんの口を借りて、今彼が言いたいことを言っているように思いました。
あの頃まだ少し遠いと感じていたHIVが、今はこんなにも身近なものになっています。
もう少し生きる時間がずれていたら、私はもっと平田さんと話せたのかも知れません。

昨年京都で開催された日本エイズ学会に、メモリアルキルトのブースが出ていました。
その中に平田豊さんのキルトもあったのです。
その時にちょうど30年前の出会いのことを思い出し、そして今回のお芝居でさらの多くの感情を呼び起こさせてもらいました。

『こころ、心、ココロ』は明日3/10(日)が千秋楽となります。
ご興味のある方はぜひ劇場へ。

かとう

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