スタッフ日記

Hello from DC, Part 1

国際エイズ会議は22日にスタートしますが、開幕前からさまざまな関連イベントが開かれています。そのひとつ、国際エイズ学会がホストし20日に開催されたHIV/AIDSと薬物使用をテーマにした会議「HIV and Drug Use: Effectively Addressing the Twin Epidemics: Innovative Strategies for Healthy Communities」に参加しました。

ハーム・リダクションに関する資材日本の状況とはいささか異なりますが、国際的には静脈注射によるHIV感染例が非常に多く、サハラ以南のアフリカ諸国を除く世界のHIV陽性報告数の3分の1を占めるとも言われています。また、薬物を使用するHIV陽性者は、抗HIV療法を受けても、薬物使用者ではない陽性者より余命が短いという研究結果もあり、効果的な対策の必要性が叫ばれています。この会議でも、注射器の使い回しによるHIV感染の予防に効果的な、注射器交換プログラムや過剰摂取予防教育などのハーム・リダクションの推進が大きなテーマのひとつになっていました。

※薬物使用(依存)をやめることの難しさや、すぐにやめることがかえって深い依存を招く危険があることなどを鑑み、まずは薬物を使用する上での害を少しでも低減することを目指す考え方。

オーストラリアやフランス、スイスなどで目立った効果が上がっているというハーム・リダクション・プログラムの医学的根拠をもとに、他の薬物使用が進んでいる国や地域――往々にして貧しい国――にどう介入するか。例えば東欧のある国で成功したハーム・リダクションがアフリカの別の国でも効果があるかわからないから、まずはパイロット・テストをやってじっくり検討しよう、という議論が援助機関の机上で繰り返されることに、ある現場の医師は懸念を表明しました。国際協力や開発においては、対象国の文化や地域特性などに配慮し、それにあわせた方法で対策プログラムを導入するべきというのは大前提です。一方で医療や公衆衛生の専門家の間にも薬物使用に対するスティグマが根強く(それは薬物使用がとりわけ社会の周縁化された人々の間に集中していることと無関係ではないかもしれませんが)、それらがハーム・リダクションの推進を阻んでいると指摘し、既に十分なデータとエビデンスがあるハーム・リダクションで、パイロット・テストをやっている間にどんどん人々が死んでいくのを見るのが耐えられない、という言葉が印象的でした。

ハーム・リダクションワシントンDCのとある施設のトイレでも、コンドームだけではなくハーム・リダクションのために交換用注射器が自由に持ち帰れるようになっていました。

おーつき

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