スタッフ日記

2014年の年の初めに  

今年もよろしくお願いします。

 

ぷれいす東京は1994年の4月に誕生しました。今年20周年を迎えます。様々な記念イベントを予定していますので、よろしければご参加ください。

 

この20年でHIVを取り巻く環境は大きく変化しました。
発足当初はとてもネガティブな文脈ではありましたが、社会の関心もありました。しかし、最近ではHIVに関する報道もすっかり少なくなっています。今後は私たちにできる範囲で、報道を増やすためのメディアとの協力も実行しこうと思います。

 

20年前、日本では「感染爆発前夜」という言葉が飛び交っていました。当時、多くの企業で、社員が感染した場合に備えたマニュアルづくりが盛んに行なわれたりもしました。その後、様々な専門家や関係者の努力によるところも大きいと思いますが、日本では、未だに感染爆発は起きていません。

しかし、ぷれいす東京に寄せられる相談内容から推測すると、性別やセクシュアリティに関係なく、幅広い層のHIV陽性者から相談が寄せられています。女性のHIV陽性者からの相談もあるし、異性愛の男性、女性パートナー、家族からの相談も寄せられています。しかし、最も多くよせられる相談は、男性とセックスをする男性たちからで、この層における感染拡大が、今でも続いていることを教えてくれています。

 

日本における、HIV陽性者の年間の新規報告は、微増か横ばいとなっています。日本のHIV感染に関する状況を海外と比較すると、感染の低い国とされています。そうした状況における対策の基本は、最も感染が広がっている層への働きかけが大切であるといわれています。何故かというと、HIV感染の広がりは静かに進み、一つの集団から、周囲の集団に広がり、大きな流行になったときには、それを止めるのが、非常に難しくなるからです。

しかし日本社会の現状をみてみると、これまでの景気の冷え込みからの反省からか、個人よりも企業の利益が優先される風潮が社会全体を支配しています。経済対策が優先され、貧困や福祉、もちろん感染症対策などは後回しになりがちです。

HIV対策をより有効にするためには、少数者へきちんと対応できる社会のあり方が求められているのです。そのため、厚生労働省はエイズ予防指針という、政策の指針のなかで、対策を強化すべき集団を「個別施策層」として位置づけています。そのなかには、青少年、外国人、同性愛者のほか、セックスワーカーとその客についても、「HIV対策を進める観点からは、性風俗産業の従事者及び利用者も個別施策層として対応する必要がある」と位置づけています。また同時に、「これら個別施策層に対しては《人権や社会的背景に最大限配慮したきめ細かく効果的な施策を追加的に実施することが重要である》と明記しています。

 

私たちは、HIV陽性者支援を実践し、HIVのリアリティを伝えるなどの啓発活動をしています。そんな私たちが考える、日本社会に望むことは、少数者への配慮ある社会、誰も排除しない社会の実現です。このことが、社会がHIV/エイズとうまくつきあっていくためには、とても大切なのです。この点を後回しをすることが、今後にどのような負の影響を及ぼすのかを心配しています。今年、私たちの20年の歩みを振り返るととともに、多くの市民とこのことを考えていけたらと願っています。

 

                      ぷれいす東京  生島嗣

生島

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