スタッフ日記

「HIV:退職の看護師訴訟」の記事を読んで

 HIV感染がわかることで勤務先を退職することになってしまったHIV陽性者による訴訟に関するニュースを読み感じたことを書かせていただく。
 

毎日新聞 2014年03月14日「HIV:退職の看護師訴訟、結審 福岡地裁支部」

http://mainichi.jp/select/news/20140315k0000m040034000c.html

 体調が不良があった看護師が、勤務先の病院から紹介を受けた専門医療機関(エイズ拠点病院でもある)でHIV陽性だと判明。専門医療機関はご本人の職場だった病院に「紹介元医療機関への経過及び結果報告」としてHIV感染も含めて報告をした。勤務先、専門医療機関が訴えられていたのだが、専門医療機関とご本人との間では、すでに和解が成立している。職場が重なる場合には、紹介元への報告においては、本人の意思を確認していくという再発防止も提案されているという。

 しかし、職場の医療機関内との間で、訴訟が継続しており7月に結審だという。診療情報として提供された報告情報を職場の労務管理に利用したのかどうかの是非が争われている模様。勤務先であった病院は、本人の体調に配慮して休職を勧め、退職を強要した訳ではないと弁明しているという。

 私たちが受ける相談のなかでも同様のケースはある。看護師長が事務方から風評被害を恐れて、退職に誘導するように指示されており、師長が疑問を感じて相談をしてくるなどの事例が複数ある。その一方で、陽性者自身も陽性とわかったら看護師として働くことはあきらめるべきだというHIV陽性者もいて、自主的に退職してしまうこともある。
 HIVは他の血液で感染するウイルスと比較しても感染力が弱い。他の感染症への対応ができていれば、現状の対応で問題ないはずなのだが、医療や福祉の現場で働くHIV陽性者、周囲の人たちからはこうした相談は時々寄せられる。医療機関は、医療や健康にいわゆる'ただしい知識'に関する国民の規範となるべき存在であるが、この状況を放置していること事態が問題であるように思う。この訴訟は氷山の一角にすぎない。

 日本看護師協会が2010年10月に名古屋でおきた、HIVに感染した看護師への退職勧告報道について、以下の声明を発表している。

 HIVに感染した看護職の人権を守りましょう
 http://www.nurse.or.jp/nursing/practice/shuroanzen/safety/hiv.html

 ぷれいす東京ではHIV陽性の看護師たちのミーティングを実施しているのだが、参加者の多くがHIV感染に、エイズ発症で気付く割合が高い印象である。彼らの職場 は、自己の感染確認を躊躇させるような環境なのだろうか。今後も、この訴訟に注目していきたい。
 

生島

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