スタッフ日記

「韓国軍による同性愛者さがし」はHIV/エイズ対策への悪影響になる

東京レインボープライドから提案があった「韓国の陸軍大尉が同性愛を理由に有罪判決を受けたことに対する共同抗議声明」に名前を入れさせていただいた。HIV/エイズに関わるNGOとして、感じるところを少し書かせていただく。今年の東京レインボプライドの初日のフェスタのなかで、シンポジウムをTOKYO AIDS WEEKSとして企画づくりに関わらせていただいた。そのなかで、一番驚いたことの一つが、3国の感染経路の違いだ。

このデータは2015年に新規に報告された台湾、韓国、日本の感染経路の年間報告数だ。日本のデータは、HIV感染者、エイズ患者の合計で計算している。オレンジ色が女性の割合だ。各国とも2〜4%といったところで、大きな差はない。しかし、緑色は男性同性間で感染したと表明した人の割合は大きくことなっている。台湾:83.4%、韓国28.0%、日本:65.6%となっている。「男性・異性間」、「その他/不明」の割合も同じく大きく異なっている。これは、何を意味するのだろうか。

韓国における「その他/不明」の割合は36%、「男性・異性間」33%は、女性の割合を考え得ると明らかに、事実を表明するのが難しい社会や地域の環境が影響しているのではと感じざるを得ない。

また、シンポジウムのために、2015年の3国ごとの人口10万人あたりHIV/エイズ報告数を試算した。結果は、以下のようになっていた。韓国ではゲイのコミュニティでもそれほど、薬物使用はないという話を聞いていたので、日本の倍ほどの数字となっていたため驚いた。エイズ対策は、差別や偏見を取り除き、最もリスクが高い人達とも連携しつつ、対策をおこなっていくことが大事である。これは、HIV/エイズの歴史が証明している。

自分の性行為の内容や相手が誰であろうと、批判されず、自らの性や健康と向き合える社会であることがHIV/エイズ対策では重要だ。安全でなければ、HIV検査を自分で受けようとは思わない。日本の社会も、まだまだ課題はあるし、私たちがすべきこともある。日本においても、自分のセクシュアリティが明らかになる恐れから、エイズ発症まで検査をうけないでいる人はまだまだ存在する。今回の韓国軍の行動は、自分のセクシュアリティを棚上げ(否認)し、自分の健康リスクとも向き合うことをより難しくしてしまう恐れがあるように思う。軍関係者以外の韓国市民の同性愛者へのイメージにも大きな影響がある。同じ東アジアの地域の隣人として、今回の出来事は看過しできないと感じ、抗議声明に加わらせていただいた。

ぷれいす東京代表 生島嗣

生島

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