陽性者と家族の日記

「今」だから 思うこと

ごぶさたしています。

今年初の投稿になります。

 

2020年は スタート早々から 大きな困難に直面してしまいました。

コロナウィルス”COVID-19”。

わずか1か月で南極を除くすべての大陸で確認されるほど世界中で一気に拡散し、人々の間に大きな混乱が広がっています。

日本でも小中学校の一斉休校が首相から要請され、コンサートやスポーツの試合など さまざまなイベントが中止や延期になりました。

そろそろ桜が咲き始める時期ですが…今年は花見の宴会とはほど遠い気分の春になりそうです。

 

COVID-19が引き起こす様々な症状に対しては、現在のところ 治療の専用薬も予防のためのワクチンもありません。

どんなウィルスなのかということもよく分かっていないので 医療の現場は大混乱。

“昨日から熱が出て少し咳もある、安心のためにちゃんと検査してもらおう”と思う人がいても当然です。

けれど、いきなり病院に来ると院内感染のリスクも高まるため まずは様子を見て自宅で待機してもらうようお願いする…

この方針じたい…多くの日本人にとって すんなりと受け入れるのは難しいのではないかな?

体調が悪かったらすぐ病院で診てもらう、というのが”国民皆保険”に守られた日本人の常識でしたから。

 

なかなか検査が受けられないのも困りものですが、PCR検査で「陰性」と判断されても体の違和感が残ったまま…後になって再検査してみたら「陽性」に変わっていた…

という 従来の常識が通用しない”事件”がここでも起こり、それも人々の混乱に拍車をかけているようです。

多くの人にとって、検査と言えば”一発判定”のイメージが強いため、”正確じゃないって、いったいどうなってるの?”と 不安になるのはあたりまえかもしれません。

 

個人的には…今回のCOVID-19では ウィルスよりもむしろ 野放図な「言葉」や「数字」の氾濫の方がずっと怖い、という印象をもちます。

 

”致死率を見ると約〇%で、これは20年前のSARSほど高くはなく、季節性のインフルエンザよりちょっと高いくらいです。過度に心配することはありませんよ”

と報道されていたのは 1か月ちょっと前でした。

ところが、横浜のクルーズ船で風向きが急に変わり、感染した人の数が数十人、数百人…と日を追ってどんどん増え まさかの展開にみんながあっけにとられました。

確かに、致死率だけ見るとSARSより低そうだけど…感染している人数はSARSよりも圧倒的に多いです。

人々の間に広がりやすい…ってことは、ほとんど影響を受けない人たちが多い反面、より重症になる人たちの数も増えるはず、と考えることもできます。

日本は超高齢化社会で独り暮らしやお年寄りだけの世帯もたくさんあるけど…それでも、ホントに大丈夫って言い切れる?

 

重症化するのは高齢者や基礎疾患のある(一部の)人たち…って言ってよね…でも、20代、30代の患者も重症化したというニュースを聞いたよ。

え、話が違うの?

 

何が本当で何がデマなのか分からない…という不安から 一部の人々は過度な「正しさ」を追求し始めました。

マスクをつけずに咳やくしゃみをしている人を容赦せず非難したり、こんなご時世なのにイベントに出かけて感染するのは仕方ない、自己責任だ…という批判がネットなどを通じてあちこちで聞かれます。

 

重症化するのは高齢者や基礎疾患のある人(だけ)です…と言われたら、多くの若者は “なんだ、オレにはあんまり関係ない話だ”と判断するでしょう。自分たちの警戒レベルを弱めるのは当たり前です。ましてや、”インフルエンザと同じような症状”って言われていたし…

なのに…”若者が積極的に行動していることが高齢者への感染につながっている”という言い方をされたら、反発が起きないはずはありません。

多くの若い世代にとって、高齢者の日常生活はなじみが薄くリアリティをもってはいない…のが、残念ながら事実でしょうし。

 

医者は医者の言葉を使い、投資アナリストは経済の視点で作られた言葉を使う。

政治家や役人が使う言葉は非常に抽象的でわかりずらく、具体的じゃない。

ホントは…(同じ日本語でありながら)それぞれの言葉を通訳して取りまとめ、 “私たちの言葉”に置き換えてくれる存在がいてくれたらよかったのに…

ニュースを見るたび そんな愚にもつかないことを考えてしまいます。

誰に向けているのかわからないバラバラな言葉や数字が飛び交い、世代を超えた人々の考え方がかみ合わない、なんとも”チグハグ”な現象。

国際的イベントで国の存在感を世界に示すよりも…もっと先に考えなくちゃいけないことが 実はたくさんあるんじゃないか?つい、そう思えてしまって。

 

問題の責任は誰にある?と問う人たちもいますが、批判するだけなら簡単です。

COVID-19がどんなウィルスなのかほとんど分かっていないのが今の現状だとしたら…

何が「正しく」て何が「間違い」なのかを追求するのって… 個人という人間の日常生活のレベルにとっては あまり役に立たないかな?とも思います。

もっと具体的な…「生き残るための手段」を それぞれが自分の判断で選んでいかなくちゃいけないでしょうし しばらくはそういう状態が続くでしょう。

 

もちろん、サポートが必要な人たちに対しては スピーディで適切なケアを提供してほしいですし、そうであることを願います。

僕はHIV陽性者ですが、治療薬があるからこそ 毎日の生活を楽しむことができています。

人生の設計も「薬を飲むことでAIDSの発症を遅らせることができる」という土台なしでは組み立てられません。

これは 長い時間をかけて積み上げられた知識をもとに たくさんの人たちが僕たちをサポートしてくれているおかげです。

でも 残念ながら…COVID-19は 、現時点では解決策が見つかっていません。

 

何もしなくても健康な状態があたりまえなら体調管理なんてハナから考えないし、強制的に関心をもたせるのは 個人主義の傾向が強い現代では困難な気がします。

けれども…世の中は自分や自分たちと同じ(ような)人たちだけが暮らしているのではない…と気づく機会があれば 自分とは関係のない人たちの姿も目に留まるはず。

本当の”グローバル化”って…国際化よりも先に、まずは日本という同じ国の中にある”自分の知らない世界”とつながり それを意識することなんじゃないかな。

 

僕の友人に小学生のお子さんをもっている人がいるのですが、学校が閉鎖されたため 奥さんと手分けして家の中で子供たちの勉強を見ているそうです。

いろいろ大変だけど、子供との距離感が縮まってよかった と思える部分もあるよ…そう話していました。

 

ちょっとひねくれた表現になりますが…

”HIVやAIDSはある特定のグループの人たちがかかる病気で、自分たちには縁がない”

と考えている人たちにとっても、謎の多いCOVID-19は

”自分にも降りかかる可能性が高い、現在進行形でリアリティがもてる感染症”

として受け止められるのではないかと思います。

 

もちろん…

さらにその先にある、多様な 見知らぬ景色にも目が留まるきっかけになると もっといいな…

僕を含めた みんなにとって。

 

HIV陽性者にとっても、そうでない人にとっても 今年はいろいろな意味で試練の年となりそうです。

有効な治療薬が見つかり、ワクチンが開発されて少しでも早く事態が早く収束することを願いつつ…

なるべくいつもと同じ調子で 前を向いて進んで行きませんか。

とりあえず、ただのカゼもインフルも、そしてCOVID-19にもかからないように、

おたがい セルフケアを大切に!(^_-)

 

 

 

なぎさのペンギン

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