陽性者と家族の日記

お味どう?

昼休み。
週に一度は行く(といっても昼飯オンリー)小さな居酒屋に足を運ぶ。
今日はとても空いていた。客商売とは分からないもので、いつもの日と特に何が変わるというわけでもないのに、お客で満杯の日があれば、今日のようにガラガラな時もある。自分が入った頃は他に二人連れの組がいるだけで、彼らも自分が食べている最中にお会計をして去ってしまった。
自分の後に入って来る客はいない。
ということは完全に一人きり。
別に何事もなく食べ終えて、自分もお会計。
その時、店の主人が厨房から顔をのぞかせ、「お味は、どうでした?」と問いかける。

暇そうだね。

ごめんなさい。自分のほうは懸案の仕事で頭がいっぱいで、あれこれ考える余裕を失っていた。
「うん。いつもどおり、美味しかったよ。」とひとこと言って、立ち去ってしまった。
でも、思い返してみると、どれも確かに味は美味しいのだけれど、ちょっと味付けが濃いというか、御飯をいっぱい食べないとバランスが悪いというか、机に向かっている人にとってはちょっと塩分が多そうである。別に今日だけというわけではなく、普段からそう感じているのだが。
でも不意に投げかけられた質問にそこまで自分の気持ちを正直に述べる余裕はなかった。

今度話しかけられたときのために、少しはシナリオを練っておこうかな。

蔵人

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