陽性者と家族の日記

見えてきたもの

HIVと共に過ごす秋。今年で何度目だろうか?
自分の体の中にいつから棲みつくようになったのか
分らないけど…しっかりと、僕の一部分になっている。

ウイルスは決して目には見えない。
細菌のような微小な生物の一種だと思っていたけれど、
科学的に言うと、生物には分類できない「分子ロボット」
のような、とっても不思議な存在なのだと知った。
この見えないウイルスは、僕に身体障害者認定という現実をもたらした。
でも、外見上は誰からもそうは見られていないと思う。
当の自分ですら実感がもてなくなる時がある。

他の人たちも同じように感じているのかな?
だから、いつまでもいつまでも
新たな感染者を求めてウイルスが広がり続けているんだろうか?

ゲイである自分は、「見た目」というものにずっとこだわりをもってきた。
外見がカッコ良くなければ価値などない。そう信じてきた。

今の僕を、外見上から病気と感じる人はほとんどいないだろう。
でも、病気になったオレ…ホントにカッコいいですか?
ほかの誰かが価値を感じてくれそうですか?

目に見えないものに知らされた。
「目で見えることだけが現実じゃない。
お前は目に見えない想像力というチカラを使ってない」
と叱られた。
復讐でも戒めでもなく、叱ってくれた。

それでも僕は、やっぱり外見が気になる。
でも、今まで目では見えなかったものが、目を使わずに
ずいぶんと見えるようになってきた。

それだけは確かな実感があるし、そのことがなによりもうれしい。

なぎさのペンギン

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