陽性者と家族の日記

不安な気持ち

またまた、久しぶりの更新になります…汗。

今年の夏、10日間ほど海外へ行く機会がありました。

さまざまな思い出を抱えながら帰国の途について…

あれ、体調がおかしい?
頭痛がするし、ゾクゾク鳥肌がたっている。熱っぽくもある。
やばいかな?もしかして、あれか?
飛行機の機内で、不安におびえていました。

成田空港に着き、入国手続きを済ませた後でサーモセンサーの
チェックを受けたら、やっぱりひっかかってしまった。
検温したら、40℃の高熱。

医務室にいる担当医師が’だいぶありますね’と言いながら、
インフルエンザの検査をしてくれました。

結果はA型の陽性。新型インフルエンザだろう、という診断でした。

僕が恐れていたのは、このまま家に帰ることができずに
空港近くのホテルに待機させられるのではないか、ということでした。
たしか、今年の5月くらいの報道でそんな風に聞いていましたから。
そして、自分が体力に不安を抱えたHIV陽性者であり、このまま
激しい症状に耐えることができるのか、という気持ちの焦り。

この数ヶ月の間で、状況は大きく変わっていたのでしょう。
陽性と診断された方を隔離する措置は、すでにもう取られてはいませんでした。

この医師の方は(空港の検査室というロケーションから察しても)
日ごろから数多くの帰国者を診察し、その都度の対応を取ってこられたのだ
と思います。そのことも、不安感の解消に大いに役立ってくれました。
自分がHIV陽性者であることを告げても動じることなく、CD4の値や
かかりつけの主治医の名前まで、静かな口調で丁寧に訊ねてくれ、

「その状態なら、治療薬を飲んで安静にしていれば大丈夫だと思いますね」
とアドバイスしてくれました。この間、わずか25分。

これが今から約1ヶ月前、日本で新型インフルエンザの流行が報じられる
直前くらいの話です。

自分の過去を振り返ってみて、HIVに感染したことを告げられたとき、
周囲にいた方々が病気についてきちんと説明をしてくれました。
緊張で張り詰めていた神経が不意にゆるんで、ホッと息をついた
あの時の安らぎ…
一生忘れることはできません。

最悪な体調の時には、悪いほうへ悪いほうへと考えてしまうのが人間の常です。
それは、そのとき直面している人にしかわからないんですよね。
不足している情報。何を信じていいやら分からないイラダチ。

けれども、ほんのささいな違いで…自分がいる場所が、天国にも地獄にも思えたりする。
ああ、そうだった、そうだった。
僕は、あのときの記憶を忘れかけていました。
というより、心のどこかで忘れようとしていたのかも知れませんが。

南の島の滞在も楽しかったけれど、最後になって最高の勉強ができました。
 

なぎさのペンギン

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