陽性者と家族の日記

少し前のことだが 風邪をひいてのどを腫らしてしまった

その夜は早めに寝たのだが 久しぶりで 父の夢を見た

父と僕は なぜか外国の 南の島にいた
この地が初めてという父のため 僕は 観光ガイドのように
父を連れて あちこちをめぐった
その途中で 父といろいろな話をした
考えたら 今まで 父親とじっくり話をしたことなんてなかった

繁華街に入って 僕は急に 猛烈にのどが渇いた
近くの土産物屋で アイスクリームを買おうと思って
「ちょっと買い物してくるので ここで待ってて」
と言った
父はうなずいた

アイスクリームを買って戻ってみたら 父はいなかった
はぐれた?
探しても 探しても 父は見つからない
どこにいるんだろう  おーい どこにいるの?
父のことが心配で いてもたってもいられなかった
汗をかきまくって 一生懸命に 父を探した

目ざめた
真夜中の自分の部屋だった
体中がぐっしょり濡れていたけど なんだかいい気分だった

父が亡くなってから 今年で21年になる
父が病気になったために 留学を取りやめにしなければならなかった
それがつまずきのはじまりだったと 本気で思ったこともある

病気がわかってから たったの4ヶ月
父は 静かに逝った
考えたら 生きている間 父親とじっくり話をしたことなんてなかった

あの夜は 願いがかなって とってもうれしかった
ここまで来るのに20年もかかったか と思ったら やはり笑えるけど

命日の5月21日
なるべく思い出さないよう ふたをして閉じ込めてきたけど
今年は ポン とキャップを開けて 
23才だったあのころに 笑顔で戻ってみようと思う

自分の記憶は 自分だけのものだから 
最後の最後まで 大切にしなきゃ

さんきゅー 父ちゃん!

なぎさのペンギン

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