運営委員のつぶやき

矢島 嵩

こんなときにいったい何を書けばよいのでしょう。先月、神戸に古い友人を訪ねて、いっしょに埠頭の震災メモリアルに行ったばかりでした。そのときには、ひびがはいって崩れたまま保存されたコンクリートに波が打ちつけるのを、ただ何となく眺めていました。

十代を戦争のさなかの東京で過ごし、焼け野原を経験している母は、いま80代。生きているうちにこんなことが起きるとは思ってもいなかった、昨晩、電話でそう語っていました。関東大震災で命からがら歩きつくした祖父の若いころのの話も聞きました。

何もかも失くしたと思ったのに、自分の命が残った。そのことに気づいたのは、飢えと渇きと悲しみがいくぶんかでも癒されたあとだったのじゃないか、そんなことを思いました.

“今年ばかりは”と思いつつも、やはり今年もいつものように春が来ます。一昨日、東京で開花宣言があり、桜前線は北関東へ、そして東北へ。過酷な自然と尊くも儚い命。今年ばかりはそれを思わずにいられません。

矢島 嵩

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