矢島 嵩
いつも利用している駅の、
改札口を出てすぐのところに、
毎年ツバメが巣をかけます。
初夏にスイーッと風を切ってどこかへ飛んでいき、
やがてまた風を切って戻ってくるのを見ることができます。
ここで雛も育ち、やがて巣立ちます。
一日何万人もの乗降客が行き交う
この都会の駅の喧噪の
ほんの少し上にこんな営みがあるのです。
僕だけのひそかな楽しみのつもりで、
ときどき足をとめて見上げたりしていました。
先日、いつものように少し留まって、
ツバメを目で追っていたら、
近くにいたサラリーマンが、
同じように目で追っているのです。
ほどなく帰巣を確認して
彼は自転車置き場へ、
僕はスーパーへ。
ロマンチックでもなんでもない話なんだけど、
なんだか妙にうきうきする。