厚労省にて「声明：私たちは大麻使用罪の創設に反対します！」の記者会見に参加
ぷれいす東京は「大麻使用罪創設に反対する依存症関連団体・支援者ネットワーク」の一員として、2021年6月2日に以下の声明を発表するための記者会見に参加し、厚生労働省に書面を提出しました。
- NHK NEWSWEB 2021年6月2日 大麻「使用罪」検討 薬物依存症当事者の支援団体など反対声明
- 日テレNEWS24 2021年6月2日 “大麻使用罪”導入反対、立ち直りの機会を
- BuzzFeed 2021年6月2日 「厳罰化は効果なし」「世界の流れに逆行」 大麻「使用罪」の創設に依存症関連団体、支援者ネットワークが反対声明
- ハフポスト日本版 2021年6月2日 『大麻使用罪』創設への反対、薬物依存症の当事者が訴える「厳罰は予防に効果的と考えられない」「厳しい罰を受けていたら、生きることを諦めていたかもしれない」と、厳罰化は逆効果になると訴えた。
- BuzzFeed 2021年6月12日 【詳報】厚労省の大麻検討会 委員たちはどんな意見を最後に述べた？「厳罰化だけでは解決しない」
声明：私たちは大麻使用罪の創設に反対します！
大麻使用罪創設に反対する依存症関連団体・支援者ネットワーク
私たちは、薬物その他の依存症問題に関わる団体・支援者として、「大麻使用罪」の創設に反対を表明します。
- 世界の薬物対策は、懲罰から「人権に基づく公衆衛生アプローチ」に転換
2010年、国連人権理事会及び第65回国連総会に、薬物と人権に関する包括的な報告書が提出。「犯罪化や過剰な法執行は、健康増進の取り組みを阻害し、スティグマを広め、薬物使用者だけでなくすべての人々の健康リスクを増大させる」として、「薬物使用に伴う害を低減する介入策（ハームリダクション）」と「非犯罪化」を推奨しました。
この流れは、2011年の「薬物政策国際委員会の宣言」（22名の世界的指導者および知識人で構成）、2015年に国連サミットで採択された「SDGs 持続可能な開発目標」、2016年の「国連麻薬特別総会成果文書」、2017年の「保健医療の場で差別を解消するための国連機関共同声明」、2018年の「国連人権理事会決議」、2019年の「国連麻薬委員会の閣僚宣言」などへと引き継がれ、強化されています。世界の薬物対策は、すでに、懲罰的アプローチから人権に基づく公衆衛生アプローチへと、大きく舵を切ったのです。
なお大麻は、国際条約「麻薬に関する単一条約」で規制されていますが、2020年に附表Ⅳ「最も危険で医療価値なし」から削除。危険度が下がり、医療的価値も認められています。 - 刑罰を受けるたびに再犯のリスクが高まる
日本でも薬物問題に関し、厳罰化が必ずしも抑止力にならないとの研究結果が出ています。『刑務所出所後の覚せい剤 事犯者の再犯予測因子』に関する研究（*1）では、再犯の予測因子として、「刑務所収容期間が長い」「刑務所入所回数が多い」「仮釈放期間が短い」「精神疾患の診断」が挙げられています。また、『重症度と服役回数の関係』（*2）でも、服役回数に伴って評価尺度上の重症度が悪化し、特に社会的問題の項目での得点が悪化していることが指摘されています。これらは、刑罰を受けるたびに再犯のリスクが高まり、社会における孤立と依存症が進行することを示唆しています。 - 薬物使用者＝犯罪者というレッテル貼りが、社会的排除と健康被害を拡大している
実際、逮捕によって、退学・解雇などで将来や生活の糧を失い、友人や家族を失い、社会的な孤立から再使用に陥った経験を持つ人が少なくありません。また、不起訴になったにもかかわらず、就職の内定を取り消されたり、家族までもが辞職に追い込まれたり、引っ越しを余儀なくされた例もあります。このような中、大麻使用罪を創設するのは、「犯罪者」として排除される人を増やすことになります。大麻そのものの害より、犯罪化により生じる害の方がはるかに大きいと、私たちは考えます。 - 「ダメ。ゼッタイ。」からの転換を！
｢ダメ。ゼッタイ。｣普及運動も偏見を助長しています。薬物使用者をゾンビや死神にたとえ、薬物の害を煽るポスターが自治体のコンクールで賞を与えられます。芸能人が逮捕されるとマスコミにリークされ、見せしめにされ、犯罪者として社会から排除されます。
このような状況下で、使用者や家族が通報を恐れ、相談や受診を躊躇するのは当然です。
変えなければいけないのは、この現状なのです。
大麻等の薬物の使用や単純所持を犯罪として厳罰に処すことは、問題の解決にならないどころか、取締り・司法・矯正のコストの増幅と、社会的排除につながります。
私たちは、エビデンスに基づく正しい認識のもと、薬物使用の背景にある生きづらさ等に焦点を当て、相談や治療、回復支援に力を入れる施策を求めます。そして、当事者や家族を地域で孤立させない予防啓発への転換をこそ強く望みます。
私たちは、世界の薬物対策の流れに逆行する「大麻使用罪」の創設に反対します。
参考文献：
（*1）Hazama & Katsuta: Factors Associated with Drug-Related Recidivism Among Paroled Amphetamine-Type Stimulant Users in Japan. Asian J Criminology, 15:1-14, 2020
（*2）嶋根ら: 覚せい剤事犯者における薬物依存の重症度と再犯との関連性：刑事施設への入所回数からみた再犯．日本アルコール・薬物医学会雑誌 54：211-221，2019
大麻使用罪創設に反対する 依存症関連団体･支援者ネットワーク
連絡先： 一般社団法人 ＡＲＴＳ
TEL:03-3555-1725 FAX:03-6162-9026 email: info☆addiction-recovery.net（☆を@に変えてください）
【依存症関連団体】
一般社団法人 ＡＲＴＳ(Addiction Recovery Total Support)
特定非営利活動法人ＲＤＰ（ＲＤＰ横浜）
NPO法人 ＡＳＫ（アルコール薬物問題全国市民協会）
一般社団法人 ＡＳＫふくおか
関西薬物依存症家族の会
公益社団法人 ギャンブル依存症問題を考える会
一般社団法人 スワローポケット
NPO法人 全国ギャンブル依存症家族の会
NPO法人 全国薬物依存症者家族会連合会
新潟県薬物依存症者を抱える家族の会
公益社団法人 日本精神保健福祉士協会
NPO法人 日本ダルク
認定NPO法人 ぷれいす東京
NPO法人 横浜依存症回復擁護ネットワーク（YｰARAN）
【支援者】
青木彩香（多摩青葉病院・精神保健福祉士）
朝倉崇文（北里大学医学部精神科学助教・医学博士・精神保健指定医）
阿部大樹（秋野病院・看護師）
蟻塚亮二（相馬市メンタルクリニックなごみ・精神科医)
安西 敦（弁護士・臨床心理士・公認心理師、大阪大学人間科学部非常勤講師）
生島嗣（NPO法人ぷれいす東京代表・社会福祉士）
石塚伸一（龍谷大学法学部教授・犯罪学研究センター長）
板倉康広（家族相談室ドラセナ・社会福祉士・精神保健福祉士）
一林大基（精神科医・バーチャル精神科医いっちー）
伊東千絵子（精神保健指定医）
指宿 信（成城大学教授・治療的司法研究センター長）
今崎牧生（港町診療所医師）
今村扶美（国立精神･神経医療研究センター病院・公認心理師・臨床心理士）
岩井圭司（兵庫教育大大学院教授・精神科医）
岩倉政城（尚絅学院大学名誉教授）
岩原千絵（久里浜医療センター医長）
内田知世（社会福祉士・精神保健福祉士）
海野 順（医療法人社団光風会三光病院院長・精神科医）
梅田芳彦（うめだDMクリニック精神科医・医学博士）
大石 智（北里大学医学部精神科講師・精神科医・医学博士）
大久保圭策（大久保クリニック・精神科医）
大塚 文（社会福祉士)
大橋直樹（医師）
岡 琢哉（児童精神科医）
岡本秀行（精神保健福祉士）
緒方慶三郎（公認心理師・臨床心理士）
沖田恭治（国立精神･神経医療研究センター病院・精神科医）
小野 剛（北里大学医学部精神科学・精神科医）
垣渕洋一（成増厚生病院副院長・精神科医）
風間 暁（保護司・ASK認定依存症予防教育アドバイザー）
柏木一惠（精神保健福祉士）
金澤 由佳（国立精神･神経医療研究センター薬物依存研究部研究員）
鐘ケ江啓司（弁護士）
上堂薗順代（精神保健福祉士・社会福祉士・ASK認定予防教育アドバイザー）
亀石倫子（弁護士）
川地 拓（国立精神･神経医療研究センター病院・公認心理師・臨床心理士）
川畑恵子（大阪府人権擁護士）
蒲生裕司（よしの病院副院長・北里大学医学部診療講師・精神保健指定医・医学博士）
木川真也（秋野病院・精神保健福祉士）
北森めぐみ（精神保健福祉士）
熊倉陽介（精神科医）
栗田真由美（看護師）
黒沢顕三（JCHO東京新宿メディカルセンター神経科主任部長・精神科医）
黒田啓介（弁護士）
小関清之（医療法人社団斗南会秋野病院地域連携室長・ソーシャルワーカー）
小林桜児（神奈川県立精神医療センター副院長兼医療局長）
小原圭司（精神科医）
小松知己（沖縄協同病院精神科医・沖縄ANDOGネットワーク世話人）
斎藤健輔（東北会病院・精神保健福祉士）
斎藤 環（筑波大学医学医療系社会精神保健学教授・精神科医）
斉藤正和（相模原中央病院医療相談室長・社会福祉士・介護支援専門員）
佐伯隆史（医療法人誠心会理事長・精神保健指定医・医学博士）
坂本 隆（津軽保健生協藤代健生病院名誉院長・精神科医）
佐久間寛之（国立病院機構さいがた医療センター副院長・精神保健指定医・医学博士）
櫻井博太（弁護士）
笹森千佳歩（国立精神･神経医療研究センター病院・公認心理師・臨床心理士）
佐藤 愛（秋野病院・公認心理師）
佐藤 拓（成瀬メンタルクリニック院長・精神保健指定医・医学博士）
佐藤正子（弁護士）
佐原まち子（一般社団法人WITH医療福祉実践研究所代表理事・社会福祉士・精神保健福祉士）
佐原若子（青森県保険医協会理事）
佐山英美（駒木野病院児童精神科医長・精神保健指定医）
志村哲祥（医療法人寿鶴会菅野病院・精神科医）
庄司こず恵（秋野病院・看護師）
白木麗弥（弁護士・保護司）
白坂知彦（手稲渓仁会病院精神保健科部長）
菅沼直樹（刈谷病院副院長・精神科医）
杉原正子（東京医療センター・精神科医）
鈴木 伸（ことぶき共同診療所院長・精神科医）
宋 龍平（岡山県精神科医療センター・精神保健指定医・公衆衛生学修士）
左右田哲（北里大学病院医療ソーシャルワーカー・社会福祉士・精神保健福祉士）
園田 寿（甲南大学名誉教授・弁護士）
平 幸司（千歳烏山メンタルクリニック院長）
高木俊介（たかぎクリニック・精神科医)
田中佑樹（公認心理師・臨床心理士）
谷家優子（龍谷大学犯罪学研究センター嘱託研究員・公認心理師）
田村綾子（聖学院大学心理福祉学部教授・精神保健福祉士）
田村 修（勤医協中央病院精神科･リエゾン科科長・精神科医）
田村勝弘（新潟少年鑑別所法務教員・ASK認定依存症予防教育アドバイザー）
檀 瑠影（檀クリニック院長・精神科医）
塚越拓実（看護師）
辻本士郎（ひがし布施クリニック院長・精神科医）
土屋洋子（ことぶき共同診療所医師・心療内科医）
常岡俊明（昭和大学医学部精神医学講座講師）
出水玲奈（北里大学医学部精神科学・精神科医）
出村綾子（国立精神･神経医療研究センター病院・公認心理師・臨床心理士）
富田拓郎（中央大学教授・臨床心理士・公認心理師）
中村奈奈（北里大学病院医療ソーシャルワーカー・精神保健福祉士・社会福祉士）
永田貴子（精神保健指定医・医学博士）
西村康平（神奈川県立精神医療センター・精神科医）
西村武彦（弁護士）
西脇健三郎（医療法人志仁会西脇病院理事長・院長）
野口誠（元福祉事務所相談係長・社会福祉士・精神保健福祉士）
野田龍也（奈良県立医科大学医学部公衆衛生教室准教授・医師・医学博士）
野田哲朗（兵庫教育大大学院教授・精神科医）
野田浩夫（医療生活協同組合健文会理事長）
信田さよ子（公認心理師・臨床心理士）
野村裕美（同志社大学社会学部教授、社会福祉士・精神保健福祉士）
橋本 望（岡山県精神科医療センター医局長・精神保健指定医）
長谷川千草（日本精神保健福祉協会認定成年後見人ネットワーク「クローバー」運営委員長）
原田隆之（筑波大学人間系教授）
早坂由美子（北里大学病院医療ソーシャルワーカー・認定社会福祉士・精神保健福祉士）
馬場俊明（精神科医）
稗田里香（武蔵野大学人間科学部教授・博士（社会福祉学）・社会福祉士・精神保健福祉士）
廣橋 猛（永寿総合病院緩和ケア科部長・緩和ケア医）
福重 清（立教大学社会学部・明治大学農学部兼任講師）
藤岡淳子（大阪大学大学院名誉教授・博士（人間科学）・臨床心理士・公認心理師）
藤村貴司（重荷おろし代表・精神保健福祉士）
藤原秀博（NPO法人ナルミーランド副理事長（うつカウンセリング相談員））
福生泰久（神経科浜松病院・精神保健指定医・医学博士・藤田医科大学精神神経学講座客員講師）
船田大輔（国立精神・神経医療研究センター病院・精神科医）
星野俊弥（北里大学医学部精神科学助教）
正高佑志（医療大麻専門医・一般社団法人GREEN ZONE JAPAN代表理事）
松永優子（めじろそらクリニック院長）
丸山泰弘（立正大学法学部教授・博士（法学））
三枝華子（国立精神･神経医療研究センター病院・公認心理師・臨床心理士）
南本宜子（医療ソーシャルワーカー・社会福祉士・精神保健福祉士）
村上真紀（国立精神・神経医療研究センター病院・精神科医）
森田展彰（筑波大学社会精神保健学准教授・精神科医）
安井飛鳥（社会福祉士・精神保健福祉士・弁護士）
山崎茂樹（白峰クリニック院長・精神保健指定医・精神科専門医）
山﨑聞平（埼玉県立精神医療センター依存症病棟医長・精神保健指定医）
山下悠毅（ライフサポートクリニック院長・精神科医）
山代寛（沖縄大学健康栄養学部教授・医師・ANDOGネットワーク会長）
山田美紗子（国立精神･神経医療研究センター病院・公認心理師・臨床心理士）
山本奈生（佛教大学社会学部准教授）
山本由紀（遠藤嗜癖問題相談室長・社会福祉士・精神保健福祉士）
湯本洋介（久里浜医療センター医師・精神保健指定医）
横田敏（福祉事務所職員）
横光健吾（川崎医療福祉大学医療福祉学部助教・博士（臨床心理学）・公認心理師・臨床心理士）
吉田有江（依存症回復支援施設職員・精神保健福祉士）
吉谷優子（日本赤十字北海道看護大学講師（精神看護学領域））
吉野直樹（若宮病院・看護師）
米山奈奈子（秋田大学大学院医学系研究科 保健学専攻看護学講座 精神保健看護学分野教授）
和田一郎（花園大学社会福祉学部教授）