アクティビティー

今こそもっとつながろう 認定NPO法人ぷれいす東京 2019年度活動報告会から

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が日常生活に深い影を落とす中、6月下旬、ぷれいす東京2019年度活動報告会がオンラインで開かれた。ぷれいす東京事務所の他、報告者の拠点をリモートアプリでつなぎ、動画中継するという初めての試みだ。各部門の報告では、相談者の背景を考慮した多彩なプログラムが紹介されるとともに、地方在住の若年層や医療弱者へのアプローチについて考えさせられる機会となった。また、医師や飲食店経営者ら各方面で活躍する4名を招いたトークコーナーでは、目まぐるしく変化する地域における喫緊の課題を分かち合った。
(YouTube動画は こちら。)

部門報告

毎日つながるホットライン、相談者に寄り添う

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ホットライン部門では、東京都から委託された「東京都HIV/エイズ電話相談」の実施日時が、従来の金曜日夜間・土曜日曜に加えて、1月からは、平日の12時から21時までが加わり、大幅に増えることとなった。「ぷれいす東京HIV/エイズ電話相談」と合わせて1週間絶え間なくホットラインがつながるようになり、より相談しやすい環境が整ったと言える。相談時間が拡充されるのと時期を同じくして、新型コロナウイルス感染症が国内でも広がり始め「HIV検査を受けたい時に受けられない」という相談が多く寄せられた。従来であれば、匿名、無料で、いつでも受けられるはずのHIV検査だが、休止している保健所が多かったので、この期間も検査を継続していた南新宿検査・相談室や多摩地区など特定の保健所などを紹介して対応したという。

相談員が気がかりに思った点は、若者への性教育と外国人の相談窓口についてだ。3月は10代、20代からの相談が格段に増えたものの「コンドームの役割を知らなかったり、誤ったHIVの知識を持っていたり、女性器の正式名称を知らなかったり」する例が散見されたそうだ。妊娠の可能性など、HIV感染不安以外の相談に対しては、適切な窓口につなぐよう配慮したという。また、日本語が堪能な外国人からの相談が多い反面、意思疎通の難しい外国人は、支援の枠組みからもれているのではないかと危惧していた。

一方、パンデミックという想像もつかない事態に休止する電話相談機関もある中、一貫して開いていることの重要性は計り知れない。元々全国から相談が寄せられるホットラインだが、「あちこち探してやっとつながった」と安堵する地方の相談者もいた。

Gフレ、SOGI(性的指向、性自認)をリスペクトし広範な相談内容に応える

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ゲイによるゲイコミュニティのための支援、啓発活動を行っている「Gay Friends For AIDS(Gフレ)」部門の電話相談では、異性愛者の利用もあったが、本来相談対象外なので、必要最低限の対応をしたという。性風俗店を利用したことで不安になっている相談者には、感染リスクがある行為などHIVの基本知識を伝えるようにしていた。同性愛者の多くはHIVについてすでに学んでおり、相談内容は、陽性と分かってからの生活、仕事、パートナーを含めた人間関係などが多かった。
報告したヒサシさんは、セクシュアリティに関する相談や、地方在住の10代への対応には特に慎重になるという。前者は、全ての性カテゴリーへの配慮や知識を要し、後者は、悩みを分かち合える場所が限られる土地では、相談者の過ごし方や友人の存在などが後々まで気にかかるそうだ。

直接メッセージ届けたいが…、工夫が必要なこれからのイベント

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「U=U」や「Living Together」の考え方を広く伝えてきた「Gay Friends For AIDS(Gフレ)」のイベント活動は、今夏以降、開催方法や参加人数が制限され大きく様変わりしそうだ。2019年の東京レインボープライドでは、陽性者の声を展示したメッセージ性の高いブースを出し、3年ぶりにHIVをテーマに掲げたフロートが東京・渋谷の街を彩った。また、国立国際医療研究センターで行われた「Gay Men’s Chorus for TOKYO AIDS WEEKS 2019」では、入院患者やご家族・見舞い客が聞き入る中、のびのある歌声を吹き抜けのロビーに響き渡らせた。

担当したsakuraさんは、「今後のイベント開催は未定だが、直接話す機会を大事に、コロナ禍でも工夫してメッセージを届けたい」と話していた。

グループ・ミーティングでつながるHIV陽性者たち

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陽性者、そのパートナー、家族のためのグループ・プログラムを実施するとともに、参加者のニーズに応えて新しいプログラムを企画しているネスト・プログラム。この数年の自然災害による中止に加え、2月以降コロナ感染拡大で中止やオンライン開催を余儀なくされている。それでも、2019年度は117回開催、参加人数はのべ961人と、例年通り、のべ1,000人前後で推移した。ネスト・プログラムのプロジェクトは、グループ・ミーティング、学習会、交流会の3つに分けられる。グループ・ミーティングは、感染がわかって6ヶ月以内の新陽性者、異性愛者の男女、40代以上の男性陽性者、30代以下の男性陽性者、女性陽性者など、いずれかに当てはまるグループに分けてミーティングを設定している。また神奈川県川崎市や群馬県高崎市ではサテライト・ミーティングも開かれた。

専門家を招いての学習会、職業別で当事者の経験を分かち合う交流会も企画。治療の進歩でHIV陽性者も長く生きることが可能になった昨今では、とりわけ就労問題に関心が集まることから、積極的に陽性者を雇用しようとしている企業の参加によるセミナーも開催している。このほか、新たに4つ目のカテゴリーを加え、中国語を話す陽性者と英語を話す陽性者のグループミーティングなどが開催された。

コーディネーターの加藤さん・佐藤さんによると、ネスト・プログラム参加者が後にネスト・プログラムに限らずスタッフとして関わることが多いようだ。現在、プログラムの運営や進行を担う陽性者のピア・ファシリテーターは15人。このことは、ネスト・プログラムが、陽性者たちの社会との関わり方、新たな目的、自分にしかできないことを見出す、文字通り育みの「巣(ネスト)」になっていることを意味している。

HIV陽性者のための直接支援バディ、電話コミュニケーションが増える

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トレーニングを受けたボランティアがクライアントの要望に合わせて派遣されるバディ部門。2019年度のボランティア登録は65人、派遣件数は216件だった。23人いるクライアントの多くは単身世帯で、HIVに重ねて半身麻痺、視覚障害、精神疾患など何らかの障害を持つ人が多い。自宅に派遣されたボランティアスタッフは、通常、外出介助、家事援助や通院の付き添い,
電話によるコミュニケーションなどを担う。その他、引越し手伝いもあったが、3月以降は外出自粛で依頼を取り消すクライアントもいて、電話によるコミュニケーションが増えているようだ。新型コロナの影響で、3月から5月にかけて派遣中止が続いている。2010年からボランティアを続けている松山さんの活動の一端を見てみよう。同年10月から現在まで、同じクライアントのもとに月1回のペースで通っている。60代男性で半身麻痺があるが、依頼の目的は主に会話。一緒にお菓子を食べながら近況を語り合い、好きなフィギュアスケートの話題に花を咲かしていて、活動はもうすぐ10年になるという。

「確認検査待ち」の不安を受け止める

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次に、厚労省から委託された陽性者や周囲の人のための相談サービスを見てみたい。この事業にはフリーダイヤルによる電話相談のほか、対面相談、受刑者のための書面相談がある。電話による相談件数は1736件で、全体の約85%がHIV陽性者当人からだ。週1回だが陽性者の相談員が対応する時間枠があり、相談件数の約12.5%の138件にのぼる。相談内容は、周囲に打ち明けていない陽性者が定期連絡や通院報告として利用することが最も多く、次いで、心理や精神状態、生活全般についての相談と続いている。確認検査待ちの相談者の動揺や不安も見過ごせない。一般医療の術前検査や妊娠初期の検査、また体調不良の原因究明のためのスクリーニング検査で確認検査待ちとなった人の中には、予期せぬ結果にパニックになることもあるそうだ。

外国人からの相談は、パンデミックの影響を受けていることが明らかにわかる。1〜2月は帰国できない旅行者、3〜5月は母国の医療機関で治療をしていた日本在住者など、HIV治療薬の調達に関する緊急相談が相次ぎ、日本の医療や福祉の利用は難しいと感じ、アクセスしないでいた人の多さに気付かされた。

健康と生活調査発表、第1回から変わらぬ「心の問題」

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最後に、研究・研修部門で、埼玉県立大学の若林チヒロさんが「HIV陽性者の健康と生活調査」の途中経過を報告した。調査は第一回が2003年、その後2008年、2013年と続き、今回は4回目。国立国際医療研究センターエイズ治療・研究開発センター(ACC)や全国の拠点病院など8施設と2診療所で約2550人を対象に、アンケート調査を行った。回収率は6割。調査内容は、居住地域や世帯情報、現在の健康状態など基本情報から、受診状況、就労環境、人間関係まで10項目に及んでいる。

対象者の平均年齢が上がっていることを背景に、新たに「高齢期の生活」を調査項目に加えた。2003年では35.7歳だったが今回は48.1歳となり、65歳以上の割合も0.4%から 9.6%と上昇している。

2003年から調査を重ねるたびに、体内の免疫機能の重要な指針となるCD4細胞数が500以上を有する人の割合は増え、通院頻度も3か月以上に1回が7割を占めている。若林さんは、健康状態が改善した結果のように見えるが、通院頻度については、理由や生活状況など丁寧に見ていく必要があると話した。

HIVに関する情報については、85.6%が、治療している陽性者の余命は一般人と変わりないことを知っているのに対し、U=U(ウイルス検出限界以下であれば他者にSEXで感染しない)やPrEP(HIV曝露前予防)については、それぞれ55.3%、 43.1%に留まった。さらなる周知が必要と思われる。

うつ・不安障害のスクリーニング検査「K6調査票」を用いての調査は、過去3回と同じく高得点者が12%以上だった。高得点ほど精神的な健康状態が悪いことになる。また、周囲へ病名を伝えている人数について、17.4%の人が医療関係者以外には誰にも病名を伝えていなかった。
若林さんは、この数字を多いと見るか少ないと見るか解釈の違いがあると断りつつ、これまでの調査と変わらず一定数が心の健康状態が芳しくないこと、2割の人が誰にも病名を伝えていないことを問題視していた。調査結果のさらなる分析が待たれるところだ。

 

トークコーナー「新型コロナのコミュニティへのインパクト」

新型コロナは、健康を害するだけでなく、人々の行動や生活様式、倫理観を大きく変えつつある。日本に暮らす病を抱えた外国人や住まいを失ったネットカフェ住民に、どのような支援が届けばコロナ禍を乗り切れるのか。トークコーナーでは、神奈川県の港町診療所医師・沢田貴志さん、つくろい東京ファンド代表・稲葉剛さん、新宿二丁目振興会会長・TOSHI(玉城利常)さん、SWASH代表・要友紀子さんの4名が、外国人、生活困窮者、ゲイタウン、セックスワーカーの置かれた切迫した状況について語った。

帰国できないとHIV治療薬が底をつく、日本の医療に頼れない外国人

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外国人が多く来院する神奈川県横浜市の診療所で内科医をしている沢田貴志さんは、エイズパニックに陥った90年代から一貫してHIV陽性の外国人の診療に携わり、アジアのエイズ会議で交流を深めた海外のNGOを通じて、日本にいる外国人の相談が沢田さんのもとに舞い込むようになった。「薬が切れそうという緊急相談が1月からとても多い。」と沢田さん。薬に関する相談を持ち込む外国人は3つのグループに分けられるという。1つ目のグループは、旅行で来日した観光客。世界各国で都市封鎖措置が敷かれた結果、日本に足止めされ、薬の持ち合わせがなくなるケースだ。1月は中国、2、3月は他のアジアの国々からの相談が相次いだ。

「どうしてそんなに慌てるかというと、日本と治療薬が違うから。日本では10数年前に使っていた薬で入手が難しい。その上、抗レトロウイルス剤は、世界中でほぼ無料で提供されているにもかかわらず、健康保険のない旅行者は15万円もの大金を払わなくてはならない。」

それでも観光客の問題はまだ想定範囲内だったという。沢田さんが意外に思ったのは、2つ目のグループ、日本の永住ビザや、3年ごとの定住ビザを保有している外国人だ。このグループは、母国から薬を取り寄せたり、定期的に帰国して調達していた。

アクセスしづらい日本の医療、言葉の壁とプライバシー保護に不安

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外国人が日本の病院にかかることを阻む理由は何か。「1つには言葉の壁。もう1つはプライバシーの問題。さらに、HIV治療費の助成を受けるには、役所で障害認定の申請をし、自立支援医療(医療費助成)の手続きをしなければならないが、時間がかかる上に、過去のデータがないと4週間をあけて2回の検査をしなくてはならない。」と沢田さん。そして、3つ目は、やはり海外から薬を取り寄せていた転勤で来日した外国人だ。「3つのグループを通して言えることは、外国人にとって日本の医療は使いづらいということ。HIV治療には、しっかりしたコミュニケーションが必須だが、言葉の支援が少なく、英語以外のアジアの多様な言語に対応しきれていない。」

しかし、日本で薬が調達できても一件落着とはいかない場合がしばしばあるそうだ。新型コロナ発生前後に仕事で来日した外国人の中には、仕事が始まらず収入がないまま、打ち切りになり帰国した人もいる。人材派遣会社で通訳として働いていた外国人は、解雇される側の人に対応するうちに精神的に疲れ果ててしまい、会社を辞めた。

「毎日借金取りに追われているような気持ち」でHIV治療薬を調達していた沢田さんだが、関西や中部の拠点病院が関東以外の患者の相談に応じてくれたり、同じ出身国で集まる日本の患者会が、母国のソーシャルワーカーに橋渡ししてくれたりと、陽性者のネットワークに助けられたという。

生命脅かす住まいの問題、コロナ禍の生活困窮者支援

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コロナ感染拡大は「もう1つの緊急事態」を招いた。東京で住まいを失った生活困窮者を支える「一般社団法人つくろい東京ファンド」代表の稲葉剛さんは、感染が拡大する中での支援現場を「まるで野戦病院」と例える。仕事も住まいも一度に失ってしまうことは、新型コロナ感染症と同じように命を揺るがしかねない。稲葉さんら同ファンドの支援者は迅速な個別対応に努めた。4月8日、7都府県に緊急事態宣言が出されると、ネットカフェに休業要請が出され、行き場を失う人が続出した。東京都の調査によると、ネットカフェ生活者は約4000人。同ファンドも7日夜から緊急支援のために少人数の出動チームを立ち上げた。

「感染症リスクを考えると、リーマンショック時の年越し派遣村のような大規模な宿泊支援はできない」と稲葉さんは、メールを駆使しながらの対応に追われた。まずSOSメールを受信すると、すぐに返信して状況確認をする。路上生活をせざるを得ない緊急時には、相手の着ている服など特徴を聞き出し最寄駅で待ち合わせる。聞き取り後、宿泊費など必要と思われる支援方法を提案する。
相談者の多くは、フリーランスか非正規労働者で、2割が女性だ。連絡手段の携帯電話メールもフリーWi-Fiの場所でしか使えない場合がほとんど。やっとの思いで出したメールには「携帯も止められ不安でいっぱいです。もう死んだ方が楽かなと思ってしまいます。」と書かれたものもあった。

住まいは人権、「ハウジングファースト」を実践

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「これまでの施設ファーストの支援では、貧困ビジネスと呼ばれるような劣悪な環境が多く、相部屋に馴染めずに路上に戻る人が後を絶たなかった。」
稲葉さんは、「住まいは人権である」という考えから「脱施設」型の支援を重視している。空き家や空き室を借り上げた個室型シェルターは、6年前に7室からスタートし、現在は50室に増えた。住まいの支援を求める人には、セクシュアルマイノリティも少なくない。稲葉さんが相談役として関わる「LGBTハウジングファーストを考える会・東京」が、LGBTを対象に仕事や住まいに関する緊急アンケート調査を行ったところ、回答者のうち3割が「仕事や収入を失い危機的な状況」にあった。同会はこの結果を踏まえ、クラウドファンディングを募り、一昨年に開設したLGBT支援ハウスの部屋を増やす予定だ。

新宿二丁目の結束力「Save The 2-chome」を世界に発信

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先のアンケート調査でも、ゲイバーなど「夜の街」に携わる人々が切迫感をつづっていたが、世界有数の東京のゲイタウン「新宿二丁目」はどうだろうか。バー「BASE」を経営し、新宿二丁目振興会の会長を務めるTOSHI(玉城利常)さんは、「夜の街とひとくくりにされて二丁目も風評被害にあっている。頑張っていることを発信したい。」と、街を挙げての取り組みを紹介した。約130店が加盟する同振興会は、これまで夏祭りや地域の瓦版発行などを手がけてきた。3月末、休業要請で収入が絶たれることに危機感を募らせたTOSHIさんらが声をかけ、振興会の枠を超えて幅広く経営者らが集まった。早速「Save The 2-chome」というタイトルでSNSグループを作ると、国や東京都が発するコロナ情報はもちろん、店を維持していくための融資や補助などの情報を共有し、新宿区に補償を求める署名活動を展開し、経営者や従業員ら合わせて749人分を新宿区に提出した。

最終的には、新宿区から期待していた反応は返ってこなかったものの、全国、海外からも集まった署名は2738人分に達した。署名活動を通して「二丁目目はよりどころ」「世界屈指のゲイシーンを守らなければ」というメッセージにTOSHIさんら経営者は励まされたという。客足は遠退いたままだが、各店が生き残りのためのリモート飲み会や前売り販売を始めたりなどそれぞれに工夫を凝らしている。
二丁目からの発信として「各方面からの応援に感謝を伝える動画」や「感染予防策を特集した動画」を公開するなどの活動も行なっている。

「二丁目はあらゆるセクシュアリティを受け入れてきた場所。二丁目目に約400店あると言われる中、「Save The 2-chome」に参加する店舗は全店という訳ではないが、参加する店舗の皆さんは自慢したいくらい自分たちで街を守ろうという意識が強い。だからこそ、この街で店を続けたい。ここから騒ぎを起こしたくない。いろんな人がいるが、根底にある思いは一緒」と、TOSHIさん。今できることを模索する日々だ。

セックスワーカーを守れるか、大阪・飛田新地のコロナ対策

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セックスワーカーの安全と健康のために活動する民間団体「SWASH」代表の要友紀子さんからは、大阪・西成区飛田新地と東京・新宿区歌舞伎町の取り組みが伝えられ、表面的なニュースだけではうかがい知れない洞察を得た。要さんによると、飛田新地では全店舗160店以上が2週間おきに新型コロナウイルスの抗体検査を実施しているという。飛田新地料理組合が独自に行っている検査で、自治体は関与していない。一見したところ、感染を阻止し、従業員と客を守るための一致団結した取り組みのように思われる。

これまでのところ検査結果は同組合で保持され公表されることはないが、要さんには、今後の個人情報の取り扱いに従業員から不安の声が聞こえてくるという。当初は「インフォームドコンセント」がなく、検査キットの精度や「偽陰性」の確率についての説明などがなかったそうだ。

「飛田新地には1000人以上のセックスワーカーがいるが、ここが特殊なのは、実質は風俗店でも飲食店のくくりになること。料理組合と言っているくらいで、飲食店として休業要請の協力金を受け取れる。飛田新地は昨年のG20(20か国・地域首脳会議)をきっかけに、クリーンなイメージを強調し始めたように映るが、今後も行政に協力して社会貢献をアピールしていこうと考えているのかもしれない。」
要さんは、万が一コロナ感染者が出た場合に、セックスワーカーのプライバシーや安全が損なわれることがないか、今しばらく注視していく考えだ。

クラスター報道のトラウマ、新宿・歌舞伎町

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また、メディアのクラスター報道のあり方にも焦点が当てられた。東京・歌舞伎町では、ホストクラブやキャバクラなど、いわゆる「接待を伴う飲食店」も参加してガイドラインを策定し、6月に立ち上げた「新宿区繁華街コロナ対策連絡会」で、区と事業者が感染拡大防止と情報共有に努めている。だが、お店で1人でも感染者が発生すると、店の全従業員を濃厚接触者と見なして集団検査が実施され、第2波のエピセンターかのような報道が続いた。「協力した結果がこれなのか。協力したらそうなるのか。」と別の意味での動揺が同業者に広がったという。要さんは、現場で踏ん張る当事者の意見が行政の施策に反映されるよう、小さな声をすくい取るような報道を期待している。

「つながるチャンス」を生かした活動を

全国の新型コロナウイルス感染者数は次々と最多人数を更新し、収束の目処は立たない。4者4様の報告は、差し迫った課題を可視化する一方、互いの領域を補いながらできることについて多くのヒントが詰まっていたように思う。5月に厚労省に提出された、感染者の人権への配慮を求める「新型コロナウイルス感染症に対する要望書」は、ぷれいす東京を含む全国のNGOや研究者ら32組織・個人で作り上げた。「危機はみんながつながるチャンス(ぷれいす東京・生島嗣)」を合言葉に、さらなる連携を深めたい。

ぷれいす東京チャンネルの登録も、ぜひ、よろしくお願いします。

感想文

「多様な人々をめぐる想像力について気づかされた報告会」家族はMtoX@福岡

家族の隣で気軽に見始めた報告会でしたが、報告の中から、プログラムを支えるスタッフの姿が想像されて、見終わる頃には清々しい気分になっていました。
ユニークな活動を続けるために、人を育てる仕組みもあったのだろうと想像します。機会があれば、HIV/エイズというセンシティブな内容の相談を電話で受ける方や、介助が必要な方に直接関わる方、きめ細かにネスト・プログラムを実施する方など、スキルとモチベーションを兼ね備えたスタッフをどのように養成されたのか伺ってみたいと思いました。
第二部のトークショーでは、2月以降のコロナウイルス感染拡大の中、外国人、貧困、新宿二丁目、セックスワーカーの方々が、どのような影響を受けていたかを知ることができました。同時に、今の社会に生きる一人としての私が、多様な人々に思いをよせる想像力がなかった事に気づかされました。
これまで「ぷれいす東京」の活動詳細まで知ることがありませんでした。オンライン開催のおかげで、遠方にいながらでも報告会を聞くことができてよかったです。ありがとうございました。

 

2019年度活動報告会 YouTube動画

(前半)部門報告

 

(後半)トーク「新型コロナのコミュニティへのインパクト〜現場からの証言」

2019年度活動報告書・活動実績

2019年度活動報告会概要

2019年度活動報告会

■日 時 2020年6月27日(土)14:00~16:30

■YouTubeライブ配信 「ぷれいす東京チャンネル」

■プログラム

  • 部門報告
    ホットライン / Gay Friends for AIDS / バディ / ネスト / HIV陽性者への相談サービス / 研究・研修
  • トークコーナー 「新型コロナのコミュニティへのインパクト〜現場からの証言」
    【ゲスト】
    ・外国人:沢田 貴志さん(港町診療所)
    ・貧 困:稲葉 剛さん(つくろい東京ファンド/LGBT支援ハウス)
    ・ゲイタウン:TOSHIさん(ゲイバーBase店主/ 新宿二丁目振興会会長)
    ・セックスワーカー:要 友紀子さん(SWASH)

■視聴回数 270回

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