第38回日本エイズ学会学術集会・総会報告・参加感想
第38回日本エイズ学会学術集会・総会(学会長:岩橋恒太 特定非営利活動法人akta 理事長)が、2024年11月28日(木)~11月30日(土)に京王プラザホテル(東京都新宿区)で現地開催+オンデマンド(一部ライブ)配信のハイブリッド形式で開催されました。
学会長と学会に参加した方からの感想をお届けします。また、エイズ学会との共催で、5年ぶりに開催した合唱ミニコンサートの報告と感想をTOKYO AIDS WEEKS 2024のページ、および、TOKYO AIDS WEEKSのサイトに掲載したので、ぜひご覧ください。
第38回日本エイズ学会感想文
「『HIVに関わるすべてのコミュニティをエンパワー』が目指したもの」岩橋恒太(第38回日本エイズ学会学術集会・総会 会長 / 特定非営利活動法人akta 理事長)
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第38回日本エイズ学会は、会長を務められた生島さんの大会から約7年ぶりに、社会系、かつCBOの大会長として私が務めさせていただき、多くの方の温かいご支援をいただきながら無事終了することができました。偉大な先達の方々から受け継いだエイズ学会のバトンを握り、実は最年少大会長(!)という立場で新しい視点を取り入れつつ、次世代につなぐ、良い意味での世代交代ができることを示せた大会にできたのではないかと思います。
今回の学会では、社会・臨床・基礎・国際の4分野の若手の部門長を中心に緊密に連携し、HIVに関わるすべての人々をエンパワーすることを目指しました。エイズ対策においてコミュニティが主導することの重要性を改めて発信するとともに、日本でのPrEP実装やコンビネーション予防の推進といった課題に向けた議論が行われました。また、CBOの役割についても新たな視点から見直す貴重な機会となりました。
特に心に残ったのは、プレナリーセッションでの、コミュニティ主導の重要性を訴えるNittaya先生のスピーチ、懇親会版Living Togetherのど自慢、そしてエンディングでのTOKYO AIDS WEEKSのコーラスです。コーラスやのど自慢では、HIV陽性者やCBOメンバーも歌やスピーチを通じて伝えてくれた、HIVと共に生きる力強いコミュニティの声に、多くの参加者が感動し、エンパワーされたのではないでしょうか。
1,700名を超える皆様のご参加に心より感謝申し上げます。この学会を通じて、コミュニティが主導する未来、そして多様なキーポピュレーションがそれぞれの力をより発揮できる場を、皆さんと共に創り上げていきたいと強く感じています。なお、この1月にダイジェストウェブムービーを公開しましたので、ぜひご覧ください。(https://youtu.be/iCTmWxa1WFw)
「妊娠、出産、エイズ学会というかけがえのない時間を過ごして」ようこ(ぷれいす東京、陽性者)
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この度エイズ学会にて、女性HIV陽性者として、感染がわかってからの人生と気持ちの変化についてお話をさせていただきました。一緒に登壇した先生方のお話は、オンタイムで妊娠出産をし、少し不安を抱えていた私にとってがんばろう!と思うことができたかけがえのない時間でした。本当に守られた環境で過ごすことができているなと感謝の思いでいっぱいになりました。私自身、早いことで感染がわかってから10年経つことに感慨深くなりました。感染がわかった時の絶望感は計り知れないものでしたが、この病気になったからこそ出会うことができた方々、できた経験がたくさんあって、本当に大切な宝物です。
今回、私や一緒に登壇した先生方の話を聞いて、少しでも、同じ病気を持った方々、妊婦の方々の希望になれたら嬉しく思います。貴重な機会をくださりありがとうございました。
「初めてのエイズ学会参加」ひかる(ボランティア)
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ぷれいす東京のボランティア研修はかなり前に受けたけど、いまだにHIVに関してよくわかっていないのをなんとかしたいと初めてエイズ学会に参加した。
塀の中にいる仲間にもお手紙を届ける「お手紙プロジェクト」も会場で宣伝したかったが、聞きたい発表が多すぎてほとんどブースにいることができなかった。会場のあちこちでぷれいすの知り合いの姿を見つけ、コミュニティが中心になって関わる学会であることを実感できた。会場には2030年に3つのゼロを達成するために何をすればよいか、皆が自分事として考える熱気に溢れていたように思う。
特に印象に残ったのは、コーラス。学会会場でコーラスを聞けるのも珍しい。全体で練習したのは4回だけというのが信じられないほど、ハーモニーが素晴らしく、手の平が痛くなるほど拍手した。十分エンパワーされた3日間だった。
「HIV啓発と偏見解消への挑戦」中野 栄二(ボランティア・スタッフ)
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私は第38回日本エイズ学会学術集会・総会のポジティブトークセッションでお話しする機会をいただきました。今年の学会は「HIVに関わるすべてのコミュニティをエンパワー 感染症による人々の分断を終結」というテーマのもと開催され、コミュニティの重要性について改めて考える貴重な機会となりました。
今回スピーカーとして参加することを決意したきっかけは、昨年の京都大会での出来事です。製薬メーカーの社員の方との会話の中で、「医療系学部のない中央大学の方が、なぜエイズ学会に参加されているのかと思いました」とお話いただいたことが、自分の立場からどのような発信ができるのかを深く考える契機となりました。
私のスピーチでは、性的同意の重要性や法改正がHIV陽性者に与える影響についてお話ししました。他の演題を拝聴する中で、HIVを取り巻く多様な課題や新しい知見を学び、コミュニティ主導で社会全体を支えることの重要性を強く感じました。
日本では、HIV感染を予防する方法であるPrEP(プレップ)の価格がまだ高く、必要としているすべての人に行き届いていないのが現状です。PrEPの安心・安全なアクセス改善を目指すSAP(Safe Access to PrEP)プロジェクトでは、厚生労働省や製薬メーカーに対し、PrEPを必要とする人々が確実にアクセスできる環境を整備するための署名活動( https://chng.it/GFDtqF4Fxf )が行われています。
この経験を糧に、HIVに対する偏見を和らげ、理解と支え合いが広がる社会の実現を目指して、これからも知識を深め、行動し続けていきたいと思います。
「決意と知識のUPDATE!」勝水健吾(「勇者の部屋」代表、産業カウンセラー)
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2024年11月に開催された『第38回日本エイズ学会学術集会』へ参加し、ボクは『POSITIVE TALK 2024』で登壇させて頂きました。その中では、ボクが陽性告知を受けてから変わらず存在する「HIV陽性者に対する偏見差別」についてお伝えさせていただきました。そのメカニズムに関してボクは、「行動免疫システム」「集団心理」「リアリティの欠如」という3つの観点から考えました。その中でもボク個人ができることは何か…と考えた時に「リアリティの欠如」に関してなら、ボクにできることがある!と気付きました。それは「実名でHIV陽性者であることを開示し様々な活動を行う」ということです。そしてこの『POSITIVE TALK 2024』にてそれを宣言しました!それを体現する第一歩として、学会中に多くのセッションに参加させていただき、一つのセッションにつき一題は質問をさせて頂きました。「HIV陽性者の当事者で産業カウンセラーの勝水と申します」と自己紹介をしてから。今後も、この経験を一つの羅針盤として生きていきたい、と感じています。
「演者としてはじめてのエイズ学会」瀧
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HIV陽性になり15年。何度かエイズ学会に参加させていただきましたが、私が発起人であるネスト・プログラム「異性愛者ミーティング」がスタートしてから10年以上が経過した事と、今回が東京開催のエイズ学会であった事もあり、ここは是非ともいままでの実績を報告させていただこうとぷれいす東京に提案し実現しました。
発表までは対面で事前に1回、当日1回、あと複数回メールで私と同じく異性愛者ミーティングのピア・ファシリテーターをされてる方と、ぷれいす東京代表の生島さんと打ち合わせをし、学会三日目の11月30日に望みました。
当日は午前8時20分から発表でしたが、朝早い時間にもかかわらず会場にはたくさんの方がいらっしゃいました。
主に異性愛者ミーティングの年度別参加人数の状況や参加者の声、ネスト・プログラムの拡散のお願いを報告させていただきました。初めての演者ということで少し緊張はしましたが、私が発表したのはプログラムの中で3番目ということもあり、前に発表されてる方々の様子を見ることができたため、要領がつかめ助かりました。
発表後、座長から私の発表に対し質問していただきました。会場内からも質問が来るであろうと思いましたが無かったのが残念でしたが、陽性者である私自身が異性愛者ミーティングの実績報告を学会で発表できたことは異性愛者ミーティングが開催されているという事を広めるあらたな布石になったことは間違いないと思うので、今後に期待したいと考えます。
最後に発表にあたり、準備や助言をいただいた皆様に感謝いたします。ありがとうございました。
「これからのエイズ学会、希望と課題」 村松 崇(東京医科大学病院 臨床検査医学科)
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日本エイズ学会、お疲れ様でした。生島さんをはじめ、ぷれいすの皆さんにも学会や関連イベントで協力いただきありがとうございました。今年は臨床系のプログラム部門長を担当させてもらい、企画者側として新しい世代の人たちをキャスティングして、いつもと違う学会になったと思います。HIV陽性女性の企画などもできて満足しています。PrEPシンポジウムも企画させてもらいましたが、課題も多い領域で、これからの課題を認識しました。各領域が連携して、日本でのPrEPの展開について協力したり、議論を深めていければ良いかと思います。新しい領域に進んでいくうえでは、皆が初心者であり、戸惑ったり間違えることも多いです。先人の経験を共有して活かすことや、お互いにサポートして、成長していく関係を作っていくことが大切だと思っています。エイズ学会という場で、それを進めていける手応えを感じました。来年は熊本でお会いしましょう!
「『3つの0の達成のために―オーストラリアのエイズ予防啓発の現在の活動から、日本のこれからの予防、啓発を考える』に参加して」だいすけあ(ぷれいす東京SHプロジェクトコーディネーター)
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オーストラリアACONの活動は魅力的だ。ピアスタッフによるHIV検査、移民や女性を意識したポスター、象徴的なキーワードによる啓発。予算の規模も日本では考えられない額だった。しかし、オーストラリアのコミュニティ活動も一足飛びにここまでできたわけでない。一つ一つの活動を積み上げながら、必要な予算とシステムをコミュニティ主導で獲得してきた結果である。会場からも登壇者からも「羨ましい」の声があがり、厚生労働省専門官への「お願い」もあった。わたしたちは今、日本でコミュニティ主導の啓発について考える時に来ている。現在のMSM偏重の啓発から、transpeopleや女性、一般市民むけに開かれた啓発により「自分事」として考えることができる人を増やす必要がある。そのためにはHIV陽性者をポスターにする、ピアスタッフによる検査や相談のあり方を検討する、ガバメントにコミュニティから提言をする、などが考えられる。2025年の啓発は都市部以外が注目される。各地のコミュニティセンターや保健所、拠点病院がこれまで以上にタッグを組み、地域らしさを出しながら当事者性を高める啓発が求められる。このような示唆を与えてくれた意義深い、盛り上がりのあるシンポジウムだった。
「未来を切り拓くこと」大島 岳(ぷれいす東京 ネスト・プログラム コーディネーター、明治大学情報コミュニケーション学部)
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司会進行を含め4本の発表を行いました。そのうち最初のセッション「HIVとともに生きる人はどこまで強くならなければならないのか?」は加藤力也さんの出演もあり印象深いものとなりました。治療法の進展により、現在ではU=Uが科学的に支持される一方、まだ一般では知られていないという課題があります。これに対し、陽性者は果たして自身のHIVを開示してまで立ち向かわなければならないのか。高齢化に伴うがんや生活習慣病の予防や早期発見など不確かな未来に対し、すべて自身で情報を得て選択しなければならないのか。HIVとともに生きる未来について具体的な議論を行いました。U=Uを、うつさないという他者基準ではなく、well-being(より良く生きること)の一つの達成手段として読み替えることで、自己責任ではなくケアのコミュニティを築き不確かな未来を切り拓いていく道筋について有意義な議論を交わすことができました。これまでのぷれいす東京の30年を踏まえたうえで、次の30年を一緒に築いていきましょう。
「第38回 日本エイズ学会学術集会の発表を通じて」保坂嘉成(西武文理大学、ぷれいす東京Sexual Healthプロジェクト)
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今回、日本エイズ学会で発表の機会をいただき、「アディクション・ぽーと」を中心とした研究成果を共有できたことは大変光栄でした。発表を通じて、多くの専門家や関係者の皆様と有意義な議論を交わすことができ、特にLGBTQ+コミュニティの抱える依存症支援に関する多様な視点を学ぶ貴重な機会となりました。
個人的な感想として、学会を通じて改めてピアサポートの効果と課題の重要性を実感しました。私たちが行う支援活動が、多くの当事者にとって安心と成長の場となっていることを再確認するとともに、活動の持続可能性や広報の必要性を痛感しました。今後は、研究成果をより広く伝え、参加者の多様なニーズに応えられる支援体制の強化を目指していきたいと考えています。
最後に、本研究の活動を支え、今回の発表にも多大なご協力をいただいた認定NPO法人ぷれいす東京の皆様に心より感謝申し上げます。
「“ゼロ”元年」ふくP(ぷれいす相談員)
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馴染み深いaktaの岩橋恒太さんが大会長を務めた学術集会は、小春日和の新宿・京王プラザにて。
28版となる「治療の手引き」のシンポジウムは、昨年同様学術集会全体を総括するような流れでした。まず、梅毒やクラミジアなど細菌性の性感染症に対するDOXY-PEP(ドキシサイクリンを行為の72時間以内に服用する暴露後予防)については、HIVのPrEP/PEPの需要急増と相まって、性別を問わず注目され、国内での指針作りが急務とのこと。厚労科研版は既に公開されています。
また、第二世代のインテグラーゼ阻害剤の高い抗ウイルス効果により、高齢化が進む陽性者にとって問題として残るのは、糖尿病や高血圧などの代謝性疾患の管理であり、全科的な対応が必然とのこと。その際、メンタルサポートも忘れてはならないとの発言がありました。
上記薬剤による新しい2剤療法には、B型肝炎ウイルス(HBV)の重複感染対策効果がなく、同療法による長時間作用型注射剤への切り替えの際、HBV感染についての慎重な判断が求められる場合があるとのこと。
UNAIDS(国連合同エイズ計画)が提唱する2030年までにエイズをゼロにという目標に到達する為には、予防も検査も治療も、基礎も臨床も社会も、行政も地域も当事者も、今ここからがスタートだと背中を押されました。
岩橋さん、そしてaktaの皆様、本当にお疲れ様でした。
“The End of AIDS” John Howard, King’s College London/「エイズの終焉」ジョン・ハワード(キングス・カレッジ・ロンドン)
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Some envision it. Many devote their life’s work to it. After the AIDS38 conference in Tokyo, I genuinely believe it. The end of AIDS can happen. Soon.
Before arriving, reading colourful informative street banners, I thought about the huge collaborative efforts required, locally and globally. Of course, I reflected on friends’ horrific deaths in their 20s and 30s, in the 1980s and early 90s, before antiretrovirals. Again, I suffered survivor’s guilt.
Again, I became enraged over Reagan-Thatcher indifference that amounted to genocidal neglect of marginalized peoples, even as Australia had followed the science and their community-based organizations had made valiant strides. Then I marched to the AIDS38 panels, determined to focus on the future. Without AIDS.
In his thorough compelling presentation, Dr Chien-Ching Hung from Taiwan showed how a harm reduction program there (including needle exchange) decreased new infections among IV drug users to nearly zero. Most impressive, he demonstrated how four steps had dramatically cut Taiwan’s overall numbers of new infections: a treat-all policy, PrEP, rapid ART initiation, and then same-day ART initiation. Because “the science is clear” that U=U, he insisted, we can achieve “zero transmission.”
In her hopeful upbeat presentation, Dr. Nittaya Phanuphak from Thailand fully convinced me that these sorts of policies indeed will eradicate AIDS, if healthcare professionals “let communities lead.” That is, the problem of AIDS can be solved, if “the ‘people’ design and co-deliver their own services,” as with Thailand’s trans-led integrated program of hormone therapy, sexual health, and mental health. As preconditions, she cautioned, nations must commit resources, outdated laws must change (e.g., Japan must decriminalise sex work), and Big Pharma must lower prices.
Unfortunately, resources might dry up and outdated laws might be reinstated, as a lunatic American President attempts to rule by fiat. Already, he has issued executive orders meant to erase queer, trans, intersex, and nonbinary lives and to defund crucial global institutions such as the WHO and vital initiatives such as PEPFAR. Mercifully, responsible jurists, numerous NPOs, and battle-tested HIV-AIDS activists are rising up against this new wave of fascism.
AIDS38 exhibit hall booths and poster displays encouraged lively discussions over tea, coffee, and multicoloured drinks. Especially attractive and engaging for me were the booths staffed by akta, the Nakamura Keith Haring collection, and—foremost, naturally—Place Tokyo!
Two events reminded me that deadly serious hard work can and should be fun. The Tokyo AIDS Weeks Choir concert was outstanding, with 60+ singers, accompanist, and conductor adding to a decades-long chain of performances by choruses around the word. On World AIDS Day, Not Alone Cafe x Red Ribbon brought together drag artists, activists, and audiences from Japan, Mongolia, and beyond for an incredibly good time of sexy celebration. For there is much to celebrate, even as we commemorate lives lost.
Yes, the end of AIDS is possible. Why not join the effort? It’s now time for the final push to the finish!
(日本語機械翻訳)
ある人はそれを思い描き、多くの人が人生をかけて取り組んでいる。東京でのAIDS38学会の後、私は本当に信じるようになった。エイズの終焉は実現可能だ。近いうちに。
会場に到着する前に、カラフルな情報満載のストリートバナーを読みながら、私は地域的にも世界的にも求められる膨大な共同作業について考えた。もちろん、抗レトロウイルス薬が登場する前、1980年代から90年代初頭に、20代・30代で亡くなった友人たちの悲惨な死を思い出し、再び生き残った者の罪悪感に苛まれた。
そしてまた、当時のレーガン・サッチャー政権の無関心さが、周縁化された人々に対するジェノサイド的な放置に等しかったことに、再び怒りを覚えた。一方でオーストラリアは科学に従い、地域社会に根ざした組織が勇敢な努力を重ねていた。私は怒りを胸に、エイズのない未来を見据えてAIDS38のパネルへ向かった。
台湾のChien-Ching Hung医師は、説得力のあるプレゼンテーションの中で、同国のハームリダクションプログラム(注射針交換を含む)が、薬物注射使用者の間での新規感染をほぼゼロにまで減少させたことを示した。最も印象的だったのは、4つのステップによって台湾の全体的な新規感染数が劇的に減少したことを実証したことだ。全患者治療方針、PrEP、迅速なARTの開始、そして同日ART開始。「科学は明確だ」と彼は主張し、「U=U」であるからこそ「ゼロ感染」を達成できると述べた。
タイのNittaya Phanuphak医師は、希望に満ちた前向きな発表の中で、医療専門家が「コミュニティに主導権を与える」ならば、このような政策でエイズは根絶できると私を完全に納得させた。例えば、タイのトランスジェンダー・コミュニティが主導する医療サービス(ホルモン治療、セクシュアル・ヘルス、メンタル・ヘルスを統合したプログラム)のように、「人々」が自分たちのサービスを設計し、共同で提供すれば、エイズの問題は解決できると。彼女は、その前提条件として、各国が十分な資源を投入すること、時代遅れの法律を改正すること(例えば、日本は「性産業の非犯罪化」を進めるべき)、大手製薬会社が薬価を引き下げる必要があると警告した。
残念ながら、資源は枯渇し、時代遅れの法律が再び施行される可能性がある。狂気のアメリカの大統領が独裁的に統治しようとしているからだ。彼はすでに、クィア、トランスジェンダー、インターセックス、ノンバイナリーの人々の存在を抹消しようとし、WHOやPEPFAR(米国のHIV/AIDS対策プログラム)といった国際的な重要機関への資金を削減する大統領令を出している。幸いにも、責任ある法律家、数多くのNPO、そして長年にわたり戦い続けるHIV/AIDS活動家たちが、この新たなファシズムの波に立ち向かっている。
AIDS38の展示ホールでは、お茶やコーヒー、色とりどりのドリンクを片手に活発な議論が交わされた。特に私が惹かれたのは、akta、中村キース・ヘリング・コレクション、そして何よりもぷれいす東京!のブースだった。
2つのイベントは「ものすごく真剣な活動には、楽しさも必要だ」と思い出させてくれた。TOKYO AIDS WEEKS合唱団のコンサートは素晴らしく、60人以上の歌手、伴奏者、指揮者が、世界中の合唱団が受け継いできた何十年にも渡るパフォーマンスの連鎖に加わった。世界エイズデーには、「Not Alone Café × Red Ribbon」のイベントで、日本やモンゴルをはじめとする多様な国々から、ドラァグアーティストやアクティビスト、観客が集まり、セクシーかつ華やかな祝祭を繰り広げた。亡くなった人々を追悼しつつも、祝福すべきことはたくさんある。
そう、エイズの終焉は可能だ。 この取り組みに参加しよう。今こそ、ゴールに向けた最後のひと押しの時だ!
「エンパワーされる学会を目指して」 牧原信也
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今年のエイズ学会の学術集会は、社会系から史上最年少でaktaの岩橋さんが学会長を務められました。私も初めて学会のプログラム委員を務めたのですが、少しでも力になれたかどうかは定かではありません…。
今年の学術集会は「HIVに関わるすべてのコミュニティをエンパワー」「感染症による人々の分断を集結」を掲げており、それに沿ったプログラムが色々と企画されていたと思います。私が関わったところでは、「HIVと共に生きる人はどこまで強くなければならないのか?」というテーマで、支援者と当事者の両方の方に登壇いただき、それぞれの立場から見える、強さや弱さ、求められる患者像、現実の当事者の姿、支援する側、される側の様々な意見を聞くことができました。また、その他にもHIV陽性者の自殺とメンタルヘルスを考えるシンポジウム、セックスワーカーの多様性と多言語対応を踏まえた予防啓発など、今までになかったテーマや切り口のシンポジウムが企画できていたのでははないかと思います。社会系のシンポジウムは、名古屋市立大学の金子さんがうまくまとめてくださいました。
また今年の学会では、ポスター発表を積極的に勧めていたのですが、ポスターセッションの時間では、ポスターの前で活発な議論や意見交換/情報交換が行われており、横の交流が例年よりも盛んだったのではないかと思います。エイズ学会以外では、医療従事者と関わる機会もなかなかなく、また自分以外の支援者や当事者とも交流することがないので、そうした機会があることでいろいろな意見や刺激をもらえて、エンパワーされたところもあるのではないかと思います。
それ以外にも、「POSITIVE TALK」や「メモリアルサービス」、懇親会での「Living Togeter のど自慢」など、コミュティも巻き込んだ多彩なプログラムが考えられており、いろいろな側面からHIVに触れる、考える機会になったのではないかと思います。
準備にあたって、岩橋学会長は本当に大変だったの思うのですが、素晴らしい、楽しい学会をありがとうございました。