スタッフ日記

一輪の花が咲く

今回の国際エイズ会議では、地域におけるHIV陽性者等支援のための研究班で実施した「HIV陽性者の生活と社会参加に関する調査」(くわしくは、こちらの冊子(PDF版)をご覧ください)の結果をもとに、いくしまさんらと3題の発表を行いました。他の国や地域で行われた類似の調査の発表もいくつかあり、参考になるものが多かったです。

他にも同調査の大きなテーマのひとつであるHIV陽性者の就労にかんする演題を片っ端から見てみましたが、中でも興味深かったのは、UNplus(UN System HIV Positive Staff Group)という国際連合の各機関で働くHIV陽性者のネットワークに携わる人たちによるセッション。彼ら彼女らの中には、GIPA(HIV陽性者の参画拡大)あるいはMIPA(HIV陽性者の意味のある参画)で陽性者としての立場を生かすようなポストに起用された人もいれば、HIV/AIDS対策には直接関係のないポジションで勤務していて、その中で感染がわかった人もいます。彼らがそのネットワークをつくりあげてきた経緯の紹介では、HIV/AIDSへの取り組みを行っている国連の組織内にも存在するHIVに対する差別や偏見などにも言及がありましたが、彼らが援助組織の中で自らも陽性者として働いてきた個人的な経験、さらにはフロアにいた直属の上司らが彼らからのHIV陽性のカミングアウトをどう受け止めていったのかといった語りもあり、新しい視点が示されたような、とてもいいセッションでした。

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ポスター発表とWSW向け資材など

日本国内ではあまり議論に上らないようなトピックに出会えるのも国際会議ならではです。WSW(Women who have Sex with Women/女性とセックスをする女性)をターゲットにした予防啓発や、HIV陽性のWSWへの支援(ただし、彼女たちの感染経路として推定されるのは男性との性的接触)は、情報量は少ないながらもとても興味深いものでした。

会議初日のオープニング・セッションが始まる前に開催された、テーマごとに会議全体を概観するようなセッションのうちのひとつに「女性と子供」というものもありましたが、そこで女性の多様性が議論の焦点となる場面がありました。HIV/AIDSに対し弱い立場にいる「女性」とひと口に言っても、有色人種の女性、障がいを持つ女性、高齢の女性あるいは幼い女児、貧困状態にある女性、セクシュアル・マイノリティの女性、セックスワーカーの女性、薬物使用者の女性etc.とその多様性にも幅があり、それぞれ状況が異なるということも頭に置いておきたいものです。

おーつき

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