スタッフ日記

より良いスタートって?

ウィーンからの日記に対抗して(笑)、猛暑が少しだけやわらいだ大阪からのレポートを。

感染が分かってから間もない人たちのためのグループミーティングが、関西で立ち上がり定着するようにと、この3年間こつこつと大阪通いをしてきました。多くの出会いと議論と試行錯誤があり、昨秋、ついに「ひよっこクラブ」第1期がスタート、冬には第2期、そして先週に第3期が終了したところです。昨日はスタッフのミーティングがあって、僕もアドバイザーとして参加してきたのでした。

この3年間に分かったことは、関西にはこういったプログラムに対するニーズが明らかにあり、建設的な発想を持って意欲的に関わる地元の人たちがいる。すでに活動をしている当事者団体や医療機関との信頼関係があり、地元NGOや行政とのネットワークがあり、職種を越えた個人的なつながりも色濃くある。東京で新陽性者ピア・グループ・ミーティング(PGM)が始まったときとは、異なる環境でした。当初は、NGOでの個別支援や交流スペースなど、「足りないもの」ばかりに目が向いていたのですが、どこかの時点で 「すでにあるもの」をどのように活用して進むかという発想に変わったのでした。出来ない理由を探すのではなく、やる方法を考え始めると、ものごとが動き出し、協力してくれる人が現れる。そんなダイナミックな3年間を関西の仲間たちと経験させてもらった幸運に感謝。

季節がめぐるほどに、人も顔も変わり、可能性が広がっていくのを知ったのは大きなことです。しかし、その間に僕自身はどれだけ自分の人生の歩を進めてきたのだろうかなどと考えたりもするのです。このところ、 ひたすらHIVの優先課題に取り組み、一つ一つがチャレンジの連続で、集中してがんばってきたつもりです。一方で、将来のことや、自分の幅や、大切な人たちとの関係に影響があったことも事実。ちょっと時間軸を長くとってみたり、ちょっ視野を広めにとってみたり、ちょっとだけ今の自分を客観的に見てみると、なんだか複雑な気分になります。

実は、十数年前に僕のほうから連絡を絶っていた高校時代からの付き合いの古い友人が関西にいて、今回、連絡をとって会ったのです。この十数年の無沙汰を詫び、その理由も打ち明けました。病気のことや家族のこと、連絡しようと思っていたことなども。そうだったんだー、なるほどー、謎が解けたよー・・・快活で柔軟な彼らしい反応でした。「突然音信不通になってしまって、ゴメンね」といまさらながら謝ったら、「でも、四六時中心配してたわけじゃないから」とカラッと笑い飛ばされて、なんだか軽い気分になりました。

感染を知ってからのより良いスタートをテーマとして活動してきたこの十年。僕自身も、あらためて、これからの人生のより良いスタートが切れますように。そんなこと新幹線で考えつつ、いつもよりもちょっと上等な幕の内を喰らいつつ、流れる景色をながめつつの帰路でした。

矢島 嵩

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