陽性者と家族の日記

あす拠点病院へ行く2年前の自分へ

2年前の今頃、君は検査室でHIV陽性の宣告を受け、紹介状をもらい、あした拠点病院へ行くところだと思います。宣告されてから2日間、君は普段どおり出社し平静を装っていたけど、頭の中では常にHIVのことばかり考えていましたね。この2日間ろくに眠れていないのに、今もまったく眠くならない。そんな君に、これからの治療の参考になることを願って、少し長くなるけど自分の経験を伝えておこうと思います。

まず君は朝8時の受付開始に合わせて拠点病院へ行くつもりでしたが、病院には10時半に着きます。ここ数日、ろくに睡眠もとれていないと早起きは難しかったでしょうね。そして紹介状を握りしめ受付に向かいます。「HIV感染」と書かれた紹介状を見ても表情一つ変わらない病院の人に「やっぱプロはすごいな」と感動します。

受付を済ませると、看護師さんに呼ばれ、別室で感染のきっかけやセクシャリティ、自分の性行動、現在の体調についていろいろと聞かれます。自分でも驚くほどスラスラと答えます。いや、その看護師さんがすごく優しくて、元気をもらえたからこそ、正直にすべてを話そうと思えたのです。(看護師さんは女性なので変な期待を膨らませないこと)

けど、そんな看護師さんの前でも、「相手は誰だかわからない」と、唯一嘘をつきますが。

その後、超忙しそうにしている医師が病棟から外来にすっ飛んできます。その人が君の主治医になる人です。結構飄々と、そして淡々としています。でも事務的というわけではありません。ちゃんと話を聞いてくれます。医師と患者とのちょうどいい距離感を保ってくれる先生です。2年後もその先生にお世話になっています。結構好きです。

今日はたくさん検査を受けます。血液を何本もとられ、心電図の検査を受け、尿の検査も受けます。そして最後にさっきの看護師さんがHIVに関するいろいろな資料をくれます。そして「ネット上には間違っていることもたくさん載っているから、ちゃんとした資料から正しい知識を得るように」と教えてくれます。ぜひその通りにしてください。

会計では「保険適用で」3万円と言われます。会社にばれたくないからと言って保険証を出さないなんてことはしないように。健保から会社に社員の受診歴が伝わることは絶対にないから。

その後もしばらくは1ヵ月おきに通院して、血液検査の結果を聞きながら体の状態を知ることになります。HIVに感染していること以外に問題はなく、ウイルスの量も少ないし、免疫の状態も悪くないから、そこは安心してください。また、障害者手帳の申請のこととかは、病院にソーシャルワーカーさんがいて、その人と相談できることになっています。このワーカーさんも優しい人で、安心してすべてを話せますよ。(このワーカーさんも女性です)

ちなみに、君の場合は、身体の状態がそこそこいいので、まだ治療は始まりません。正確に言うと、身体障害者の基準に身体の状態が達していないので、障害者の認定を受けられません。その状態で少なくとも丸2年過ごすことになります。すぐに治療を始められると思ってるだろうけど、そう簡単には事は運びません。でも服薬せずにいられる期間は限られています。貴重な時間を大切に過ごしてください。今月は3ヵ月に1度の通院なので、何か変化があったら教えますね。

そして、未来の僕に聞きたいのですが、お薬はいつはじまりますか。それまでに大きな体調の変化はなく、無事に過ごせていますか。主治医とは未来でもうまくやっていますか。気が向いたら、この場を借りて僕に教えてください。よろしくお願いします。

鳥前 進

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