陽性者と家族の日記

となりの宇宙人

 

年末も押し迫った大晦日に…いきなりですが…

 

「みなさんは”宇宙人”の存在を信じますか?」

 

そう問われたら、どう答えます?

 

もう40年以上もむかしのことになりますが、あるテレビ局が「COSMOS」というアメリカの科学ドキュメンタリー番組を放送しました。

番組の制作は故・カール・セーガン博士。著名な天文学者であり、のちに「コンタクト」(映画化もされました)という小説を著したSF作家としても有名です。

 

40年前はまだ一般向けのインターネットもなく、”天文学と宇宙物理学の違いは何か”すら 世界中の大半の人たちが理解していなかった時代。

当時、「COSMOS」は謎に満ちた深淵なる宇宙の姿を人々に教えてくれた、画期的で貴重な番組でした。

 

数字が苦手で、根っからの”文科系”人間を自認している僕が…なぜか「COSMOS」にはまり、やがて大のSF好きに。

セーガン博士はその後の僕の人生で、多くの時間を”科学”に触れるきっかけを作ってくれた 僕にとっての”恩人”です。

 

番組の中で、博士は視聴者にこう問いかけました。

「…これまでご紹介したように、宇宙には無数の恒星が存在し、その周囲を無数の惑星が回っています。

知的生命体が暮らし、文明を築いている星々も非常にたくさんあるはず…

 

なのにどうして、宇宙人は地球を訪れないのでしょう?

 

UFOの目撃のうわさ話ではなく…

正々堂々と”われわれは他の星から来ました、よろしく”っていう風な明確なあいさつが…

歴史が始まって以来…彼らから一度もないなんて、変ではないですか?

宇宙人はどうして地球にやって来ないのか?」

 

僕は答えに窮しましたが、博士の回答はこうでした。

 

「たぶん…この地球にわざわざやって来る必要性が…宇宙人たちにないからです」

 

地球よりももっと近くに文明が栄えている星があればそっちに行ってしまうだろうし…

たとえ、わりと近くにいたとしても…

”地球なんて まだ原始的で野蛮な星じゃん、宇宙全体のことを考えるどころか地球上の問題すら満足に解決できるレベルにないんだから 訪問する価値なんかないよね”

って思っているのかもしれない。

 

しかし、これ…他の星からの来訪者、だけの問題とは 思えなくなりました。

 

人が行動を起こす…のには…いつだって必ず なんらかの理由があります。

 

「自分は こんなにも〇〇しようと一生けん命なのに、なぜ相手は自分のことを認めてくれないんだろう」

毎日の生活の中にあるさまざまな場面で、ついつい思いがち…

でも…それは あくまで自分が下した 一方的でかたよった判断。

“自分から目線”って “自分は絶対に正しい”って疑わない うぬぼれの感覚にも通じるじゃないですか…

最初の出発点から 自分と相手のどこが違っているのか きちんと調べてからモノを言う必要がある。

そこを見落としたまま 色々なものごとを自分の都合に合わせて解釈することの危険さを 年々より深く感じています…

 

そもそも…正しい、まちがい…の2つしか選択肢がないなんて…どうよ?

 

「相手と自分は違う考え方だな、でも 共に生きていくためには最低でもこの点だけは同じ価値観を共有したいな…

そのためにはどうやって相手に近づいていこうか、心を開こうか…あるいは 相手に自分の考えに対する関心をもってもらえるだろうか」

興味を示してくれる人は、自分じゃなく、相手の方から自然と近寄って来ますよね…

近寄って来る必要性、理由があるからこそ で。

 

多様性、と口で言うのは簡単だけれども…

いちばん根っこのところから 自分以外の存在のことをきちんと理解しようとしているだろうか?

なぜ相手がそう思うのか、もしその考えが自分と違っていたとして どう対話していけばいいのか…自分のレベルを離れ 時には じっくり考える…

相手が感じている”必要性”について 手探りを重ねながらでも ”謎とき”をしようとする意思はあっただろうか

いや あるだろうか?…これがクリアできなきゃ…そもそもコミュニケーションが成り立つはずもないんじゃないか…

 

テレビの画面には 東京・渋谷の風景。カウントダウンでごった返す若者たちの姿が映し出されています。

「怖くないわけじゃないけど、議員さんだって飲んでるでしょ…なんで若者たちだけ別扱いされるのか、意味が分からない。気をつければ大丈夫なんじゃないすかね」

 

インタビューに答える学生の姿を見て 思いました。

 

彼らを非難するのは簡単だし、僕個人としては 禍中の最中のこのふるまいに 賛成はしかねます。

でも…

単純に彼を、彼らを”いさめる”だけで問題は解決するの?

われわれ大人は どれだけ周到に 彼らを説得できるだけの工夫をしてきたの?

 

今まで何十年にわたってそうだったし…少なくともこの8か月だけだって 何らかの努力はできたはずなのに…その結果がこれ、なんだとしたら…

 

誰かのせいにするだけ、責をなすりつけるだけの姿を見て “自分の行動を変えなきゃ”なんて誰が思うだろう。

必要性を理解してなきゃヒトは行動を起こさない の いちばん分かりやすい例が 実は 自分のすぐ隣にもある。そう思わずにいられません。

あいつら理解不能の宇宙人だから、と軽蔑するだけの大人こそが…現実に目を向けられない、理解していない 一番の異星人なのかもしれない…

じゃない(;´∀`) ?

 

2020年くらい…セーガン博士の言葉が強く心の中によみがえった年はありません。

はるか向こう側の世界から…博士が現在の地球の姿を見ていたら どう思うでしょう?

苦笑している?

コールドムーンの明るい光のもとで、思わず 夜空を見上げたくなります。

 

来年は…今年よりも みんなの笑顔があふれる年になりますように(^^)

 

 

なぎさのペンギン

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