陽性者と家族の日記

異人たち

去年の秋、故 山田太一さんの小説
「異人たちとの夏」が再映画化される
と聞き 公開を待ち望んできました

最初の映画化は 1988年公開の日本映画
大林宜彦監督作

孤独な中年男が、ある日偶然
数十年前に死別した若き日の両親と再会
中年の姿のまま 彼らとひと時を過ごす、
というファンタジーです

鑑賞から半年後 父を末期がんで
亡くす経験をした僕にとって
大林版は思い出が詰まった一本

35年ぶりの”再会”
新作のタイトルは「異人たち」
なんと ロンドンが舞台のイギリス映画

大林版で風間杜夫さんが演じた主人公の
設定がゲイに置き換えられているらしい…

その程度の予備知識で鑑賞したのですが
想像以上に 純粋に”クイア”な作品に
仕上がっていて ビックリしました

未見の方のため 詳細は伏せますが

主人公が少年時代に経験した心の痛みが
僕が子どもだったころに抱えていた悩みと
ほぼ同じだった 驚き

親に心配をかけたくないからこそ
“ほんとうの自分”を悟られまいと
必死に”演じ”ていた あのころの
自分が重なった

そして
すでに亡くなった両親や相方と
時々 心の中で会話している
現在の僕自身にもダブります

監督・脚本のアンドリュー・へイさんは
ゲイを公言しているクリエーター
少年時代の実体験を反映させただけでなく、
1980年代から2020年代という40年を通じ
なにが変わり なにが変わらなかったのか
彼の思いを 優しくつづっていきます

今回の中年男役には、同じくオープンリー
ゲイの俳優 アンドリュー・スコットさん

子どもの心のままで大人の体…
肉体と精神の不均衡を非常に巧みに
デリケートに表現していて 見事の一言

オリジナルに色濃くあった日本的情緒は消え、
物語のエンディングも大きく変更された点で
好みは分かれるかもしれないな

大林版の甘酸っぱいノスタルジーが好き

でも、今回の いつまでも後を引くほろ苦さも
深く心地よく 長くかみしめていたい

両親や大切な人が生きている間には
伝えられなかった気持ち

今の自分なら どうするだろう?

☆「Turn the lights back on」☆

おかえり、ビリー

☆「タイムパラドックス」☆

ここにも あの日のオレが!

なぎさのペンギン

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