陽性者と家族の日記

ちょっといい話

風邪気味で咳が辛い・・・
とはいえ、仕事は休めないし、頑張って出勤した。
運良く電車の座席が空き、座ったが背中が暖まったせいか、咳がコンコンと。
新聞で顔を覆いながらコンコン。
ハンカチで口を押さえながらコンコン。

周りを配慮して、咳も小さくするようにした。
するとしばらくして、膝の上に置いてあった新聞の上に飴玉がコロンと転がった。
と同時に「どうぞ」と耳元で小声が。
小声がした左側を見ると中年の女性が笑顔で僕を見ていた。
目が会うと、「辛そうね。これ舐めると少しは楽よ!」と。
周りを気にしながら咳をしていたけど、やはり気にさせてしまっていたのかと、
恥ずかしさがこみ上げ、顔が少し赤くなり、額に冷や汗が出たのを感じた。
また、周りの視線も見渡してしまった。とはいえ、すぐさまにお礼を言い、
お返しをとカバンの外側に入っていたガムを1つ差し出した。

女性は、ガムは食べたことないと言いながらも、「せっかくだから頂くわ!」と
笑顔で受取ってくれた。
彼女はすぐに次の駅で降りてしまったが、降りる時も、「お大事にね!」と一言。

何もつながりがない自分に、わずか10分足らずの関係で、
もう二度と会わないであろう人間に、とっさの心配りと親切。
その後、咳も落ち着き、職場に行ってもとても気持ちのいい仕事ができた。

たまたま、今日の新聞に困っている人を見て知らん振りをした人24%と出ていた。
自分はそれに入りたくはないと思った。
と同時に今度は、自分がこれから出会う人にお返しをしようと誓った。
短時間でちょっとしたことだけど、すごく幸せな一日だった。

hiroki

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