陽性者と家族の日記

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最近、職場で一緒に仕事をしている人たちが次々に海外赴任となり
日本を離れていった。

僕も短期間だが海外生活の経験があるので、当時を思い出すと
彼らがうらやましくなり、ふと外国へ戻った自分を空想してみた。

私的な意見になるけれど、僕は、日本の同性愛者にとっては
どこか別の国で暮らす方が精神的にはずっと楽ではないかと思っている。
言語や食生活のギャップがあったとして、それらを考え合わせても
不必要に自分に好奇心を抱かない人たちに囲まれている環境は
本当に貴重で、ありがたいからだ。

外国で暮らすことで、周囲は最初から距離を置いて「部外者扱い」
をしてくれる。そこで当事者である僕らは、無限の自由を手に入れる
ことができる…

と、本気で信じていた。昔は。
真実がそうではないことに気づくまで、ずいぶん時間がかかったが。

いろいろ迷ったけれど、今は、やはり日本がいい。
どんなに抑圧されても、息苦しくても、最後の最後まで日本人でありたい。
この狭い土俵の中で勝負し、答えを出すことにこそ価値があると思うのだ。
海外へはたまの旅行で行けば充分、現代には実際に外国へ行かなくても
外に目を向ける方法はいくらでもある。

40を過ぎて、日本人であることを誇りに思えるようになった僕。
日本人で、ゲイで、HIV+。
このアイデンティティを、これからもっと大切にして生きたいと思う。

なぎさのペンギン

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