ぷれいすトーク「国際エイズ会議 in 南アフリカ・ダーバン 参加報告会」報告
2016年8月31日(水)、新宿区立新宿リサイクル活動センターでぷれいすトーク「国際エイズ会議 in 南アフリカ・ダーバン 参加報告会」を開催しました。
7月18日(月)~22日(金)に、南アフリカのダーバンで開催された、第21回国際エイズ会議の参加者で、国内でHIV陽性者を対象にした数多くの調査に携わってこられた井上洋士さん(放送大学教授)、当団体の研究スタッフの大槻知子からの報告がありました。
井上さんからは、会議で発表された、いくつかのメジャーな調査研究の解説をしていただきました。90-90-90、Treat All、PrEPの発表・議論が中心的であった一方で、世界で4千万人のHIV陽性者がいるということから、当然出てくる「多様性への対応」あるいは「対応の多様性」がセッションのテーマにも表われていたという指摘もありました。その一例として、資金の問題、スティグマ低減プログラム、HIV陽性者のがん罹患、災害や戦争時の治療継続、HIVのメディア報道、ゲイ出会い系アプリとの連携などがあげられました。
大槻からは、現地ダーバンのHIV陽性者支援団体の取り組みの視察報告や、グローバル・ヴィレッジなどコミュニティ系プログラムの感想、女性の視点から見えてきたことなどを報告しました。
最後に、ぷれいす東京・生島の司会で来場者との質疑応答やトーク・セッションがあり、現地でのハプニングや裏話なども披露されました。(報告:生島、大槻)
参加者感想文
「エイズ対策は誰のためのものか?」Zona(30代/男/ゲイ)
主にゲイ・バイセクシュアル男性を対象としたHIV予防啓発活動に携わっています。いま現在、国際の場面ではどういったことが議論されているのか。そしてそれが、今後の日本のエイズ対策にどのような影響を及ぼすのかを自分なりに考えたいと思い参加しました。
WHOの掲げた『90-90-90』という目標。それに翻弄される国々と、そこに生きる人々。目標は、早くも一人歩きを始めたような印象があります。
エイズ対策とは、一体誰のためのものなのだろう?と考えました。
膨らみ続ける医療費を抑えたい政府のため?パンクしそうな患者を抱えた医療者のため?
自分の名を揚げたい研究者のため?行政予算に依存し続けるNGOのため?
それぞれの立場から、それぞれの主張があるのだろうと思います。その複雑なやりとりの裏で、今この瞬間もHIV感染は拡がっています。けれど増え続けているはずのHIV陽性者の姿は、いつまでも見えません。
報告の中にあった『PrEP=人権』という言葉は、ひとつの真実だろうと思います。多様性への対応、あるいは対応の多様性。日本も例外ではありません。
変わりゆくエイズ対策のその先に、誰もが暮らしやすい社会があるようにと願います。
「臨場感あふれる報告会」本多美里(30代/女性)
この度は貴重なお話をありがとうございました。お二人の臨場感あふれるお話から、学会の様子やダーバンという土地の状況などに思いを巡らせ、大変興味深く拝聴しました。印象的だったのは、クライシス時のHIV治療と予防です。海外では紛争や内戦により、医療にアクセスできない事態が問題になり、それにともなう心のケアなども課題としていました。日本でも大規模災害時への備えについては、各自治体や施設で行われていることでありますが、このようは報告を参考に検討できることもあるのではないかと感じました。また、井上先生も仰っていた通り、今回の開催国が南アフリカということもあると思いますが、90-90-90が目標とされている中で、Treat Allと資金援助に関する演題が非常に盛り上がっていたということも興味深い内容でした。
日頃は抗HIV薬の有効性・安全性といった演題に目を向ける機会が多いのですが、お二人の講演でご紹介いただいた演題について改めて勉強したいと思います。ありがとうございました。
スタッフ日記
南ア便り(おーつき)
「南ア便り(1):いまだ沈黙=死」
「南ア便り(2):PrEP、PrEP、そしてPrEP」
「南ア便り(3):ダーバンの歩き方」
「南ア便り(4):アフリカのLGBT」
「南ア便り(5):From Durban to Durban to…」
また、エイズ予防財団のスカラシップを受け国際エイズ会議に参加した、以下2人の報告文がWebサイトに掲載されています。
エイズ予防情報ネット 第21回国際エイズ会議(ダーバン)/2016年
派遣事業参加者および報告
大槻知子(特定非営利活動法人ぷれいす東京)
北島勉 (杏林大学総合政策学部)
http://api-net.jfap.or.jp/library/societyInfo/world_aids_2016/world_aids_2016.html
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