ぷれいすコラム

ぷれいす東京設立20周年記念巻頭シリーズ 第3弾「ぷれいす東京と私」

岡本 学 独立行政法人 国立病院機構 大阪医療センター 医療ソーシャルワーカー

2005年1月、「陽性者の支援を担当したい!」と他の病院から医療ソーシャルワーカーとして転職して現職で働き始めてから、たくさんの陽性者の方々にお会いしてきました。薬害エイズ、性感染、母子感染、輸血による感染、感染経路は様々ですし、年齢・国籍・性自認・性的指向など、個人の背景ももちろんさまざまです。さまざま過ぎるので、「陽性者ってこんな人です」と言うことができないのは当然ですが、「うわぁ。生き難いんだなぁ。」という漠然とした印象を受けることが多いのは実際です。

「人に知られたらどうしよう。」「とてもじゃないけれど言えない。」表現の仕方は人それぞれですが、こんなにも人に言えない、隠さなきゃいけない、そうせざるを得ない社会があるんだということを、「そうらしい」とは知ってはいましたが、これほどまでにすさまじいんだと実感する他ない語りをたくさん聞かせてもらう日々を過ごしています。

「アタシ、どうしたらいいのぉ!!!」そんなことを毎日のように心の中で叫ぶような状況で、私に指針を示してくれたのは、『Living Together』でした。そして、長年多くの陽性者に寄り添ってこられた生島さんでした。

陽性者の生活上の困りごとを解決していくには、 HIVに関連することだけでなく、福祉や医療、就労、法律など様々な事柄に携わる、地域で活動されている機関や人との協力関係を作っていくことが求められます。その際に、対決や対立ということではなく、「いっしょに」というスタンスで、HIVを特別なことにしてしまわず、日常のこととして取り組んでいく必要があります。同時に、社会の中で生き難さを背負わされて暮らしている陽性者には、ピアとの出会いの中で、ほっとできる関係の中で、互いにそれぞれの強みが輝きを取り戻せるような時間が持てるようにすることが重要で、プライバシー漏えいの不安から、できるだけ守られた環境を用意するということも大事な点です。こういったことを、ぷれいす東京に関わってきたたくさんの方が積み上げてこられたこれまでの実践から教えてもらいました。

陽性者の方から、「感染がわかったばかりの不安な気持ちは、何年も経過した人ではなく、同じような状況の人と分かち合いたい」という声をいただいたときには、矢島さんたちが取り組まれてきた PGMのことが参考になるだろうと思いました。ぷれいす東京に相談をさせていただき、大阪に『ひよっこクラブ』をぷれいす東京にサポートしていただき立ち上げることができました。(実際の立ち上げや運営は私ではない方々の努力と熱意のたまものですが) また、現在は CHARMで行っている『HIVサポートライン関西』の立ち上げにも、生島さんや牧原さんたちに相談し支えられ、意見交換をさせてもらいながら取り組んでいます。今年度、新たに陽性者のカフェイベント『cafe bar an opportunity』を立ち上げた時にも、さまざまご相談をさせていただきながら…。

時には、「関西だからがくちゃんよろしくね。」と企業の従業員向けの HIV研修を丸投げいただいたり、様々な調査研究にも参加をさせていただいたり、薬物依存症からの回復を支援する人たちにHIVのことをわかってもらおう!という取り組みに巻き込んでいただいたり……。地域社会の準備性を上げていくことを常に意識しながらの活動に、ぷれいす東京のスタッフではない立場で一緒に参加させていただいていると、気が付いたら「病院のワーカーってそこまでするの?」と周囲からは奇異な目で見られるソーシャルワーカーに育ってしまいました。

「ぷれいす大阪を作るときには、アタシにやらせて!」そんな軽口をたたいてしまうときもありますが、ぷれいす東京を必要としない社会になっていくことを願い、そこにたどり着くまで、一緒に頑張っていきたいと強く思っています。次の世代にはまだ必要かもしれないけれど、その次の世代には、必要とされないことを願って。

ぷれいす東京Newsletter No.83(2014年11月号)より

岡本 学 独立行政法人 国立病院機構 大阪医療センター 医療ソーシャルワーカー

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