キシリトール/都内在住 男性
むかし治療済みの奥歯の詰め物が取れてしまって、虫歯にならないうちに早く直しておかなくっちゃと思って思案していました。HIVで通っている大学病院よりも、本当は近所の開業歯科にしたかったのです。
通いやすいし、融通がきくし、待ち時間も短い、それに虫歯の治療ってなんか開業医のほうが上手いんじゃないかという印象もあって……。
だけど、HIVのことを話すのもなかなかエネルギーが要ります。だいたい、小さな町の歯医者には、プライバシーなんてないようなもの。すぐ1メートルくらい隣の治療台に近所の住人が横たわっているんですから。待合室だって、受付だって、全部つつぬけ。
かといって黙って治療を受けるのは僕は嫌なんです。HIVと知った上でちゃんと治療をしてくれるようなところじゃないと安心できません。これだけ肝炎が大勢いる世の中で、HIVだからどうのこうの言う歯医者って、ちょっと危ないんじゃぁないのかなって思うんです。二次感染ていうのは僕らが感染源になるという可能性ばかり言われるけど、その逆もあるんですよね。じつはHIVの人ウェルカムっていう歯医者が、HIV陽性者にとっても安全な歯医者なのじゃぁないのかなって思うんです。
ユニバーサル・プリコーションっていうのはそう意味でもユニバーサルなんですよ、きっと。
で、けっきょく大学病院の歯科口腔外科に行きました。僕らを見てくれるのは、週に1回のそれも午後だけ。仕事の日程と調整して通ったのですが、小さな虫歯の詰め物ひとつに2ヶ月以上かかりました。これじゃぁ大変過ぎるよ、まったく!