陽性者と家族の日記 “なぎさのペンギン”

Give-upにはまだ早い

なぎさのペンギン

「マイペースを守ることは確かに大切。でも、いつまで経っても
同じだったら、それ以上のレベルには決して上達しません」
フィットネスクラブでお世話になっているトレーナーさんは、
いつもこう言って僕を励ましてくれます。
彼女の言葉のおかげで僕は自分に挑戦することの楽しさを学びました。
それは単なるスポーツに留まらず、僕の毎日の生活の中で座右の銘に
なりつつあります。

病気を告知されてから、色々な人たちに「無理はするなよ」「健康を第一にね」
と言われます。気遣いは本当にありがたいです。
でも、同時に自分の限界に簡単に線引きをしがちになってしまいました。
仕事でも遊びでも。
物事に全力で取り組むという姿勢を忘れかけていたのです。

自分に無理はしていないし、これからもしない。
でも、何かに「ネを上げ」そうな時には
「そのギブアップ、まだ早いんじゃない?あと1分だけがんばってみない?」
と問いかけるようにしています。

自分の向上を知る喜びって、格別ですから。

ひと口で30回噛んでます

なぎさのペンギン

どちらかといえば僕はせっかちな性格で、それは
食事中も同じ。
最近、ふと思い立ち、「食べ物を口に入れたら
奥歯で30回は噛んでみる」を実行してみたのです。
何日か続けてみて…ハッと気づきました。
今まで、自分はものを食べる時に水やお茶を流し込み、
充分に噛み終えぬまま無理に飲んでいた、という事実…
<気づくのが遅すぎ?(笑)>
少量を味わって食べ始めるようになって、他の生活態度も
変化し、ゆったりとした気分でいられるようになりました。
胃腸の調子も快調。
こんな快適なことを長い間気づかなかったんて!
以前、禁煙した時とまったく同じ思いです。

ほんの少し意識を変えるだけで、毎日なんて今からでもまだまだ
変えていけるものですね!

新しい希望

なぎさのペンギン

ついこの間21世紀を迎えたばかりだと思っていたのに、もう2008年!
時間の流れの速さは、まるでSF映画のようです。

小学生の頃、自分が40歳になっている姿をよく空想しました。
ぽっこりしたビール腹で、子供たちの父親になって、
家の庭で植木の手入れをしている自分の姿を思い浮かべたものでした。
現実の僕といえば、結婚もせず子の父親にもならず、
オジさんになってもクラブ遊びやジム通いを続けるゲイの独身。
中年という点では合致するけど、運動のおかげで太っちゃいないし
自分で想像していた40代よりず~っと若々しい!
う~ん、負け惜しみで言ってるんじゃなく(笑)

「自分の子供をもつ」という夢は実現しそうにはないけど
愛するひとと温かな家庭を築くことは不可能ではないかも。
たとえ、まだ完治の方法が見つからない病気に罹っていても、
同性愛者という少数な存在でも。

こんな未来になるなんて…人生ってまさにSFで、だから面白い!
僕が生きているうちにプライベートな宇宙旅行に行ける時代は
来そうにはないけど、自分にとっての明日への希望はまだまだ描けそう。

根っから楽天的な僕の初夢は、遥か先の未来へと広がっています。

スノーマン

なぎさのペンギン

今日はクリスマス。
昨晩の東京は暖かな聖夜となり、雪にはほど遠い天候でしたが
この時期になると毎年欠かさず観てしまう短編映画があります。
英国の作家、レイモンド・ブリッグスの絵本を基に製作された
アニメーション、「スノーマン」です。

帽子をかぶりマフラーをした雪だるまのかわいいイラストは、
さまざまなキャラクターグッズになっているのでおなじみかと
思いますが、僕がおすすめしたいのはアニメの方です。

ある雪の日、少年が作った雪だるまが、真夜中の12時過ぎに
突然動き出す。
最初はびっくりしていた少年も、すぐに雪だるまと仲良しに
なり、二人は空を飛んで北極へと向かいます。
そこで待ち受けていたのは、サンタとたくさんの雪だるまが
迎えてくれた、特別のクリスマス!
全編は約30分。なんと、一切セリフはありません。
優しさに満ちあふれた作品ですが…最後の最後でハッと
胸を衝かれます。

いい年をして、これを観ると今だに泣いてしまう私(笑)
製作からすでに25年が経っていますが、いつ観ても懐かしい
子供時代にタイムスリップさせてくれます。

クリスマスを過ぎても冬の間であれば雰囲気は満点です。
DVDになっていますので、機会があったらぜひごらん下さい。

感染で窮する子供たち

なぎさのペンギン

少し前のことになりますが、あるテレビ局が主催するチャリティイベントに参加する
機会をもちました。
パプアニューギニアで暮らすHIV陽性者の子供たちの生活を追ったドキュメンタリーを、女性アナウンサーが自身の取材体験を交えてレポートするという報告会でしたが、現実の過酷さは僕の想像を遥かに上回るものでした。

報告にあった小児陽性者の多くは、感染ルートが母子感染によるものでしたが、
陽性者である親族を介護中、事故で自身も感染してしまった少年のケースについては、あまりのやりきれなさに涙が出ました。
感染が発覚した途端、少年は家族を含む近隣社会から事実上隔離され、
監視され、差別の白い目にさらされながら暮らしています。
現在の彼は、治療どころか家族から満足な食事すら与えられていないのです。

女性アナウンサーの報告で印象に残ったのは
「アフリカの現状を取材した際も胸が痛んだが、地域社会のみんなが
助け合いながら生活している印象があり、若干の救いも感じられた。
しかしニューギニアは違った。男性の絶対的優位が揺るがないこの地域では、
女性や子供といった社会的な弱者である陽性者が社会から隔絶され、
徹底的な排他を受けている」
という言葉でした。

自分にとって、HIV陽性者との告知を受けなければ、
「なんだ、よくある児童福祉のチャリティか…」
程度の関心で終わっていたに違いない話題。
今の自分には…微々たるものではあるけれど…
子供たちの苦悶がどれほどのものであるか、想像力を働かせることができる。

改めて、このイベントに参加できた幸運に感謝しています。

ありゃ、飲み忘れ…

なぎさのペンギン

先月の末より、所用プラス休暇を兼ねて1週間ほど
中国・九州地方へ行ってきました。
盛りを過ぎたとは言え紅葉は見事だったし、
僕の住む地域ではなかなか味わえない旬の魚介類を
たくさん食べられたり…と楽しい毎日が続き、
仕事を忘れて身も心もリフレッシュ!

…できたのは良かったのだけれど、なんと旅先で
治療薬を飲み忘れてしまったのです。
翌朝、ボトルに入れた薬がまる1日分減っていないのに気づくまで、
完全に記憶がすっ飛んでいました!
せめて同日内に気づいていれば時間を遅らせても飲めたのに…
と反省したものの、時既に遅し。
僕と同じ陽性者が同行していて、彼はきちんと飲んでいた
(それを僕は傍らで見ていた)のですから、明らかに僕自身の
気が緩んでいたのです。
帰宅後数日してから定期通院日だったので、その折に主治医に
正直に話しました。

初心忘るるべからず。カレンダーで服薬チェックを復活させる
ことにしました。
普段とは違う環境に置かれたり、生活時間帯が変わると起こし
やすいミスなので今後も気をつけなきゃ!

小春日和

なぎさのペンギン

ぽっかぽか~

仕事なんかサボって海辺にひなたぼっこに出かけて
水平線をひたすらボーッと眺めていたい。
そんな衝動にかられる、やわらかい晩秋の陽ざし。

冬を前にした穏やかなひと時を小春日和と言うけれど、
今日はまさにそんな日。
英語ではIndian summer、Bluebird weather…
僕には「青い鳥が運んでくれた天気」という表現がぴったり来る。
春夏秋冬で晴れの日はたくさんあるけれど、この先に訪れる
長く厳しい季節のことを考えると、つかの間の貴重なぬくもりがうれしい。

一足先に寒波が流れている北海道では、積雪を記録しているらしい。
僕の住む関東でも、明日あたりから冬がはじまる…とTVのニュースが伝えていた。

次に春がやって来るまで、さっき見た陽だまりの美しさのことを大切に、
しっかりと胸に刻んでおこう。

日々の生活と仕事の中で…

なぎさのペンギン

近頃でも…腹の立つことは相変わらず多い。
けれども、「立つ」だけで実際に「怒る」機会は極端に少なくなりました。
人生の残り時間もそろそろ少なくなってきたことを意識して、残りの生涯を
怒って生きたらもったいない、という気持ちも、もちろん強いのですが…

それは、怒るべき相手が「人間だもの、仕方ないよね」という
諦観に近い感情、かもしれない。
もちろん、医師の誤診とか怠業とか…法倫理的に許されない
ことが存在することまで否定はしないし、実際に自分が当事者
=被害者になったら、また違った気持ちになるだろうけど。

システム関係の仕事をしていて思うのは、結局人間が作ったものは
神様が創ったものではない、ということ。
「IT」なんて御大層な仕事のように取られるけど、結局は人海戦術に
頼ったじみ~な仕事でしかないことがとてもよく理解できます。
メカニズムなんてとても脆弱なものなのです。
自動改札のシステムや、交通機関のダイヤグラム、金融システムなんて
広義で言えばかなりぎりぎり、満員電車の押し込みと似たような状況で
運用されている部分もあるから、破綻しても何ら驚かなくなるのです。
データ至上主義を取る現代医学についても、実はちょっぴりそんな気持ちを
抱いてる。期待をしていない、訳ではないけど。
カラクリを知っちゃうと、日々発生する大抵の事象に対して「ま、仕方ないか」
で済ませちゃうようになるから、本当は良いことではないのだけれどね。
…許しがたいのは、どこかの誰かさんのように事実を隠蔽して口を拭おうとする
役人たち。

僕も人間。相手も人間。
だから、信じられる人の言うことは信じたいけど、真実が何か、自分なりの
視点できっちり見抜く、その眼力だけはこれからももっていきたい。
そのためには、自分で足を運び、本を読んでもがきながらも自分を固める
しかないだろうな。
ネットのWikipediaあたりでサラッと流し読みし、物事の本質を5分で
理解しようだなんてあまりにも浅計だ、ということにようやく気がついた
次第です。
森羅万象は、そんな狭苦しい森のはずがないのだから。

社内で予防接種

なぎさのペンギン

朝晩の冷え込みがきつくなり、深まる秋を実感している毎日です。
勤務先でもインフルエンザ予防接種の申込みが始まって、
ああ、もうそんな季節…と感慨しきり。

面倒臭がりの性格ゆえか、感染が分かってからも予防接種を避けて
いたのですが、今年からはきちんと受けることにしました。
自分の健康を過信する傾向にあったのですが、今月初旬にひいた
鼻風邪の治りが遅いことを実感、少し不安になったことが理由です。
そして、接種費用が1

映画 「ヘアスプレー」

なぎさのペンギン

先日、渋谷で開催された試写会で、話題のミュージカル映画
「ヘアスプレー」を観てきました。

太めだけど、とってもキュートなダンス好きの女子高生トレーシー。
彼女の夢は、TV番組が企画したダンスコンテストでレギュラー
メンバーとなり、出演している憧れの同級生の男の子、リンクと
一緒に踊ること。
さまざまな困難にもめげず、ひたむきに自分の夢を追いかける
トレーシー…。
ストーリーはシンプルで、筋立てもよくある展開なのですが
理屈抜きでとにかく楽しい!!
最初から最後まで顔がゆるみっぱなしで、映画を見てウキウキと
心弾む経験をしたのは、本当に久しぶりです。

トレーシーの母親、父親を演じるジョン・トラボルタやクリストファー・
ウオーケンは、僕が中学生だった時代に(!)ハリウッドの青春スターと
して鳴らした俳優さんたち。
さすがにすっかり年を取ったけど、二人が手を取り自宅のベランダで
歌い踊るシーンを見ていたら、自分にとってのその後30年間がダブってきて、
感無量になりました。

試写会では舞台上で簡単な振り付けのデモンストレーションが披露され
舞台挨拶に立った出演者と観客が一体になってみんなで踊った(!)のも
愉快な思い出として忘れられません。

間もなく劇場公開されますので、もう一度観にいこうと決めています!