陽性者と家族の日記 “なぎさのペンギン”

高齢化社会は目前。だけど…

なぎさのペンギン

先日アメリカの雑誌を眺めていたら、性的マイノリティの高齢化に関する
記事が出ていて、これがとても興味深かった。

アメリカといえば、ゲイやレズビアン、バイセクシャルなどに対して
社会全体が非常にリベラルな雰囲気で受け容れている印象を受けるけれど、
実際、それは大都市の特定のエリアに限られたことだという。
(僕も滞米中にそれを痛感させられたが…)
現在でも地方都市では偏見や差別意識が根強く、いわゆる「老人ホーム」
などのケア施設に入居しようとしても、他の入居者から猛反対に遭い
居住フロアを変更させられたり、同室を拒否されることがしばしばあるそうだ。
カリフォルニア州などは性的マイノリティに比較的寛容であり、
専用住宅の提供など独自の取り組みも始まったようだが、他の地域では
実情はまだまだ厳しいらしい。

偏見をもたれる理由のひとつに「エイズがうつるのではないかと心配」
ということが挙げられているそうで、ある程度予想のつく回答だとしても
当事者としては色々な意味で複雑な思いを抱く。
正直言えば「アメリカですらこの程度か」との気持ちもある。
この十数年でHIV陽性者を取り巻く環境は劇的な変化を遂げたけれど、
人間の意識って、そんなに簡単に変わらないんだな。
それでメゲてはいけないけどね。

で…日本じゃどうか、って?

自分の未来を拓くために真剣に考えなきゃいけないこと、
まだいっぱいあるみたいです。

ある誘惑

なぎさのペンギン

むかし一緒に遊んでいた仲間から、久しぶりの電話。
脱ドラが手に入ったんで、ホテルで一緒に試さないか?という
お誘いだった。

いまの自分は、暗がりじゃなく太陽光の下で遊ぶコトに夢中だし、
キメてハジケるよりもダンスのターンがキメられる方が楽しく
なっちゃって、と断った。
相手は低い声で、優等生になったねえ、つまんねえと笑った。
こちらから今度ゆっくりお茶でも、と言いかけたところで、
素っ気なく電話を切られた。
本当の気持ちを言ったのに、なぜだかこめかみに冷や汗をかいた。
何かを失ったような気がしたが、不思議なくらい後悔はなかった。
友だちならまた作ればいい。それだけの話。

健康であるということは、簡単なようでいて、やはり難しい。
自分以外の「何か」や「誰か」に素直に感謝の気持を伝えられる
力みのない状態であると同時に、自分なりに一生懸命に築いてきた
大切なものを壊されまいと、とっさに防衛できる敏捷さも要求されるからだ。
僕には子供がいないが、今回のことで、わが子を守る親の本能が
どういうものなのか、ほんの少しだけ理解できたような気がした。

リセットして再起動にもう一度時間を費やすのはもったいない。
今まで楽しさに気づかなかったゲームの種類は山ほど。
制限時間ギリギリまで粘って、できればその全部を制覇してみたい、
というのが、現在の僕の考え方であり、生き方。
今さら同じゲームのリプレイなんて退屈だ。

僕は根っからの欲ばりだけど、そんな自分の性格を
こんな時にはちょっとは好きになれるかも。

エアロ・フィーバー

なぎさのペンギン

先日、あるエアロビクスのイベントに参加し、思いきり汗を
かいてきました。

主催者が公共スポーツ施設の大体育館を借り切って行った
イベントで、参加者数はなんと400名。
朝10時から夕方の6時まで、各1時間×8つのプログラムに分かれ、
休憩をはさんで朝から夜までみんなでエアロを躍るという、
かなりマニア色の濃いイベントです(笑)
中には8つのプログラム全部を連続でこなした強者も!
僕は途中で挫折しながらも5つのプログラムに参加できたので
まあ満足でした。
ゲイも含め(?)性別、年齢を問わない幅広い層の参加者が、
それぞれ凝ったウエアで自分をアピール。
息を弾ませながらもみんなが笑顔で体を動かしていて、
自分もその中に加わっているという連帯感が何とも心地良かった
です。

それにしても…スポーツクラブの狭いスタジオでなく、
大体育館で数百人が同時に躍るのは本当に爽快!
まるでミュージカルのダンサー気分でした。

瞳を閉じて

なぎさのペンギン

フィットネスクラブでのレッスン、僕は「バランス」が苦手。
インストラクターに両目を閉じたままで片足を上げ、
そのままの姿勢を保つように指示される。
右足も、左足も、5秒も保てずグラグラ崩れてしまう。

「目をつぶっていても、前を向いてまっすぐ遠くを見るように心がけて。
 落ち着いて、ゆっくり息を吐けば立てますよ」

目を閉じたまま遠くを見る?
いったいどういうこと?
疑心暗鬼だったが、試しているうち、何となく感じがつかめてきた。
目を閉じたまま遠くを見つめる感覚って、とても不思議だ。
そして、すごく心が落ち着く。
苦手だったはずの種目が、だんだん好きになってきた。

最近は、日常生活の中でも..感情が高ぶった時、迷いが生じた時に、
目をつぶってまっすぐ前を見ることにしている。

瞳には写らない。
でも、まっすぐ前に向かって伸びる道が、僕には確かに見えている。

病院を変える

なぎさのペンギン

ふとしたきっかけで、現在、通院している病院を
別の医療機関に変更することにしました。

僕が通っているのは都内でも大きな拠点病院ですが
現在の場所で「なし崩し」的な治療を継続させることに
疑問を感じ、自分の今後の治療に不安を残さないため
思い切って病院を変える決心をしました。

幸いなことに、現在は3ヶ月に一度の通院で済んでいます。
「3ヵ月に一度なんだから、わざわざ変える必要もないのでは?」
と言う人もいましたが、僕は「3ヶ月に一度だからこそ」
変えたいのです。

僕にとって通院は病気に関する情報を得るための貴重な機会ですから、
診察のために積極的に時間を割いてくれる(そういう姿勢を示してくれる)
新しい医師と知り合えたことが嬉しいです。

そして「選択」という自由をこの手にできた
2008年という現在に生きていることに、何よりも感謝したい。

人生は長丁場。
僕の治療生活もまだはじまったばかりです。

ウイルス感染拡大 !

なぎさのペンギン

……といっても、HIVの話ではありません。

PCのアンチウイルスソフトを開発する会社が発表した
最新統計によれば、コンピュータのウイルス感染被害が激増中で、
中でもUSBメモリを介した感染の報告が目だって増えているとのことです。

USBメモリ、確かにとても便利です。
数千円~数万円で購入すれば、大容量のデータも簡単に持ち運びできます。
モバイルPCを携帯しなくても、出先にあるPCのUSBポートに繋ぐだけで
自分のパソコンのように自由にデータを出し入れできるのです。
電源はUSBポートから供給されるので不要ですし。

僕の通うスポーツクラブには、USBメモリ対応のトレッドミル(ランニングマシン)
が設置されており、USBポートにメモリを差し込むと、前回自分が
走ったコースや距離、ペースの記録などが読み込まれ、体力にあった
トレーニングが手軽に継続できる機能がついています。
21世紀ってハイテクの時代なんだなあ、と実感しているのですが…….

が、しかし……ウイルス感染には完全にお手上げの様子。
最近流行している「オートラン」と呼ばれるウイルスの場合、
感染したパソコンにUSBメモリを接続するとそのUSBメモリが感染しますが
それに留まらず、その感染メモリを別のPCに接続すると、そのPCにも
感染が拡がってしまうのだそうです。
今の段階で考えられる防御策としては、PCに接続したUSBメモリを
自動実行しない設定にするとか、やみくもにデータをやりとりしない
といった手立てしかないと言うのですから……。

ネットカフェが氾濫する現代、見ず知らずのPCが自由に使えることを
当然のように思い、利用することに特に躊躇や不安を感じていない、
そんな人が多くなってきたこと自体、本当は不思議だと思うのですが……。

与えられた環境や恩恵に慣れ切ってしまい、初めの痛みを忘れてしまう
人間の本質が怖い、という気持ちがしています。
テクノロジーというヨロイで自信過多になったところで、人間と言う存在は
結局は脆弱なものですね。

Home

なぎさのペンギン

最近、職場で一緒に仕事をしている人たちが次々に海外赴任となり
日本を離れていった。

僕も短期間だが海外生活の経験があるので、当時を思い出すと
彼らがうらやましくなり、ふと外国へ戻った自分を空想してみた。

私的な意見になるけれど、僕は、日本の同性愛者にとっては
どこか別の国で暮らす方が精神的にはずっと楽ではないかと思っている。
言語や食生活のギャップがあったとして、それらを考え合わせても
不必要に自分に好奇心を抱かない人たちに囲まれている環境は
本当に貴重で、ありがたいからだ。

外国で暮らすことで、周囲は最初から距離を置いて「部外者扱い」
をしてくれる。そこで当事者である僕らは、無限の自由を手に入れる
ことができる…

と、本気で信じていた。昔は。
真実がそうではないことに気づくまで、ずいぶん時間がかかったが。

いろいろ迷ったけれど、今は、やはり日本がいい。
どんなに抑圧されても、息苦しくても、最後の最後まで日本人でありたい。
この狭い土俵の中で勝負し、答えを出すことにこそ価値があると思うのだ。
海外へはたまの旅行で行けば充分、現代には実際に外国へ行かなくても
外に目を向ける方法はいくらでもある。

40を過ぎて、日本人であることを誇りに思えるようになった僕。
日本人で、ゲイで、HIV+。
このアイデンティティを、これからもっと大切にして生きたいと思う。

トモダチ

なぎさのペンギン

ゲイの友人や同じ病気の友人とのつながりは大切だけど、
最近、どことなく閉塞感を感じる。
同じような溜め息で自分たちの空を曇らせ、外界を閉ざしている
のではないか…そんな息苦しさを覚えることが増えている。

今は迷わず外に出て、新しい風を呼ぶべき時なのか。

先日、高校時代の同級生と半年振りの飲み会をし、大いに盛り上がる。
友人の数人が医療関係者であり、僕は自分の病気をカミングアウト
しているため、ぶっちゃけたバカ話もできる間柄なので気楽だ。

一家団らんの家族旅行や子育ての苦労話なんて現在の自分には
最も縁遠いはずのもの。だからこそ、ものすごく新鮮に写る。
不倫したり、離婚したり、老親の介護をしたり、
みんなそれぞれに現実と向き合って生きている姿を知り、
僕の空は晴れ上がる。

自分と違う環境にいる存在に肩を叩かれ、励まされることの尊さ。
Living Together、ここにも。

Valentine Day

なぎさのペンギン

今日はバレンタインデー。
数日前、デパートの食品売場の前を通った時にも、
チョコを買い求める若い女性の列ができていました。
わが職場では、「虚礼廃止」の観点から、数年前より
義理チョコを含め社内での受け渡しはご法度になりました。
大人としては当然の対応なんでしょうが…
「虚礼廃止」って、スゴイ言葉だあ。
もともと社員同士のコミュニケーションが少ない職場で、
文句をいう人もいないみたいなのがちょっと淋しいです。

自分はゲイだけど、女性からチョコを贈られるのは単純にうれしい。
根が甘いもの好きなので(笑)。
贈ってくれた相手にはホワイトデーまで待たず、当日のうちに
ケーキをごちそうします。
(もちろん、他意のないことを理解してもらった上ですよ~)

親しい人にギフトを贈る習慣って、僕はステキなことだと思うんです。
お中元やお歳暮を贈る人は少なくなりましたが、バレンタインデーは
いつまでもすたれないでほしいですね。

雪の日はゲームでエキサイト !

なぎさのペンギン

東京には珍しく大雪となった週末に、
数人の友だちとゲーム大会を開きました。

僕が持参したWiiでスポーツソフト「Wii Fit」を楽しんだり、
発売されたばかりの戦闘ゲームでバトルを繰り広げたり。
まるで、高校や大学時代に戻ったかのようなノリで遊べて
めちゃくちゃ面白かった!

いつのころからか「ゲームなんて子供がやるもの」
なんてタカを括ってしまっていたけれど…
でも、それは単純に自分が情報不足だったゆえの偏見
なんですね。
今のゲームは年齢や性別を超えて誰でも楽しめるように
巧みに作られているんだなあ、と改めて感心しました。

友だちとも更に仲良くなれてうれしいし、いくつになっても
オジさんは好きだな~、こうゆ~の(笑)