スタッフ日記 “生島”

PrEP今、現場で起きていること

生島

二つの地域で、それぞれ3か所の医療機関の協力を得て、厚労省のPrEP研究班が実証実験を行なっている。この広報やアンケートなどの手伝いをしている。札幌、沖縄で初めてPrEPを始めようとする人たち、始めた人たちの声を、アンケート調査結果でお聞きしているのだが、この声がデータが大きく、日本のPrEPのあり方を変える可能性を秘めている。ですので、もっと多くの人たちに、ぜひ、ご参加いただきたい内容です。お知り合いがいたら、ぜひ、声かけをお願いします。

2024年8月、ツルバダが曝露前予防(PrEP)としての認可(保険適応なし)された。これを受けて、日本エイズ学会のガイドラインも変更になるため、PrEPポケットガイドも内容を大きく変更した。ぜひ、ご覧ください。

先日、ぷれいす東京の活動報告会で、興味深いトークを行なった。
この3年の厚労省のエイズ動向委員会・年報をみると、R6は(速報値)ですが、エイズつまり症状がでた状態で報告されるHIV陽性者がじわじわと増えてきている。保健所などで実施されている、無料匿名のHIV検査の年間の実施数はコロナ禍から回復傾向で、以前の7〜8割まで戻っている。なので、当然、「HIV感染者」の報告数が増加するのは理解できる。しかし、感染からある期間、多くが5年〜10年で何らかの症状が出てくる「エイズ患者」の増加はどう解釈したらいいのだろうか。慎重さは求められるが、感染の広がりが疑われる。

このトークでは、まさに、この3年間の「エイズ患者の増加傾向」を説明しようと企画したものだ。ぜひ、ご覧ください。特に菊池さんの報告には、日本のサブタイプの分析から、想像されるどのような性的な交流による感染報告だとウイルスのタイプからの分析結果をご紹介いただいたり、抗HIV薬の薬剤耐性の出現状況から想像される日本の課題について触れてもらう。HIV検査を受けないで、PrEPをスタートしたと想像される耐性の変異をすでに出現していることなどを報告してもらった。

PrEPユーザーはMSM(男性と性行為をする男性)を対象にした調査で、過去、現在の使用が10%を超えている。こうした利用者の増加が、感染の広がりが抑えられている面もあるでしょう。しかし、適切でない使用が散見されるため。使用開始時には、事前にHIV陰性を確認し、念ため1ヶ月後にもHIV検査をきちんと受けることがとても大事であることが分かった。

PrEPの札幌、沖縄での実証実験では、クリニックに行ってもらい、検査を実施、陰性を確認してから、服薬を開始してもらった上で、PrEPを手に入れらる研究なのだ。ぜひ、宣伝にご協力ください。

署名活動を引き続きやっています。厚生労働省、製薬企業に働きかけます。
ぜひ、協力ください。

署名募集中「HIV感染を薬で予防する方法、PrEPを日本でも当たり前の選択肢に!」


HIV陽性の皆様へのお願い

生島

HIV陽性者のための療養支援サービス「UUコンシェルジェ」、「とどくすり」という新しいサポート、アプリの紹介イベントを開催します。

そこで、陽性者の方へのお願いです。拡散にもご協力ください。
お願い①【アンケートにご協力ください!】
イベント内で発表するアンケート回答にご協力ください。
まだ、人数が不足しています。5分程度の簡単なアンケートです。
https://x.gd/wqyUp

お願い②【イベント】にご興味のある方はご参加を。
5/27(火)の学習会の詳細
https://x.gd/FftGD


私たちにできることは何? “米の援助削減で感染症死者が大幅増”推計、米国の活動家抗議で逮捕

生島

adbocateによると、「エイズ活動家らは水曜日、トランプ政権による世界規模のエイズ対策資金削減に抗議して再び逮捕された。これは2月13日と26日の抗議活動中に行われた逮捕に続くものである。」と報じている。
NHKはWHOの事務局長のコメントを紹介している。「アフリカを中心に毎年多くの死者が出ているエイズ対策をめぐっては、各国で治療薬が不足しつつあり、このままではことしのエイズ関連の死者数は300万人と、去年の3倍以上になるという推計を明らかにしました。」
私たち市民社会はこの事態を目の前にして、何ができるのでしょうか。


WHO “米の援助削減で感染症死者が大幅増”推計 見直し求める

2025年3月18日 8時25分
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250318/k10014752721000.html
WHO=世界保健機関は、アメリカが対外援助を大幅に削減した場合、エイズやマラリアなどの感染症による死者数が、大きく増えるという推計を明らかにし、トランプ政権が打ち出している削減方針の見直しを求めました。

More AIDS activists arrested when protesting global funding cuts
https://www.advocate.com/news/hiv-protesters-arrested-again
AIDS activists were arrested again Wednesday while protesting the Trump administration’s cuts to funding to fight the disease globally. This follows arrests that were made during protests February 13 and 26.

世田谷区の職員研修について

生島

世田谷区保健所感染対策課が企画した「HIV理解促進研修」職員向けの研修会に、加藤さんと二人で講師を勤めてきました。全庁から多様な職員が参加してくれ、素晴らしい会となりました。会場に世田谷区の名誉区民の写真が飾ってあり、ビッグネームだらけでびっくり‼️

2025年の年頭に思う、セクシュアルヘルスの今後

生島

「樽井理事の突然の訃報」

2024年1月18日、ぷれいす東京の研究担当理事であった樽井正義さんが急逝されました。そのわずか9日前、私たちは厚生労働省への研究報告について最後のやり取りを交わしていたため、この訃報はあまりに突然のものでした。

ぷれいす東京の研究班「地域におけるHIV陽性者支援のための研究」では、2008年の初代から生島が研究代表者を務めていましたが、2012年にぷれいす東京の代表を引き継ぐことになり、団体の代表や相談員を兼任しながら研究代表を続けることが難しいと理事会で相談しました。すると、樽井さんが理事の一人として「自分が研究代表を引き受けてもいい」と提案してくれました。その後、2012年から10年以上にわたり、彼は研究代表としてこの難しい役割を担い続けてくれました。

樽井さんはいつも「俺はこれが最後だから、ちゃんと次の代表を決めておけ」と話していました。その理由を私は「年齢的な問題だろう」と思っていましたが、訃報を受けた後、家族から知らされたのは、彼が長年がんを患っていたという事実でした。彼は家族にすら病気を口外しないよう頼んでおり、最期まで研究の責任を果たし続けてくれていたのです。

「PrEPと樽井さん」

樽井さんとの思い出には、彼の歯に衣着せぬ物言いが常にありました。たとえば、MSM(男性とセックスをする男性)の間でコンドーム使用率が低下していることや、薬物使用者にとってのPrEP(HIV予防薬)の重要性について説明した際、「なんでちゃんとコンドームの啓発をしないんだ」と正論で返されたことがありました。当初、このようなキャッチボールを苦手に感じる時期もありました。しかし、研究パートナーとして彼と議論を重ねるうちに、その率直な視点が私たちにとって重要であると気づかされました。そのような物差しを失ったことは、私たちにとって大きな損失です。

2024年8月、日本ではHIVの治療薬ツルバダが予防薬として薬事承認され、「PrEP元年」と呼べる年になりました。PrEPは適切に使用すれば感染リスクを99%低減できるとされていますが、米国に比べ12年遅れの承認は、私たちが世界から遅れを取っている現状を浮き彫りにしました。

私たちの調査では、アクティブなMSMのうちPrEP使用者は10%以上に達しているものの、その7割以上がオンラインで薬を入手し、医師の診察を受けていない人が半数を超えています。また、HIV検査を受けずにPrEPの服用を始め、感染を見逃しているケースも報告されています。PrEPの価格が高いことが、利用者をオンライン購入に追いやり、医師の監督下での適切な利用を阻んでいるのです。

「課題解決に向けて」

この課題を解決するため、現在PrEPの普及を目指した署名活動を実施中です。akta、カラフル@はーと、ピルコン、#なんでないのプロジェクト、ぷれいす東京が協力し、この活動を進めています。

・署名プロジェクト
HIV感染を薬で予防する方法、PrEPを日本でも当たり前の選択肢に!

さらに今年は一歩先にすすみ、LGBTQ+コミュニティの性の健康や医療アクセスの課題を調査する「CONSENTプロジェクト」を計画しています。

・CONSENTプロジェクト https://consent.info/

昨年は、ぷれいす東京を応援していただき、本当にありがとうございました。
引き続き、これらの取り組みを通じて、より多くの人が安全で健康な生活を送れる未来を目指します。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。

認定NPO法人ぷれいす東京
 代表 生島 嗣
  スタッフ一同

ぷれいす東京NEWS 2025年新年号より)

 

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「陽性者と家族の日記」紹介

生島

今日は、「陽性者と家族の日記」を紹介します。2002年にスタートしました。メンバーは途中で入れ替わりがありますが、素敵な書き手がずっと日記にて普段の生活の断片を文章にしてくれています。SNSのように読み手の反応があるわけではないなか、11人の書き手が黙々とかいてくれています。

陽性者と家族の日記
現在は11人の性別、年代、セクシャリティ、住んでいる地域など、さまざまなHIV陽性者が日記をつづっています。HIV陽性者の何でもない日常や、ちょっとした生活のかけらに触れてみてください。https://ptokyo.org/diaries

もし、フィードバック感想を書きたい場合にはこちらに、投稿できます。
ぜひ、感想をお寄せください。
ぷれいすvoide
https://ptokyo.org/voice

この日記には、いくつも素晴らしい書き込みがあるのですが、今日はその一つを紹介します。

バースデーケーキ(長文)
 みのる

バースデーケーキ(長文)

 

30周年記念トーク市川誠一さんと一緒にハッテン場調査を振り返る

生島

インヘリタンス〜継承を観に行きます!!

生島

2023.11.30 主催 日本国際交流センター(JCIE)グローバルファンド日本委員会(FGFJ)主催のイベントにて、主演の福士誠治とトークさせていただきました。
ぜひ、興味がある人はどうぞ。生島は2月11日の初日に行こうと思っています。

この舞台なんと、6時間を超えるそうです。60代のリアルに恋人、友人、家族が原因不明の奇病で亡くなったという80年代を知っている世代と30代、20代という3つのジェネレーションのゲイ男性たち。そして、お母さんの語りもあるそうです。

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\オリヴィエ賞4 部門、トニー賞4 部門受賞!/
『インヘリタンス -継承 』東京公演
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ブロードウェイとウエストエンドを感動に包んだ話題作!
2024年2 月に開催する『インヘリタンス -継承-』東京公演のご案内です。
前篇・後篇の2部作での上演となる本作。
本作は、2015~18年のNYを舞台に、1980年代のエイズ流行初期を知る60代と、若い30代・20代の3世代の3世代のゲイ・コミュニティの人々の愛情、人生、尊厳やHIVをめぐる闘いを描いた作品です。

【公演詳細】
『インヘリタンス』
ホームページ:https://www.inheritance-stage.jp/
作:マシュー・ロペス
演出:熊林弘高
出演:福士誠治 田中俊介 新原泰佑
柾木玲弥 百瀬 朔 野村祐希 佐藤峻輔
久具巨林 山本直寛 山森大輔 岩瀬 亮
篠井英介/山路和弘/(後篇のみ)麻実れい

【関連記事】
ゲイ・コミュニティーを描いた舞台『インヘリタンス―継承―』主演・福士誠治が語るエイズの今 3世代40年続くパンデミックとは
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2023/12/globalfund.php
glad-xx  https://gladxx.jp/features/2024/entmt/9162.html
GENXY https://genxy-net.com/post_theme04/363463l/
New TOKYO https://the-new-tokyo.com/inheritance/

30周年、節目の念頭に

生島

ぷれいす東京は、1994年、高田馬場栄通りの先、神田川を渡ったところにある雑居マンションの1室で活動をスタートさせました。6畳ほどの和室に小テーブルをおき、畳の上に座して、相談員は不安相談に耳を傾けていました。

ゲイ・グループは、持ち寄った品々をフリーマーケットで売り、その収益で電話回線の権利を購入するところから相談活動をスタートさせました。

こうした手作り感あふれる活動は、池上千寿子さんのリーダーシップのもと、HIVに関連した様々な現場レベルとの接点を保ちつつ、活動を広げてきました。現在では、東京都や厚労省などの事業も受託するまでに発展してきました。

この2024年4月でぷれいす東京の活動は31年目に入ります。この30年を振り返りつつ、同時に次世代の人たちと未来について語っていく機会を作れたらと願っています。

当初から活動に関わり続けたスタッフもまだまだ現役で参加していますが、いよいよ世代交代に本腰を入れるタイミングです。この度、事務局で事務業務や電話対応など、事務機能の要となる人を公募することになりました。もし近くに適任者がいたら、ぜひ、ご紹介ください。

UNAIDSでは、2030年までに、3つのゼロを達成することを目指しています。
1:差別をゼロにする
2:新たなHIV感染をゼロにする
3:AIDS関連死をゼロにする

ぷれいす東京はこの3つの課題を達成するために、みなさまと力を合わせていきたいと思います。本年もどうぞよろしくお願いいたします。

2024年元旦

認定NPO法人ぷれいす東京
 代表 生島 嗣
  スタッフ一同

ぷれいす東京NEWS 2024年新年号より)

 

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30年目を迎えるにあたって

生島

皆様、いかがお過ごしでしょうか。

2022年のHIV陽性者向けのミーティングを振り返ると、オンラインでのミーティングやセミナーの開催、動画の配信など、実践しながらノウハウを蓄積した年でもありました。

元々オンラインは、コロナ禍における対面の代替手段、マイナスをカバーする道具として使い始めました。しかし、距離を超えて、多様な人が繋がれる、小グループでのトークが簡単にできるなど、オンラインの良さも実感するようになりました。

もちろん、ミーティング後のお茶会、食事会はできません。それでも、遠くに住む人、海外に住む人たちとも都合を調整さえすれば、一緒に話せるという技術の進歩は驚くべきものがあります。

さらに、最近では、会場参加とオンライン参加が選べる、ハイブリッド開催の実施が始まっています。会場のモニターを介して、オンライン参加者と会場参加者が問題なく交流できるようになりました。

今後は、この楽しさ、ワクワク感を他の領域でも活用していきたいと思います。ぷれいす東京のYouTubeチャンネルでは、時々、LIVE配信をしています。チャンネルを訪問していただくと、過去のアーカイブ動画もご覧いただけます。 チャンネル登録者数も500人を超え、目標の1000人まで、あと一息となっています。ぜひ、応援、よろしくお願いします。

さて、1994年4月にスタートした私たちの活動は、2023年度で30年という節目を迎えます。最初は10人前後であったぷれいす東京のスタッフ数は、昨年3月末で、251名(うち正会員61名、活動会員190名)、そして、事務所もフルタイム・スタッフ2名、パートタイム5名と多くの人たちが参加する団体へと大きく成長してきました。

毎年秋に開催される新規ボランティア研修会には、「不安だった時に助かったから」「同じ立場の人と出会ってエンパワーされたから」というニューフェイスたちが、参加してくれています。かつての利用者が提供側に回るという循環が成り立っているのです。このことを、とても嬉しく、誇らしく思います。

この30年で経験した、過去の蓄積を次世代の人たちに伝えるということは必須だと思っています。それと同時に、現代表も含めてスタッフの高齢化が話題になっています。いよいよ世代交代に向けて努力する年となります。

みなさま、今年もぷれいす東京の活動をご支援いただけますよう、どうぞよろしくお願いいたします。

2023年元旦

認定NPO法人 ぷれいす東京
代表 生島 嗣
スタッフ一同

ぷれいす東京NEWS2022年新年号より転載