スタッフ日記 “おーつき”

Hello from DC, Part 2

おーつき

アメリカの首都(特別行政区)であるワシントンDCには立法・行政・司法の連邦政府機関が密集しているため、住民もそれらに仕える人かそれらを相手に仕事をしている人が多くを占めます。Human Rights Campaign

アメリカ最大のLGBT人権擁護団体Human Rights CampaignもワシントンDCに事務所(しかも自社ビル)を構え、議会へのロビーイングなど、さまざまな活動を展開しています。21日には国際エイズ会議の関連イベントとして、「Addressing Stigma in Transgender & Other HIV-vulnerable Communities」というプレゼンテーションを行っていました。HIV陽性者の64%、トランスジェンダーの70%が医療機関で差別的な扱いを受けた経験があると回答したという調査がありますが、そういったスティグマが当事者にも内在化され、やがて彼ら自身が医療につながることをためらうようになってしまうことに強い懸念が示されました。

The DC Center一方で、ワシントンDCにも、地域で暮らすLGBTのために開かれたコミュニティ・センターがあります。ゲイ・タウンと言われる地域にほど近い、賑やかなストリートの一角にあるThe DC Center for the LGBT Communityは、有給スタッフ1名と10名弱のインターンやボランティアのみによって運営されているとは思えないほど、たくさんのプログラムやイベントを実施しています。ワシントンDCで活動する2~3の小さなLGBTグループにデスクを貸与していて、コミュニティ内のさまざまな活動がつながり合えるコワーキング・スペースのようになっていたのもユニークです。

Hello from DC, Part 1

おーつき

国際エイズ会議は22日にスタートしますが、開幕前からさまざまな関連イベントが開かれています。そのひとつ、国際エイズ学会がホストし20日に開催されたHIV/AIDSと薬物使用をテーマにした会議「HIV and Drug Use: Effectively Addressing the Twin Epidemics: Innovative Strategies for Healthy Communities」に参加しました。

ハーム・リダクションに関する資材日本の状況とはいささか異なりますが、国際的には静脈注射によるHIV感染例が非常に多く、サハラ以南のアフリカ諸国を除く世界のHIV陽性報告数の3分の1を占めるとも言われています。また、薬物を使用するHIV陽性者は、抗HIV療法を受けても、薬物使用者ではない陽性者より余命が短いという研究結果もあり、効果的な対策の必要性が叫ばれています。この会議でも、注射器の使い回しによるHIV感染の予防に効果的な、注射器交換プログラムや過剰摂取予防教育などのハーム・リダクションの推進が大きなテーマのひとつになっていました。

※薬物使用(依存)をやめることの難しさや、すぐにやめることがかえって深い依存を招く危険があることなどを鑑み、まずは薬物を使用する上での害を少しでも低減することを目指す考え方。

オーストラリアやフランス、スイスなどで目立った効果が上がっているというハーム・リダクション・プログラムの医学的根拠をもとに、他の薬物使用が進んでいる国や地域――往々にして貧しい国――にどう介入するか。例えば東欧のある国で成功したハーム・リダクションがアフリカの別の国でも効果があるかわからないから、まずはパイロット・テストをやってじっくり検討しよう、という議論が援助機関の机上で繰り返されることに、ある現場の医師は懸念を表明しました。国際協力や開発においては、対象国の文化や地域特性などに配慮し、それにあわせた方法で対策プログラムを導入するべきというのは大前提です。一方で医療や公衆衛生の専門家の間にも薬物使用に対するスティグマが根強く(それは薬物使用がとりわけ社会の周縁化された人々の間に集中していることと無関係ではないかもしれませんが)、それらがハーム・リダクションの推進を阻んでいると指摘し、既に十分なデータとエビデンスがあるハーム・リダクションで、パイロット・テストをやっている間にどんどん人々が死んでいくのを見るのが耐えられない、という言葉が印象的でした。

ハーム・リダクションワシントンDCのとある施設のトイレでも、コンドームだけではなくハーム・リダクションのために交換用注射器が自由に持ち帰れるようになっていました。

O say can you see…

おーつき

夕暮れ時のホワイトハウスこんにちは、おーつきです。国際エイズ会議に参加するため、アメリカのワシントンDCに来ています。こちらの気候は東京とあまり変わりませんが、日が長く、外は20時半くらいまで明るいです。

つい最近まで長年HIV陽性者の入国を制限していたアメリカで国際エイズ会議が開かれるのは22年振りとのこと。明日からは、会議や関連イベントの様子などをレポートできればと思います。

Washington Blade

現地のLGBT向けタブロイド紙もHIV/AIDSの大特集

仕事・くらし・社会

おーつき

こもれび荘でのパーティー先日、「ゲイによるゲイのためのHIV/エイズ電話相談」の相談スタッフと話をしていて、よせられる相談内容の多様化について話題になりました。HIV/AIDSやセクシュアリティを専門にうたう相談窓口でも、必ずしもそれらだけに対応できればいいわけではありません。実際には、相談を受ける中で、それらと隣接する(時にはあまり隣接してなかったりする)種々様々なテーマに直面しています。

ゆう茶房HIV/AIDSの相談・支援とそれぞれに重なりあう部分がある分野のひとつに、就労や生活相談があります。ご縁があって、先週、首都圏青年ユニオンの「ゆう茶房」と自立生活サポートセンター・もやいの「こもれび荘」にそれぞれおじゃましてきました。活動内容について紹介いただいて、お互いにどんな相談がよせられますか?どんな支援が受けられますか?といった情報交換から始まるのですが、スタッフ(含ボランティア)のモチベーションの維持や、ファンド・レイジングやPRなど、活動のフィールドにかかわらず共通するような団体運営のあれこれの話でも盛り上がりました。

もやい相互に影響しあうさまざまな社会問題に対して誰しも無関係ではいられない中で、これからもつながりあいながら日々の活動を続けていければと思います。

あなたにとって、薬を飲むということはどういうことですか?

おーつき

抗HIV薬の開発・進歩により、HIV陽性になっても早めにそのことに気づいて適切な治療を行うと、長期間、健康状態を維持することが可能になっています。では、ある程度長期にわたって抗HIV薬を飲みながら生活を送ることが前提となる中、日々の生活で薬とつき合っていくこと──飲み忘れ防止の工夫をしたり、服薬の都合にあわせて外出の予定を組んだり、飲み続けるモチベーションのありかなど──とはどんなことなのでしょうか。

現在、服薬中のHIV陽性者を対象にした「生活と服薬継続に関するアンケート」をぷれいす東京で行っています。協力いただける方や興味をお持ちの方は、ぜひ以下URLのページをご覧ください。

アンケート用紙を配布しています

つなぐ つづける ささえあう and more…

おーつき

毎年恒例HIV陽性者参加支援スカラシップ委員会(はばたき福祉事業団、ぷれいす東京、日本HIV陽性者ネットワーク・ジャンププラス)では、今年11月に開催される第26回日本エイズ学会学術集会に、より多くのHIV陽性者が参加するよう、学会参加登録料と旅費を補助するスカラシップを提供しています。医療や薬、社会的支援などのHIV/AIDSの最新の調査研究に触れたり、当事者を含めたHIV/AIDSのフィールドに関わるさまざまな人たちと交流したりする機会となる学術集会に参加するために、活用いただければと思います。スカラシップの概要や過去の実績、応募方法などは以下のページをご覧ください。

外交レディ

おーつき

USA今月は、外国・国際関係のイベントに恵まれた月です。

駐日アメリカ大使館が、LGBTプライド月間(1969年6月に起こったゲイバーの強制捜査に対抗して始まった、ゲイ・アクティヴィストたちの運動にちなんで、アメリカで制定)を祝って4日(月)に開催したレセプションに、いくしまさんと出席してきました。ハイ・ランクの外交官が同性のパートナーを伴って外国に赴任したり、陸・海・空・海兵で従軍するセクシュアル・マイノリティのネットワークOutServeが立ち上がったり、11月に再選をかけた大統領選挙を控えるオバマ大統領も同性婚の支持を表明するなど、アメリカでは公的機関を含むさまざまなレベルでセクシュアル・マイノリティの可視化が進んでいるように感じます。

また、これに先立ち、アメリカのセクシュアル・マイノリティのNGOのネットワークCouncil for Global Equalityの代表との意見交換会が行われました。アメリカの外交政策がセクシュアル・マイノリティに配慮したものとなるよう、彼らが政府に対して行っている政策提言や、ロビーイングの手法などが紹介されました。

 

TestingAutographs

続いて、台湾からHIV/AIDSの活動を行う旧知のNGO、Taiwan AIDS Foundationのスタッフと元・政府高官らが来日。日本のHIV/AIDSの取り組みを知りたいと厚生労働省と東京都(南新宿検査・相談室)を訪問し、コミュニティセンターaktaでは台日NGOスタッフらによる交流会が開かれました。HIVにかかわる医療費がエイズ対策予算全体を逼迫しているという台湾のメンバーは、日本では台湾ほどには新規感染が増えていないこと、とりわけMSMへ向けた予防啓発の手法に興味を示していました。

Taiwanこういった交流がそれぞれにとって実り多い時間となり、今後のよりよい活動につながればと思います。

 

 

 

 

★おまけ★

最近やじまさんからもらったオーストラリアのゲイ・バイセクシュアル男性の“ビギナー”を対象にした啓発資材。なかでもいわゆるイケてる系ではない層へ向けて、ポジティブなメッセージとともに、ゲイ・ライフの送り方や性の健康のヒントなどがユーモラスなコミック調で紹介されています。

Australia

我慢の一年

おーつき

年度末。事務所では、スタッフの走り回る足音も一段と大きくなっているような気がするこの頃です。

はばたき福祉事業団、日本HIV陽性者ネットワーク・ジャンププラスとぷれいす東京による恊働プロジェクト「HIV陽性者参加支援スカラシップ委員会」の方も、2月いっぱいで2011年度の活動を終了しました。

日本エイズ学会学術集会「HIV陽性者参加支援スカラシップ」 http://www.ptokyo.org/scholarship/

震災後の社会経済情勢の中できびしいスタートとなった1年でしたが、さまざまな方々のご支援、ご尽力をいただきながら無事に事業を終えることができました。どうもありがとうございました。

先月開催した報告会も、大勢の方にご来場いただきました。当日配布した「第25回日本エイズ学会学術集会 HIV陽性者参加支援スカラシップ報告書」はPDF版を公開していますので、よろしければご一読いただければと思います。

スカラシップ報告書

ぷれいす2.0

おーつき

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ショートコント「診察室」

おーつき

滞日外国人ら日本語を話さない人たちが、HIV検査やそれに関連する医療にかかる際の支援をする医療通訳の育成を目的とした「通訳とHIV感染症研修会」が都内で開催されました。

通訳としてフォーマルなトレーニングを受けた経験はありませんが、バディなどとして日本語を話さないクライアントと英語を話さない相手とのコミュニケーションをお手伝いするような形で、通訳に準ずる活動をすることがたまにあり、興味があったのでわたしも参加させてもらいました。

外国で医療にかかるストレスや、他にHIVや性に関する事柄について相談できる人がいないという孤立状態などから、患者側から母語で話ができる通訳者に対し、通訳以上の役割が求められることもあるそうです。
通訳としての本来の役割をきちんと果たすためには、限界設定をして適宜他の専門家へつなぐことや、プライバシーに配慮しつつ業務の後には振り返りやシェアリングをすることも重要…等々、他の対人支援職に通じるようなポイントがたくさんあり、また通訳者も地域のHIV/AIDS支援リソースのひとつなのだと認識を新たにしました。
医療現場で話される専門用語は、知識がないと母語であったとしても難解なものばかりですが、医療者の言葉の90パーセントくらいは実は平易な言葉に言い換えることが可能であるという、通訳でなくとも役立ちそうなお話も。

そういった医療通訳の基礎や心構え、外国人のための医療や社会支援体制についてひと通り学習した後は、講師たちが患者・医師役となり診察室でのやりとりを模したロールプレイ形式で、参加者が実際にそれぞれの言語で通訳を行うという演習をみっちり。
HIV陽性告知などで取り乱したり、患者・医師間の信頼関係が損なわれ板挟みにされたりした場合どう通訳するか、などのお題がシナリオに盛り込まれていました。
ド素人のわたしは最初あたふたして日本人医師役に英語で話しかけ患者役には日本語で話しかけたり、訳しているうちに伝言ゲームがごとく言っている内容が変わってしまったりと、傍から見たらまるでコントのようだったとか。
通訳の難しさと、だからこその重要性、そして面白さ(?)の一端も、身をもって知りました。

とりあえず、通訳は(現世はムリそうなので)生まれ変わったらなりたい職業No. 1に!