オープニング・セッションがあった日の昼間、ワシントン・モニュメントで「Keep the Promise on AIDS」と題された、HIV/AIDSの活動家らが、政治などの指導者に対しHIV/AIDS対策へのコミットメントを求めるともに自らのさらなるコミットメントを表明する集会と行進がありました。この場所は1963年に人種差別撤廃を求める公民権運動のワシントン大行進(マーティン・ルーサー・キングJr.牧師の演説「私には夢がある~」で知られる)が行われた場所でであり、イベントの資材にはキング牧師がフィーチャーされていて、イベント中に公民権運動の賛歌「We Shall Overcome」を参加者全員で歌ったり、南アフリカのアパルトヘイト政策撤廃運動の指導者だったデズモンド・ツツ元大司教が登場したりするなどし、とても盛り上がりました。
アメリカ最大のLGBT人権擁護団体Human Rights CampaignもワシントンDCに事務所(しかも自社ビル)を構え、議会へのロビーイングなど、さまざまな活動を展開しています。21日には国際エイズ会議の関連イベントとして、「Addressing Stigma in Transgender & Other HIV-vulnerable Communities」というプレゼンテーションを行っていました。HIV陽性者の64%、トランスジェンダーの70%が医療機関で差別的な扱いを受けた経験があると回答したという調査がありますが、そういったスティグマが当事者にも内在化され、やがて彼ら自身が医療につながることをためらうようになってしまうことに強い懸念が示されました。
一方で、ワシントンDCにも、地域で暮らすLGBTのために開かれたコミュニティ・センターがあります。ゲイ・タウンと言われる地域にほど近い、賑やかなストリートの一角にあるThe DC Center for the LGBT Communityは、有給スタッフ1名と10名弱のインターンやボランティアのみによって運営されているとは思えないほど、たくさんのプログラムやイベントを実施しています。ワシントンDCで活動する2~3の小さなLGBTグループにデスクを貸与していて、コミュニティ内のさまざまな活動がつながり合えるコワーキング・スペースのようになっていたのもユニークです。
国際エイズ会議は22日にスタートしますが、開幕前からさまざまな関連イベントが開かれています。そのひとつ、国際エイズ学会がホストし20日に開催されたHIV/AIDSと薬物使用をテーマにした会議「HIV and Drug Use: Effectively Addressing the Twin Epidemics: Innovative Strategies for Healthy Communities」に参加しました。
また、これに先立ち、アメリカのセクシュアル・マイノリティのNGOのネットワークCouncil for Global Equalityの代表との意見交換会が行われました。アメリカの外交政策がセクシュアル・マイノリティに配慮したものとなるよう、彼らが政府に対して行っている政策提言や、ロビーイングの手法などが紹介されました。
続いて、台湾からHIV/AIDSの活動を行う旧知のNGO、Taiwan AIDS Foundationのスタッフと元・政府高官らが来日。日本のHIV/AIDSの取り組みを知りたいと厚生労働省と東京都(南新宿検査・相談室)を訪問し、コミュニティセンターaktaでは台日NGOスタッフらによる交流会が開かれました。HIVにかかわる医療費がエイズ対策予算全体を逼迫しているという台湾のメンバーは、日本では台湾ほどには新規感染が増えていないこと、とりわけMSMへ向けた予防啓発の手法に興味を示していました。