スタッフ日記

報告ありがとう。

さとう

おーつきさん、ワシントンから生レポートありがとう。日本でのLGBTやHIVの環境は、まだまだだなぁなんて感じました。そう考えてみると、山ほどすることがありますね。日本では国際エイズ会議の話題は、残念ながら殆ど報じられてません。こうして身近に感じられるのもレポートのお陰です。頑張り過ぎて、寝不足にならないようにお願いします。

東京は暑さが戻って来て、一転酷暑になっています。ロンドンではオリンピックが始まりますね、僕は昨夜女子サッカーを応援して、少し寝不足気味です。また熱い報告をお待ちしています。

ところでぷれいす東京の(青い)パンフレットが新しくなる予定です。みなさまにお届けできるのは、8月頃になりますでしょうか。楽しみにお待ちください。

Hello from DC, Part 5

おーつき

AIDSMemorialQuilt現地では国際エイズ会議の話題がたくさんカバーされているかというとまったくそうではなく、先週来、アメリカのテレビや新聞の報道は、コロラド州で発生した銃乱射事件がずっとトップニュースです。ヒラリー・クリントン国務長官がスピーチをした23日の国際エイズ会議の模様を伝えたCNNニュースのアンカーは、「本来はもっと注目を集めてしかるべきニュースだったのに、残念ですね」と述べていました。

また一方で、ワシントンDCのローカル・ニュースとして、週末の夜にゲイ・カップルが少年たちに襲撃されたという事件も報道されています(ゲイであることから標的になったかどうかは不明)。

 

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QUILT2012

会議場があまりにもエアコンが効き過ぎで凍えそうだったので(?)、会議場を飛び出してナショナル・モールで開催中のキルト展示「Quilt in the Capital 2012 (The Names Project AIDS Memorial Quilt)」で半日スタッフとしてお手伝いをしてきました。
1987年頃、当時AIDS関連で亡くなった人々は社会のスティグマなどから家族に引き取られなかったり、葬儀場から拒否されたりするなどして、きちんと弔われないことも多かったそうです。それに対し、サンフランシスコの活動家らにより、故人への愛情や彼らが生きた人生に敬意を表するひとつの形として、故人のキャラクターを表すさまざまなデコレーションを施した、墓標と同じ大きさのキルトの制作と展示が始められました。このワシントンDCのナショナル・モールは、初めてのキルト展示が行われた場所でもあります。
今回、会場では故人の名前を読み上げるステージ・イベントも同時に行われ、後援のエルトン・ジョンAIDS基金から、エルトン本人も登場しました。
キルト展示のスタッフは、オリエンテーションでイベントの基礎知識(観覧者からよくある質問と答え)とキルトの広げ方、並べ方ととたたみ方(保管用のたたみ方と、セレモニーとして、花の形を模したたたみ方もある)を教わります。会場には実に何百何千ものキルトが一面に並べられますが、特定のキルトを探して展示を見に来る人もいるため、どのキルトがどこに展示されているかすぐ検索できるよう端末が用意されデジタル化されている一方、キルトを見た人が悲しみなどの感情をこらえられなくなることなどもあるので配慮し、必要に応じて話に耳を傾けるようにとの注意も受けました。
 
なお、ナショナル・モール以外にも、国際エイズ会議の会議場や図書館、劇場など、ワシントンDCのいくつかの場所でキルトが数十点ずつ展示されています。

WashingtonMonument

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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この日はまた、Whitman-Walker Healthという施設を訪問しました。HIV陽性者に対し医学・保健(メンタルヘルス、依存治療も含む)を中心に、社会的・法的支援のさまざまなサービスも提供している、ワシントンDCでHIV陽性者の支援といえばここ!と言われるようなところです。1ブロック分あろうかという大きな建物で、職員150人と1,000人以上のボランティアにより運営され、近隣地域からも含め約4,000人のHIV陽性者が受診・利用しているそうです。
なお、ワシントンDCで生活するHIV陽性者は14,500人ほどと言われています。アメリカは各州・特別区によって法制度が異なりますが、ワシントンDCでは、HIV検査で陽性になった受検者を医療機関に受診させることが検査者側に義務づけられているそうです。匿名検査も実施されてはいるようですが、身元がわからない人たちを医療機関は受け入れないので、受診につなげられないことから、プライバシー面など批判がありながらも実名での検査が推奨されています。また、日本のような国民皆保険や身体障害者認定はないので、任意保険や自己負担で医療費を捻出できる人はいいですが、ある程度の収入があって公的保険(高齢者向けと低所得者向けがある)の対象にならない人や、公的保険加入者でも州によっては医療費がカバーされない例(その州でHIV陽性者何名の医療費を負担できるかという予算などの都合で、医療費補助対象の基準(CD4数・ウィルス量など)が変わるので、治療が受けられるようになるまで待機リストに入る)もあるなど、一旦医療につながったとしてもHIV陽性者の通院や服薬アドヒアランスを阻む大きな壁があります。プライバシー面の不安と、陽性になったらなったで医療アクセスの不透明さなどから、自発的なHIV検査受検へのモチベーションは低いと言われています。

先日訪問したH.I.P.S.ではHIV検査の動機づけに受検者にギフトカードを配ることがあるそうですが、Whitman-Walker Healthでは定期的に外来受診をしたHIV陽性者にギフトカードを配るプログラムがあるのだそう。謝礼をしてでも定期的に通院・服薬をしてもらう方が、耐性ウィルス出現やAIDS発症といった健康上のリスクの予防ができるので、(患者の健康上のメリットだけでなく)長い目で見れば医療費の低減につながるからとのことでした。Whitman-Walker

Hello from DC, Part 4

おーつき

NoAIDS2012アメリカでは、ネバダ州を除くすべての州およびワシントンDCで売春は違法とされ、薬物使用者とならびセックスワーカーが入国できず国際エイズ会議への参加が阻まれたことが議論を呼んでいます。

 

 

 

HIPSInsideHIPSOutsideワシントンDCで、セックスワーカーの支援を行っている団体H.I.P.S.Helping Individual Prostitutes Survive)を訪ねました。9名ほどのスタッフで、セックスワーカー(性自認やセクシュアリティ問わず)の健康を守ることを第一に、路上でのアウトリーチと、団体事務所でのケアやフリー・スペース提供、アドボカシーなどを行っています。

セイファー・セックスの情報や、HIVを含む性行為感染症や望まない妊娠を防ぐためのコンドームはもちろんのこと、薬物使用のハーム・リダクションとして注射器やパイプも必要に応じて提供しているとのことです。また、セックスワーカーが客から暴行されるなど危険な目に遭うケースも多いため、そういう客の情報をセックスワーカーから集めて「ブラックリスト」を作成し、注意を喚起していました。

スペースはセックスワーカー当事者でなくても利用できるため、真夏や真冬の天候の厳しい時期には家のない人々を受け入れたり、他に行く場所のない人の「最後の拠り所」として使ってもらっているとのことです。そういったスタンスにより地域に溶け込み、またセックスワーカーからの信頼も高いため、通報されるのではないかという心配をせずにサービスを利用できる場所としてとてもうまく機能しているように見えました。

Hello from DC, Part 3

おーつき

 

オープニング・セッションというわけで、第19回国際エイズ会議は、22日に開幕しました。掲げられたスローガンは「Turning  the Tide Together(ともに潮流を変えていこう)」です。

ちょうど今年は4年に1度の大統領選挙の年で、アメリカでは政治を取りまく雰囲気や注目度が大きく違います。HIV/AIDS関係でも、先日オバマ大統領が、大統領レベルでは初めての国家戦略を発表したことが話題になりました。テレビを見ていても候補者や政党のキャンペーンCMが目につき、わたしも宿泊先から会議場へ向かう途中に通る住宅街で、票集めの活動をしている人たちに「あなたはここの地区の有権者?」と何度か声をかけられました。
 

DesmondTutuオープニング・セッションがあった日の昼間、ワシントン・モニュメントで「Keep the Promise on AIDS」と題された、HIV/AIDSの活動家らが、政治などの指導者に対しHIV/AIDS対策へのコミットメントを求めるともに自らのさらなるコミットメントを表明する集会と行進がありました。この場所は1963年に人種差別撤廃を求める公民権運動のワシントン大行進(マーティン・ルーサー・キングJr.牧師の演説「私には夢がある~」で知られる)が行われた場所でであり、イベントの資材にはキング牧師がフィーチャーされていて、イベント中に公民権運動の賛歌「We Shall Overcome」を参加者全員で歌ったり、南アフリカのアパルトヘイト政策撤廃運動の指導者だったデズモンド・ツツ元大司教が登場したりするなどし、とても盛り上がりました。

Hello from DC, Part 2

おーつき

アメリカの首都(特別行政区)であるワシントンDCには立法・行政・司法の連邦政府機関が密集しているため、住民もそれらに仕える人かそれらを相手に仕事をしている人が多くを占めます。Human Rights Campaign

アメリカ最大のLGBT人権擁護団体Human Rights CampaignもワシントンDCに事務所(しかも自社ビル)を構え、議会へのロビーイングなど、さまざまな活動を展開しています。21日には国際エイズ会議の関連イベントとして、「Addressing Stigma in Transgender & Other HIV-vulnerable Communities」というプレゼンテーションを行っていました。HIV陽性者の64%、トランスジェンダーの70%が医療機関で差別的な扱いを受けた経験があると回答したという調査がありますが、そういったスティグマが当事者にも内在化され、やがて彼ら自身が医療につながることをためらうようになってしまうことに強い懸念が示されました。

The DC Center一方で、ワシントンDCにも、地域で暮らすLGBTのために開かれたコミュニティ・センターがあります。ゲイ・タウンと言われる地域にほど近い、賑やかなストリートの一角にあるThe DC Center for the LGBT Communityは、有給スタッフ1名と10名弱のインターンやボランティアのみによって運営されているとは思えないほど、たくさんのプログラムやイベントを実施しています。ワシントンDCで活動する2~3の小さなLGBTグループにデスクを貸与していて、コミュニティ内のさまざまな活動がつながり合えるコワーキング・スペースのようになっていたのもユニークです。

Hello from DC, Part 1

おーつき

国際エイズ会議は22日にスタートしますが、開幕前からさまざまな関連イベントが開かれています。そのひとつ、国際エイズ学会がホストし20日に開催されたHIV/AIDSと薬物使用をテーマにした会議「HIV and Drug Use: Effectively Addressing the Twin Epidemics: Innovative Strategies for Healthy Communities」に参加しました。

ハーム・リダクションに関する資材日本の状況とはいささか異なりますが、国際的には静脈注射によるHIV感染例が非常に多く、サハラ以南のアフリカ諸国を除く世界のHIV陽性報告数の3分の1を占めるとも言われています。また、薬物を使用するHIV陽性者は、抗HIV療法を受けても、薬物使用者ではない陽性者より余命が短いという研究結果もあり、効果的な対策の必要性が叫ばれています。この会議でも、注射器の使い回しによるHIV感染の予防に効果的な、注射器交換プログラムや過剰摂取予防教育などのハーム・リダクションの推進が大きなテーマのひとつになっていました。

※薬物使用(依存)をやめることの難しさや、すぐにやめることがかえって深い依存を招く危険があることなどを鑑み、まずは薬物を使用する上での害を少しでも低減することを目指す考え方。

オーストラリアやフランス、スイスなどで目立った効果が上がっているというハーム・リダクション・プログラムの医学的根拠をもとに、他の薬物使用が進んでいる国や地域――往々にして貧しい国――にどう介入するか。例えば東欧のある国で成功したハーム・リダクションがアフリカの別の国でも効果があるかわからないから、まずはパイロット・テストをやってじっくり検討しよう、という議論が援助機関の机上で繰り返されることに、ある現場の医師は懸念を表明しました。国際協力や開発においては、対象国の文化や地域特性などに配慮し、それにあわせた方法で対策プログラムを導入するべきというのは大前提です。一方で医療や公衆衛生の専門家の間にも薬物使用に対するスティグマが根強く(それは薬物使用がとりわけ社会の周縁化された人々の間に集中していることと無関係ではないかもしれませんが)、それらがハーム・リダクションの推進を阻んでいると指摘し、既に十分なデータとエビデンスがあるハーム・リダクションで、パイロット・テストをやっている間にどんどん人々が死んでいくのを見るのが耐えられない、という言葉が印象的でした。

ハーム・リダクションワシントンDCのとある施設のトイレでも、コンドームだけではなくハーム・リダクションのために交換用注射器が自由に持ち帰れるようになっていました。

Hello

さとう

おーつきさん、早速のレポートありがとう。無事に着いた知らせに、安心しました。長旅ですが、体に気をつけて楽しんでくださいね。こちらは今日は雲が広がり、少し肌寒い感じで、夏???です。

今回、アメリカでの開催には、とても感慨深い思いがありますね。LGBTのことも含めて、オバマ政権であることで変わりました。世界的にこの流れが繋がってくれると良いなぁと思ってます。

次の報告を楽しみに待っていますね。

O say can you see…

おーつき

夕暮れ時のホワイトハウスこんにちは、おーつきです。国際エイズ会議に参加するため、アメリカのワシントンDCに来ています。こちらの気候は東京とあまり変わりませんが、日が長く、外は20時半くらいまで明るいです。

つい最近まで長年HIV陽性者の入国を制限していたアメリカで国際エイズ会議が開かれるのは22年振りとのこと。明日からは、会議や関連イベントの様子などをレポートできればと思います。

Washington Blade

現地のLGBT向けタブロイド紙もHIV/AIDSの大特集

明けてからの話

さとう

みなさま、ご無沙汰しています。梅雨明け宣言されましたね。ところが大気は不安定で、夕立なのかゲリラ豪雨なのかはわかりませんが、急に雨に打たれることも…。お気をつけ下さい。先日透析中に、情報番組を見ていたら、「蚊」について取り上げてました。「蚊」の習性について

1)汗好き…汗の匂いが好きみたいです。こまめに拭き取るだけでも違うらしい。

2)体温が高いのが好き…冷やした腕と温めた腕で実験してましたが、体温が高いと認識されやすいみたい。

3)黒好き…白と黒では、圧倒的に黒に近寄るらしい。蚊にとって黒は保護色なんだとか。

4)アルコール好き…アルコールを飲んだ人が、分解する時に発生する二酸化炭素に反応するらしい。

5)太ってる人が好き…単純に面積が大きいからという説明でした。本当?

ということで、どうすれば良いか、それぞれ対策が打てそうですね。取りあえず事務所で、蚊を見かけていません。やっぱりあの100円ショップの虫除けが効いているのかも…今年は…。

仕事・くらし・社会

おーつき

こもれび荘でのパーティー先日、「ゲイによるゲイのためのHIV/エイズ電話相談」の相談スタッフと話をしていて、よせられる相談内容の多様化について話題になりました。HIV/AIDSやセクシュアリティを専門にうたう相談窓口でも、必ずしもそれらだけに対応できればいいわけではありません。実際には、相談を受ける中で、それらと隣接する(時にはあまり隣接してなかったりする)種々様々なテーマに直面しています。

ゆう茶房HIV/AIDSの相談・支援とそれぞれに重なりあう部分がある分野のひとつに、就労や生活相談があります。ご縁があって、先週、首都圏青年ユニオンの「ゆう茶房」と自立生活サポートセンター・もやいの「こもれび荘」にそれぞれおじゃましてきました。活動内容について紹介いただいて、お互いにどんな相談がよせられますか?どんな支援が受けられますか?といった情報交換から始まるのですが、スタッフ(含ボランティア)のモチベーションの維持や、ファンド・レイジングやPRなど、活動のフィールドにかかわらず共通するような団体運営のあれこれの話でも盛り上がりました。

もやい相互に影響しあうさまざまな社会問題に対して誰しも無関係ではいられない中で、これからもつながりあいながら日々の活動を続けていければと思います。