スタッフ日記

怒りと癒しのエイズ学会

矢島 嵩

今年のエイズ学会は、社会系の演題が多く出ていたにもかかわらず、薬害、薬物、滞日外国人、セックスワーカーといったとても重要な分野のいくつかがまったく欠落していて、僕にとって「学術集会」としては何か足りない?といった感じ。でも、個人的には「学会+その周辺」で、とにかくいろ〜んなことがあって、それはそれは濃密な3日間でした。

この学会でのキーワードは僕的には、「NGOと行政の協働」と「予防・検査・支援の連続性」の2つだったかなと思っています。どちらも「連携」が肝。

これって書くのも言うのも簡単だけど、実をともなって行うのはけっこういろいろ大変。だって、紙の上のことではなくて、一家言ある生身の人と人が向き合ってなし得ることだから。スムーズに理解しあえる場面ばかりでなく、むかついたり、失望したり、暴走したりと、いろんな人間臭いドラマがあるわけで。だからこそ面白いなんて余裕もないしね。

NGOと行政とか、予防や検査と支援に関わる人の間にも、自然にわかりあえるといった楽観だけではすまされない距離や溝があったりすることも事実。だからこそ、言葉をつくして、心を開いて、はじめてほんの一歩近づくことができるはず。でも、その困難さををいたいほど感じてしまい、途方に暮れる場面に多くいました。

その一方で、実は、人と人のつながりや、もっと大きな何かを実感して救われることを知ったのもこの会期中でした。2日目、12月1日世界エイズデーの夜、さまざまな偶然が重なって何気なくメモリアルイベントに参加することに。ハイパーなテンションのまま会場に入ったのだけれども、いつの間にかその「場」にある何とも言えない空気に浸って、自分や自分を支えてくれた人たちや、遠くへいってしまった人たちのことを考えたり、このどうしようもなくふつふつとする怒りや、果てしのない地平のような悲しみや、そんなこんなを感じながら、みんなで歌い、祈り、語り、泣きました。

We shall overcome
We shall overcome
We shall overcome some day

Oh, deep in my heart
I do believe
We shall overcome some day

立ち止まるのも後ろを振り返るのも大切だなーって、いつも前向きじゃ生きて行けないものね。頭だけじゃなく、心も体も、もみくちゃで、へろへろの学会体験でした。

We Shall Overcome

おーつき

25thJSA第25回日本エイズ学会学術集会・総会の初日に開催されたHIV陽性者参加支援スカラシップ委員会(はばたき福祉事業団、ぷれいす東京、日本HIV陽性者ネットワーク・ジャンププラス)による共催シンポジウム『HIV陽性者によるエイズ対策への参画』には84名もの方にご来場いただきました。どうもありがとうございました。

今年見直しが行われた「後天性免疫不全症候群に関する特定感染症予防指針(エイズ予防指針)」ですが、指針そのものは実行力に課題があり、今後の日本のエイズ対策にこの指針をどう生かし、現状を変えていけるか?という問いかけがなされました。見直された指針では随所で「NGOとの連携」が明文化されたのを受け、行政とNGOとの恊働――そしてそこでは当然HIV陽性当事者の参画が求められていますが――においては、NGO側から動かないと何も変わらない、NGO側の提案力や恊働力が試されるのではないか、といった見方がパネリストらからは示されました。現在のNGO活動はとかくリソースが不足しているというのが共通認識ですが(東京周辺と他の地域との差についても言わずもがな)、そんなリソース不足を克服するためにも、うまく恊働し障害を乗り越えていかねばならないようです。

※「エイズ予防指針作業班報告書」はこちらからご覧いただけます。

Nailなお、今年はHIV陽性者参加支援スカラシップの資金調達においても困難があり、本シンポジウムの会場でもご寄付のお願いをさせていただきました。募金箱にお心付けをくださった方、振込でご寄付をくださった方、本当にどうもありがとうございました。当事者参画のひとつのあり方として、今後もまたひとりでも多くのHIV陽性者の学会参加をバックアップしていけるよう、本スカラシップの維持拡充に役立てさせていただきます。

ハートをつなごう〜HIV第4弾

さとう

Eテレの「ハートをつなごう」で、HIV第4弾「HIV/エイズの30年」が11月28日(月)〜30日(水)の20時から放送される。前の日記でも触れたが、今年はエイズにとってメモリアルイヤー。出演者を見ているだけで、すごいメンバーが揃っていると思う。勿論ここに登場しない方々でも、HIVに関して日々努力なさっている方々がいる。そしてHIVと闘っている人たち、残念ながらHIVで命を落とした方たち。全ての流れが今の時代に繋がっている。

事務所にいると、あちらこちらでHIV関連のイベントやシンポジウム、講習会の情報が流れくる。HIVに関わる事務所にいるからで、一歩外に出ると、HIV関連の情報は激減するように思える。そこにHIVの問題点があるのではないかと、僕は思う。そういう意味でも「ハートをつなごう」がたびたびHIVを取り上げてくれて、有り難いと思っている。

そして第25回日本エイズ学会、世界エイズデーへと続く。

久しぶりの「ぷれいす日記」

矢島 嵩

ちょうど1年ぶりの「ぷれいす日記」です。

かつては「日ごろ感じているあれこれ」や、「活動にまつわるこぼれ話」的なことを書いたりしていたのですが、このところ「日ごろ感じているあれこれ」がやや暗めで迷走気味、「活動にまつわるこぼれ話」がついつい愚痴っぽいという日々だったので、少々自粛しておりました次第です(汗)。だけど、ふと、それはそれなりで良いのかも?って・・・。

個人的には、ブログもSNSもTwitterもなーんもしていないのだけれど、web NESTや、HIVマップや、ぷれいす東京Newsletterや、NEST NEWSLETTERなどなどあっちこっちに関わっているので、実は編集後記や日記やらなにやらを書いていることが今でもけっこう多いのです。

web NESTは、先日リニューアルして、編集後記は「運営委員のつぶやき」と名前を変えて(お化粧直しして)再登場しました。。過去のエントリーが読みやすくなったので、あらためて自分が書いたものを読んでみるとなんだか、懐かしいかったり、恥ずかしかったり、若かったり(汗)といろいろ感じます。月に一度、しかも2-3行だったりすることもあるのだけど、10年も書き続けているとそれなりにヒストリーが見えてくるものですね。NEST NEWSLETTERは、2003年の秋に編集を担当して以来毎月1号づつ欠かさずに出してきたので、かれこれ100回目の編集後記です。こちらは、季節便りや健康ネタが多く、そのときの体調の好不調が自分なりに思い出せるのでそれはそれでいいものです。

そんなわけで、またぼちぼち書かせてもらおうかと・・・。
よろしくどーぞ。

奇跡4

さとう

11月6日日曜日、ネストプログラムのカップル交流会・みかん狩りに行ってきました。今回は世話人ということで、企画から携わったのですが、生憎の雨模様。何とか予報が外れないかな…と祈ってました。てるてる坊主吊るせば良かったのだけれど…。

現地に到着した時には、丁度雨が上がっていて、みかん狩りを決行。時間を短く設定したら、集合時間には雨がぽつぽつ。レストランに移動したら、ザーッと降り出した。食事が終わった時に上がっていたので、駅まで徒歩にする。駅に着いた途端の雨。参加者の日頃の行いが良かったのでしょう。外にいる時は雨が上がるという奇跡だった。⇒近々ネストニュースレターなどに感想文が掲載されまIMG_0444す。詳しくはそちらをご覧ください。次回は年明けに企画する予定です。

なお、今までのカップル交流会の参加人数や感想文がリニューアルされた「web NEST」でご覧頂けます。

web NEST 2度目のリニューアル!

はらだ

2005年3月にリニューアルしてから、6年8カ月。このたび、web NESTが2度目のリニューアルをしました。

メインコンテンツである、つれづれ日記、よくある質問集、あれこれリンク集、HIV関連ワードなどの概要や更新日がトップページでわかるようになりました。

また、ネスト・プログラムなどのお知らせも、トップページで一覧でき、詳細ページで、それぞれのプログラムや感想文などをご覧いただきやすくなっているとおもいます。

必要としている人に、必要な情報が、少しでも届きやすくなっていればうれしいです。

どうぞ一度、HIV陽性者とそのパートナーや家族・ともだちのためのサイト web NEST を のぞいてみてください。

この場をお借りして、web NESTと、サイト・トリニューアルにご協力いただいているみなさまに心よりの感謝を申し上げます。

30年ひと昔

おーつき

ある大学のキャンパスで開催されていた「沈黙=死:エイズ危機とドラァグ」という公開講座に行きました。20世紀前半から現在に至るまでのアメリカのゲイ・アクティヴィズムの潮流にHIV/AIDSの登場が与えた影響と、エイズ・アクティヴィズムの位置づけなどを重ねていくお話でした。

1981年に初めてAIDSの症例が報告されてから、今年で丸30年。先だって東京国際レズビアン&ゲイ映画祭で上映されたドキュメンタリー『あの頃、僕らは―いま語られるエイズの記憶』など、HIV/AIDSと、HIV/AIDSを取りまく人たちの歩んできた歴史を振り返る機会が増えています。

 

参考:

●カイザー・ファミリー財団による、アメリカのHIV/AIDSの登場からの30年間を追うドキュメンタリー映像 http://www.kff.org/hivaids/062111vid.cfm

●アメリカ政府の保健社会福祉省による、HIV/AIDS30周年の特設サイト http://aids.gov/thirty-years-of-aids/

 

HIV/AIDSの登場で、その感染機会の多さなどからとりわけ大きな影響を受けたゲイの危機に際し、コミュニティ内でレズビアンなど他のセクシュアル・マイノリティたちと大きく団結する契機となったというアメリカの例が紹介されたことに対し、聴衆のひとりから、日本ではゲイのHIV/AIDS活動とレズビアンたちとはともに年々離れていってしまっているのではないかという投げかけがあったのが印象に残りました。個人的にも、その辺りは道半ばかと感じているところです。

***

HIV陽性者参加支援スカラシップ委員会の恊働シンポジウムなどで、日本でもHIV/AIDSにかかわる医療の進歩や、免疫機能障害の認定など現在ある社会制度ができた背景などに言及があると、以前の状況を知らない比較的若い参加者らから新鮮な反応があります(興味のある方は、過去のスカラシップ報告書などもご覧ください)。

はばたき福祉事業団、日本HIV陽性者ネットワーク・ジャンププラスとぷれいす東京の共催でお送りする今度のHIV陽性者参加支援スカラシップ委員会恊働シンポジウム企画は、今年見直しの検討が行われたエイズ予防指針をテーマにした『HIV陽性者によるエイズ対策への参画』。今月末の日本エイズ学会学術集会・総会に行かれる方は、ぜひこちらもよろしくお願いします。

「HIV陽性と就労」

さとう

「働く広場」2011年4月〜8月号に、NOTE「HIV陽性と就労」としていくしまの記事が載っている。エイズが出てきてから30年。やっと日本でもHIV陽性者を受け入れようという企業が少しずつ増えている。就労環境が変化しているのには、手前味噌になるが「地域におけるHIV陽性者等の支援のための研究」の成果も出始めているのだと思う。と同時に、病気のことを告げて就職活動をする人たちが増えていることにも起因していると思う。

陽性者が、やっと見える存在になりつつある。しかしそのことを大っぴらにして就職活動をすることには、多くの困難や嫌な思いをしているのだろうと想像する。それでも勇気と力を振り絞って活動している人たちに、本当にありがとうという気持ちでいっぱいだ。この流れが、大きな流れとなることを期待している。

いつもの場所で、いつものラウンジ

おーつき

LivingTogether

毎月第1日曜日の夕方に開催されている「Living Together Lounge」。多様性をともなった視点から「全ての人がHIVとともに生きている」というリアリティを共有するためのプロジェクト、Living Together計画(呼びかけ団体:ぷれいす東京、akta)が主催する、HIV陽性者やその周囲の人によって書かれた手記の朗読とアーティストによるライブで構成されるイベントで、この6日(日)の回で83回目を迎えました。

毎月やっているから行きたい時にはいつでも行けるし…と思っていて、ついつい行きそびれていたところ。(1月22日の日記に書いた)よく行くカフェでいつも良くしてくださるスタッフの方が、手記の朗読をされるというのをきっかけに久しぶりに足を運んだら、このイベントに参加したのは2年振りとかいうお友だちとの偶然の再会を果たしたり、最後に会ったのは前回このイベントに来た時だったというお友だちにも久々に会えたり、一方で特に連絡を取り合った訳ではないけれどそこに行けば会えるだろうと思っていたいつもの遊び友だちともやっぱり会えたりと、そこは"It"な場所。朗読とライブにプラスαの喜びがありました。そういえば、「Living Together Lounge」の会場で出会ってつきあい始め、その後もふたりで連れ添ってこのイベントに参加しているという友人カップルも。わーい。

Title第84回となる次回の「Living Together Lounge」は、12月4日(日)開催です。夕暮れ時のグッタイム、よければご一緒に。

10月27日~11月9日は読書週間

おーつき

──ということで、今年発行された、ぷれいす東京のスタッフが執筆した書籍についてのご案内です。

思いこみの性、リスキーなセックス」(池上千寿子 著/岩波書店 刊)

→「若者の気分」シリーズの1冊。若者の性の意識を通し、若者だけでなく社会の性に対するさまざまな思いこみをあぶり出して切り込む。

21世紀の課題=今こそ、エイズを考える」(池上千寿子 著/日本性教育協会 刊)

→「現代性教育研究月報」の連載集。HIV/AIDSが初めて報告されてから30年、HIV/AIDSとそれをとりまく人々と社会を見つめ直す。

福祉系NPOのすすめ ─実践からのメッセージ─」(牧里毎治 監修/ミネルヴァ書房 刊)

→福祉系NPOをテーマに、その設立・運営などの理論と、現場の想いや人とのつながりなどの実践を紹介する専門書。「実践編」の第3章「HIVとともに生きる人たちがありのままに生きるために」を生島嗣が執筆しています。

本屋さんで、あるいは図書館などで(蔵書になければリクエストして?)ご覧いただければ幸いです。