スタッフ日記

風立ちぬ

矢島 嵩

長く暑い夏が一陣の風とともに去り、命をいとおしむような季節が訪れました。

僕にとっても、今年の夏は心にも身体にも厳しい季節だったのですが、ここで気持ちを切りかえて、いざ生きめやも(?)です。

と思いきや、昨晩から鼻水が……。
あー、風邪断ちぬ(冷汗)

オープン・スペースとカフェ、その他のプログラムについて

はらだ

「ネストに関する重要なお知らせ」にあるように、8/23(月)よりネストのオープン・スペースとカフェ・ネストが閉鎖になりました。 私もその話し合いに参加したのですが、そうするしかないという選択ではありましたが、このような事態を避けられなかったこと、そして、突然のお知らせになってしまったを本当に申し訳なく思いました。

今後のことについての話し合いに、私も参加しています。なにかお知らせできるようになりましたら、なるべく早くお知らせしていきたいと思いますので、しばらくお待ちください。

なお、ネストは全面閉鎖ではありません。新陽性者ピア・グループ・ミーティング、ミドル・ミーティング、パートナー・ミーティング、ストレスとつきあうためのワーク、もめんの会、Women's Salon、シリーズ「専門家と話そう」、カップル交流会などは、行っておりますので、どうぞご利用ください。

リーン、リーン。

さとう

「猛暑日」「熱中症」「熱帯夜」世の中のニュースは暑いものばかり。まあ8月だから許そう。でも9月以降も続きそうな勢いが少し怖いよ。

今日は夕方、郵便局に出かける用事があって、緑の木立の公園のあたりを抜けていくと、少し涼しい風が吹いていて、つくつくぼうしに混ざって、コオロギやらスズムシたちが、何だか申し訳なさそうに鳴いていた。秋の虫たちも待ちくたびれているのかな。だってそろそろ夜は鳴いてもいい時期だもの。

こうしてみると都会のど真ん中で、昔からの風情を楽しめるなんて、贅沢なものだと感じる。僕も秋が待ち遠しいよ。リーン、リーン。

時の過ぎ行くままに

さとう

40代以上の方なら、沢田研二を思い出したかも…。相変わらず暑い日が続きますが、いかがお過ごしでしょうか。立秋を過ぎたんですけれどねぇ。

ぷれいす東京も来週8月12日木曜日から18日水曜まで、事務所及びネストが夏休みに入ります。ポジティブラインやその他の電話相談は通常通り、相談を受け付けています。

夏休み中に東京プライドパレードもあります。楽しみですね。

今使っているパソコン、あんまりです。だって「プラ井戸」って誤変換するんですよ。(笑)

より良いスタートって?

矢島 嵩

ウィーンからの日記に対抗して(笑)、猛暑が少しだけやわらいだ大阪からのレポートを。

感染が分かってから間もない人たちのためのグループミーティングが、関西で立ち上がり定着するようにと、この3年間こつこつと大阪通いをしてきました。多くの出会いと議論と試行錯誤があり、昨秋、ついに「ひよっこクラブ」第1期がスタート、冬には第2期、そして先週に第3期が終了したところです。昨日はスタッフのミーティングがあって、僕もアドバイザーとして参加してきたのでした。

この3年間に分かったことは、関西にはこういったプログラムに対するニーズが明らかにあり、建設的な発想を持って意欲的に関わる地元の人たちがいる。すでに活動をしている当事者団体や医療機関との信頼関係があり、地元NGOや行政とのネットワークがあり、職種を越えた個人的なつながりも色濃くある。東京で新陽性者ピア・グループ・ミーティング(PGM)が始まったときとは、異なる環境でした。当初は、NGOでの個別支援や交流スペースなど、「足りないもの」ばかりに目が向いていたのですが、どこかの時点で 「すでにあるもの」をどのように活用して進むかという発想に変わったのでした。出来ない理由を探すのではなく、やる方法を考え始めると、ものごとが動き出し、協力してくれる人が現れる。そんなダイナミックな3年間を関西の仲間たちと経験させてもらった幸運に感謝。

季節がめぐるほどに、人も顔も変わり、可能性が広がっていくのを知ったのは大きなことです。しかし、その間に僕自身はどれだけ自分の人生の歩を進めてきたのだろうかなどと考えたりもするのです。このところ、 ひたすらHIVの優先課題に取り組み、一つ一つがチャレンジの連続で、集中してがんばってきたつもりです。一方で、将来のことや、自分の幅や、大切な人たちとの関係に影響があったことも事実。ちょっと時間軸を長くとってみたり、ちょっ視野を広めにとってみたり、ちょっとだけ今の自分を客観的に見てみると、なんだか複雑な気分になります。

実は、十数年前に僕のほうから連絡を絶っていた高校時代からの付き合いの古い友人が関西にいて、今回、連絡をとって会ったのです。この十数年の無沙汰を詫び、その理由も打ち明けました。病気のことや家族のこと、連絡しようと思っていたことなども。そうだったんだー、なるほどー、謎が解けたよー・・・快活で柔軟な彼らしい反応でした。「突然音信不通になってしまって、ゴメンね」といまさらながら謝ったら、「でも、四六時中心配してたわけじゃないから」とカラッと笑い飛ばされて、なんだか軽い気分になりました。

感染を知ってからのより良いスタートをテーマとして活動してきたこの十年。僕自身も、あらためて、これからの人生のより良いスタートが切れますように。そんなこと新幹線で考えつつ、いつもよりもちょっと上等な幕の内を喰らいつつ、流れる景色をながめつつの帰路でした。

会議は踊る、そして進む?

おーつき

オーストリアのウィーンで行われていた第18回国際エイズ会議は23日に閉会し、また高田馬場に戻ってまいりました。

ClosingSession

会議全体を通して見ると、まず「Rights Here, Right Now(今すぐここで人権を)」というフレーズがテーマに掲げられていた通り、人権尊重の概念と、それをもとにしたHIV/AIDS対策の重要性がさまざまな立場の人から強調されていたように感じます。20日には、「Human Rights and HIV/AIDS: Now More Than Ever」というHIV/AIDS団体および人権団体などの恊働キャンペーンにより、ウィーン中心部で大きなデモ行進と集会がありました。

そのような人権尊重の観点から、HIV/AIDS対策における予防、治療、ケアとサポートへの普遍的アクセスは基本的人権であり、費用や便益の検討に勝るものでなければならない。HIV/AIDSの活動家は人権活動家でなければならない、といった強い主張がなされていました。

また、クロージング・セッションのRapporteur(テーマごとの総括報告担当者)たちのほとんどがそれに言及するほど、会議中さかんに話題に上っていたのが「The Vienna Declaration(ウィーン宣言)」。同会議の公式宣言であるこの文書は、イデオロギーにもとづいた犯罪化政策ではなく、科学的根拠をもとにケアとサポートを薬物使用者に提供することの必要性、そしてそれは基本的人権であるということを力強く説くものです。

他に多くの共感を得ていた議論としては、治療だけでなく運動(ムーヴメント)のコンビネーションを訴えるものがありました。HIVや薬物使用、女性、貧困といった事柄には交わりや共通点があり、それぞれに対する運動の協調によって一層効果的・包括的に対策を具現化していけるのではないか、というものです。

Schonbrunn

以上、盛りだくさんの6日間。次回会議は2012年にアメリカのワシントンDCで開催予定だそうです。

月並みな感想ではありますが、わたしもまたさらに見聞を広めて日々の活動に励み、進んでいくことができたらと思う次第です。

さまざま

さとう

昨日、開催中の「Rainbow Arts 2010」に行ってきました。芸術作品に触れると、心が動いたり、洗われたりします。比較的暑さは和らいでいましたが、それでも真夏のひととき、楽しまさせて頂きました。作者とお話ができることも、楽しみのひとつなんです。

そして「東京セレソンデラックス」の2010年本講演「くちづけ」を見てきました。プラチナチケットで手に入らないと思っていたチケットを偶然手に入れることができたのです。

「くちづけ」は、軽い知的障害の方のグループホームが舞台。笑いあり、涙あり、泣き笑いありの構成です。知的障害の方も差別と偏見に曝されていて、その現実もしっかりと捉えていました。とてもHIVに通ずるテーマで、自分のことともかぶってしまい、何度も涙を流しました。愛することの切なさも…。

いろいろと考えさせられた1日でした。

時は3倍の速さで

おーつき

今回の国際エイズ会議のホスト国であるオーストリアですが、人口840万人で、HIV陽性者数は9,000人ほど。HIV/AIDSにかかわる医療は、無料で受けられるとのことです(くわしくはこちら(PDF))。

Buddy Verein ウィーンのHIV/AIDSへの取り組みを見学するプログラムのひとつに参加し、HIV陽性者へバディ・サービスを提供している現地のNGO、Buddy Vereinを訪問しました。ぷれいす東京のバディ・サービスとの共通点も多い、プラクティカルなボランティア派遣のプロジェクトと、陽性者の心理社会的な孤立を防ぐためボランティアがクライアントと1対1の親しい人間関係を構築して、文字通りバディ(仲間、友人)として接していくプロジェクトとを、オーストリアでHIV抗体検査が始まった1985年の団体設立時から継続して行っているそうです。

Burnout Prevention for Social Workers

Buddy Vereinでは、他にも活動に従事するボランティアのミーティングに精神科医が定期的に介入するのが特徴的でしたが、会議のプログラムの中でも、ソーシャルワーカー向けにバーンアウトの予防を目的とした技能開発のワークショップというものがありました。家族や友人と離れて異国の地に赴任している人、紛争後の回復支援の現場にいる人から専門医療に携わる人、バック・オフィスの人まで参加者のバックグラウンドはさまざまでしたが、クライアントのため、活動の質を保つためにはまず各々をケアすることやストレス・マネージメントが大切であるということに関しては全員が共通した認識を持っていました。こういった支援者の支援というのもHIV/AIDSにかかわる重要なテーマのひとつであると、あらためて感じた次第です。

酷暑お見舞い申し上げます

さとう

なんなんでしょうね。この暑さは…。東京でも4日連続。熱中症に気をつけてくださいね。僕は人工透析を受けていますが、水分とミネラル調整が難しい身体です。でもこの暑さですから、あまり制限を気にしないで、水分補給をしています。

ところでネット環境が整ったことって、素晴らしいですね。土産話は戻って来てから聞くものだと思っていますが、おーつきさんの報告が、すぐに東京で見れるのですから…。それにしてもふたりはいいなぁ。気温を確認したら最高気温が20度に満たない。

みなさん、水分と栄養を上手に採って、暑い夏を乗り切りましょう。

一輪の花が咲く

おーつき

今回の国際エイズ会議では、地域におけるHIV陽性者等支援のための研究班で実施した「HIV陽性者の生活と社会参加に関する調査」(くわしくは、こちらの冊子(PDF版)をご覧ください)の結果をもとに、いくしまさんらと3題の発表を行いました。他の国や地域で行われた類似の調査の発表もいくつかあり、参考になるものが多かったです。

他にも同調査の大きなテーマのひとつであるHIV陽性者の就労にかんする演題を片っ端から見てみましたが、中でも興味深かったのは、UNplus(UN System HIV Positive Staff Group)という国際連合の各機関で働くHIV陽性者のネットワークに携わる人たちによるセッション。彼ら彼女らの中には、GIPA(HIV陽性者の参画拡大)あるいはMIPA(HIV陽性者の意味のある参画)で陽性者としての立場を生かすようなポストに起用された人もいれば、HIV/AIDS対策には直接関係のないポジションで勤務していて、その中で感染がわかった人もいます。彼らがそのネットワークをつくりあげてきた経緯の紹介では、HIV/AIDSへの取り組みを行っている国連の組織内にも存在するHIVに対する差別や偏見などにも言及がありましたが、彼らが援助組織の中で自らも陽性者として働いてきた個人的な経験、さらにはフロアにいた直属の上司らが彼らからのHIV陽性のカミングアウトをどう受け止めていったのかといった語りもあり、新しい視点が示されたような、とてもいいセッションでした。

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ポスター発表とWSW向け資材など

日本国内ではあまり議論に上らないようなトピックに出会えるのも国際会議ならではです。WSW(Women who have Sex with Women/女性とセックスをする女性)をターゲットにした予防啓発や、HIV陽性のWSWへの支援(ただし、彼女たちの感染経路として推定されるのは男性との性的接触)は、情報量は少ないながらもとても興味深いものでした。

会議初日のオープニング・セッションが始まる前に開催された、テーマごとに会議全体を概観するようなセッションのうちのひとつに「女性と子供」というものもありましたが、そこで女性の多様性が議論の焦点となる場面がありました。HIV/AIDSに対し弱い立場にいる「女性」とひと口に言っても、有色人種の女性、障がいを持つ女性、高齢の女性あるいは幼い女児、貧困状態にある女性、セクシュアル・マイノリティの女性、セックスワーカーの女性、薬物使用者の女性etc.とその多様性にも幅があり、それぞれ状況が異なるということも頭に置いておきたいものです。